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イスラエル、アマゾンに「ホロコースト否定に関する本」の販売中止を要請

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

イスラエル政府はアマゾンにホロコースト否定に関する本の販売停止を要請した。イスラエルにある国立ホロコースト記念館ヤド・ヴァシェムの館長Robert Rozett氏がアマゾンのベゾスCEOに対して書簡を送った。

ホロコーストとは第2次大戦時にナチスドイツによるユダヤ人迫害で、600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯などがアウシュビッツなどの絶滅収容所で殺害された。ホロコースト否定とは「そのようなホロコースト(大虐殺)はなかった」「600万人も殺害されていない」といった主張。現在でも反ユダヤ主義が蔓延している欧州やアメリカではホロコースト否定論者が現在でも多く存在し、ホロコースト否定に関する本も多く出版されている。

Robert Rozett氏によると、今回アマゾンに本の販売中止を要請したのは、現在世界中で蔓延している反ユダヤ主義やヘイトスピーチ拡散に対する流れを止めることが目的とのこと。イタリア、フランス、ドイツなどホロコースト否定が違法となっている国のアマゾンでは既にホロコースト否定に関する本の販売は停止されているが、アメリカとイギリスのアマゾンでは現在でもまだ販売されている。

またアマゾンでは一度、ホロコースト否定の本を検索やクリックした人には、お馴染みの「あなたにお勧めの本」ということで、似たようなホロコースト否定の本が紹介されてしまうことや、ホロコースト否定に関する読者の「書籍レビュー」もホロコースト否定の考えが拡散していくことになっているとRobert Rozett氏は懸念している。ヤド・ヴァシェムでは以前にもホロコースト否定に関する本の販売停止を要求していたが、表現の自由を阻害するとのことで拒否されていた。

アマゾンは欧米で多くの人が書籍を購入するサイトだから、アマゾンでそのような本を扱わないことはホロコースト否定思想の拡散防止の一助にはなるが、たとえアマゾンで購入できなくとも他の場所で購入できるのであれば、根本的な問題解決においてはどの程度の効果があるのかは不明だ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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