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サッカー日本代表、後任監督よりも注目するべき会長選挙

清水英斗サッカーライター

ハビエル・アギーレ氏との契約解除に踏み切ったJFA(日本サッカー協会)が解決するべき問題は、2つあった。

後任人事と、任命責任。

後を引き継ぐ日本代表の監督は、ハリルホジッチなのか、ラウドルップなのか、スパレッティなのか。多くの報道がなされているが、まだ決定的なニュースは出ない。我々は今しばらく成り行きを見守るしかない。

一方、後者の任命責任については、すでにJFAが12日、一連の騒動への対応を発表している。

結論は処分の必要なし。監督選任とその後の対応プロセスにおいて、大きな責任は認められず、JFA理事会では「処分しない」と決まった。しかし、大仁邦彌会長は、報酬の50%を4カ月カット、原博実専務理事と霜田正浩技術委員長は、報酬の30%を4カ月カット。いずれも任命責任を問う処分ではなく、「自主返納」という形が取られている。

処分するほどの落ち度はないが、“世間”を騒がせたことで「自主返納」。いかにも日本的な決着の付け方により、結果的には、誰ひとりとして現職を辞することはなかった。このような結末に、不満を抱くサッカーファンは少なくない。

しかし、個人的には、やむ無しと考えている。

ザッケローニより以前の代表監督は、日本人か、あるいはJリーグのコネクションに頼った人物に限られていた。2010年に原、霜田の両氏は、世界トップシーンの監督と接触するために、初めて欧州の市場へ乗り込む。新たな人脈を作りつつ、さまざまな監督との交渉を重ねた末、ザッケローニを日本に招へいすることに成功した。アギーレは2人目の成果となる。

技術委員会のような組織は、監督以上に、長期的なビジョンをもって取り組まなければならない。今回は事前の調査不足など反省すべき点があったが、日本のサッカーが世界との接点を作ろうとチャレンジしている最中であることも、評価されて然るべきだ。また、監督人事のみならず、技術委員会は昨年末、不振が続く育成年代の改革にも着手している。この一件だけで、すべてを捨て去り、再び過去からスタートしなければならないのか。筆者はその点を重く考える。

もちろん、反対意見はあるだろうが、今のばたばたしたタイミングで辞職を迫ったところで、プラスになることはない。

むしろ、我々が注目するべきイベントは他にある。大仁会長の任期は、残り1年だ。2016年3月には役員改選と、そして日本サッカーでは史上初となる会長選挙が控えている。

過去のJFA会長は、幹部の推薦により、密室で決められてきた経緯がある。しかし、昨年にFIFAから透明性や民主性に欠けるとの指導を受けたことで、大仁会長の後任は、選挙によって決められる方針が固まった。

JFAの体制を肯定している人も、不満がある人も、この会長選挙という一大イベントがどのように行われるのか。その行方に注目するべきだろう。

史上初のJFA会長選挙に求めること

2016年3月予定の会長選挙は、評議員の直接投票で行われる。現在の評議員会は、各都道府県サッカー協会の代表者47人から構成されるが、FIFAの指導により、Jクラブやフットサル、なでしこ、日本プロサッカー選手会の代表者を加え、約75人に増員される見込みだ。

会長候補者は、理事会から推薦するが、評議員会からも7人以上の推薦があれば候補者を出すことができる。

果たして、どのような選挙が行われるのだろうか。まだ具体的にはイメージしづらいが、筆者は、以下のような方針が示されることを望む。

1.各候補のマニフェストが、一般向けに明らかになること

選挙といえば、各候補のマニフェスト(公約)が最大の焦点だ。

たとえば、A代表監督に日本人を起用する。たとえば、アンダー世代の代表に外国人監督を招へいする。たとえば、天皇杯や全日本少年サッカー大会など、各種大会を改革する。たとえば、コパ・アメリカへのA代表、ないしはB代表の派遣を模索する。たとえば、技術委員会の改変を行う。

各候補がどのような日本サッカーの将来を描くのか。その青写真を見せることで、この会長選挙がひとつのお祭りとして、未来を感じさせるものであってほしい。

2.誰もが間接的に投票に関わる仕組み

FIFAの指摘により評議員は75人に増員されるが、果たして75人の投票で充分なのだろうか。他に投票権が与えられるべき人物や団体があるのではないかと、疑問はある。

2012年のドイツサッカー協会の会長選挙では、256人による投票が行われた。同年のスペインサッカー協会の選挙では、167人。FIFAの会長選挙も、200以上の票が投じられる。それらに比べると、75人は少ない。

2018年ロシア、2022年カタールワールドカップの開催地決定プロセスについて、賄賂などの不正疑惑が大きなニュースになったが、それも根本的な要因を探れば、投票権を持つ実行委員の数がたった24人に限られていることだった。12人を買収すればワールドカップを自国に引っ張ることができる。この状況で何も起こらないほうが不思議だ。JFA会長選挙も、民主的にリーダーを決めるなら、投票権を拡大することは必須だ。

会長選挙は、日本のあらゆるサッカー関係者が、間接的に関わりをもてることが理想だ。Jクラブなら、J1からJ3まで計52人の代表者がいる。なでしこ、フットサル、プロサッカー選手会はすでに加えられる方向だが、それだけでなく、クラブユース連盟などの育成年代の団体、さらに日本のサッカーが学校の部活動と密接に結びつくことを鑑みれば、中体連や高体連、大学サッカーなどの団体に投票権があってもいい。そのような機会づくりが、今までは成し得なかった改革につながるかもしれない。

たとえば上記のような例に、都道府県協会47人の代表者を加えると、75人ではとても足らない。

FIFAは75人で承認し、そのまま会長選挙が行われるかもしれないが、将来的にはさらなる投票権の拡大がなされるべきと考える。

3.投票先を公表すること

バロンドール(最優秀選手賞)の投票のように、代表者が誰に票を入れたのかを公表するシステム。透明性を確保するためには、これもぜひ実施してほしい。史上初の会長選挙が行われるといっても、密室で行われるのなら、今までと何も変わらない。

自分がかかわる組織の代表者が、どの候補に投票したのか。これを知ることができれば、間接的にでも選挙に関わったと言えるだろう。

ブラジルワールドカップやアジアカップの敗退、八百長疑惑に至るまで、ここ1年は日本のサッカーにあまり良いニュースがなかった。民主的な会長選挙により、未来へのポジティブなエネルギーが吹き込まれることを願う。これからの行方を注視したい。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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