Yahoo!ニュース

OA枠にソン・フンミン!!日本に衝撃敗戦した韓国リオ五輪代表の現在

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
リオ五輪のオーバーエイジ枠起用が濃厚となったソン・フンミン(写真:ロイター/アフロ)

ロシアW杯アジア2次予選に向けた合宿に突入したハリル・ジャパン同様に、韓国でも代表合宿が始まった。ウリ・シュティーリケ監督率いる韓国代表は3月24日にレバノン代表と対戦。ただ、韓国代表はグループGの首位に立つ韓国代表はすでに2次予選突破を決めており、29日に予定されていたクウェート代表戦もクウェートサッカー協会が資格停止処分受けたこともあって中止に。代わって27日(現地時間)にタイ代表とのアウェーでの親善試合を行なうことになったが、すでに最終予選突破を決めている状況ということもあってメディアの焦点をどこか定まらないといった感も否めない。

そんな中でふたたび脚光を集めているのが、リオデジャネイロ五輪出場を決めたU-23韓国代表だ。シン・テヨン監督率いるU-23韓国代表は、3月25日と28日に同じく五輪出場を決めているアルジェリア五輪代表と親善試合2連戦を行なうが、その大事な強化試合の前にシュティーリケ監督の口から本大会でのオーバーエイジ枠としてソン・フンミンが抜擢されることが早々と発表されたのである。

「シン・テヨン監督がリオ五輪でソン・フンミンをオーバーエイジ枠として起用したいという要請を受けた。A代表としては協力することにした。3月のAマッチ期間にソン・フンミンを招集しない代わりに、五輪本大会でオーバーエイジ枠として抜擢することを協力してほしいと、トッテナムにも公式文書を送った」

ソン・フンミンと言えばその成長過程から韓国サッカー界の異端児ともされる時期もあったが、今や押しも押されぬ韓国代表の主力になった若きエース。韓国サッカー界の期待の星として人気も高い。

(参考記事:「漫画のような父子物語」で育った韓国サッカー期待の星)

現在はプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーに所属しており、トッテナムからもソン・フンミンの五輪オーバーエイジ枠としての招集に関して肯定的な返事が返ってきたという。本大会5か月前にオーバーエイジ枠のひとりが決まるのも異例だが、驚くべきはシュティーリケ監督とシン・テヨン監督との間では、1月のU-23アジア選手権の時点でソン・フンミンのオーバーエイジ起用について話し合いが行われていたということだ。

U-23アジア選手権決勝で日本にまさかの逆転負けを喫して煮え湯を飲んだ、シン・テヨン監督からすれば、ソン・フンミンは絶対必要なオーバーエイジのカードだったのだろう。日本に喫した敗北は「崩れた韓国、“ドーハの悪夢”の誕生」と酷評され、そのベンチワークはもちろん、リーダー不在のチーム構成など監督としても手腕も厳しい非難にさらされた。それを改善するためには特効薬が必要だったわけだ。

(参考記事:「ドーハが“奇跡の地”から“衝撃の敗北の地”へと変わった日」)

ましてU-23韓国代表はリオ五輪出場こそ決めたものの、「コルチャギ(谷間)世代」と言われてきた。粒ぞろいのチームに刺激を与え、なおかつ戦力強化を図るためにもソン・フンミンは絶対必要だったわけだ。

(参考記事:「U23日本と決勝戦う韓国が「史上最弱の谷間世代」と呼ばれたワケ」)

特筆すべきは韓国のオーバーエイジ枠としての起用がソン・フンミンだけに止まらないことだ。シン・テヨン監督は「オーバーエイジ3枠はフルに活用する」としており、「ある程度構想はあるが、4月の本大会組み分け抽選会で対戦国が決まってから絞り込む」としている。と同時に、既存メンバーたちへの喝も忘れていない。U-23韓国代表の面々たちは今もそれぞれの所属クラブで定位置を確保したとは言い難いこともあって、「Kリーグが開幕してまだ日が浅いので今回は試合に出場していない選手も選んだが、これからも状況が変わらなければ選ばない。選手たちは代表優先ではなく、所属クラブで試合に出場できるよう努力しなければならない」と発破をかけて発奮を促している。

(参考記事:「頼みはOA枠!? 韓国リオ五輪世代の厳しい現実」)

リオデジャネイロ五輪に向けて着々と準備が進む中、本番を前に正念場にも立たされている韓国のリオ五輪世代たち。ポルトガル遠征に向かったU-23日本代表同様、サバイバル合戦はこれからますます熾烈を極めそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事