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東方神起チャンミンやSJのシウォンらが務める“義務警察”という名の兵役

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
集会やデモの管理に駆り出される韓国の義務警察(写真:ロイター/アフロ)

韓国の首都ソウル警察庁の公式インスタグラムにアップされた写真がちょっとした話題になっているらしい。警察が公式インスグラムを頻繁に更新していることも意外だが、5月20日にアップされたのがK-POPアイドルだった。

写真には、東方神起のチャンミン、SUPER JUNIORのドンヘ、シウォンの3人が警察官の制服姿で登場。その写真はニュースになり、「制服ファンタジーと呼ぶにふわさしい和やかな姿」(『スポーツソウル』)、「軍服務中のサプライズ近況“美男トリオ”」(『エクススポーツニュース』)とも報じられた。

(参考記事:警察官として兵役務める東方神起チャンミン、SJのドンヘ、シウォンの近況が明らかに!!

人気絶頂のK-POPアイドルである3人が警察官姿になったのは、番組出演やキャンペーン活動のためではない。彼らは現在、警察業務に従事することで、韓国の成人男性の義務である兵役に就いている。

韓流アイドルと兵役については過去2回のコラムでも紹介してきたが、兵役イコール軍隊というわけではないのだ。東方神起のユンホやJYJのジェジュンのように現役兵になる場合もあれば、JYJのユチョンのように行政サービスに従事することで兵役と見なされる社会服務要員制度もある、チャンミン、ドンヘ、シウォンのように警察業務も兵役のひとつになるのだ。

それが「義務警察」という名の軍代替制度だ。文字通り、警察という組織に身を置くことになる(「義務消防」というものもある)。

ただ、国家公務員として正式に警察官になるわけではない。あくまでも軍人として警察業務をサポートするという形で、殺人事件の捜査や凶悪犯罪の取り締りなど、刑事ドラマのようなことをするわけではない。主な任務も交通整理、防犯パトロール、集会・デモ管理などだ。配属される前には現役兵同様、新兵すべてが受ける軍事基礎訓練も受けなればならない。

もっとも、晴れて配属先が決まってからの生活は一般兵よりも自由度が多いという。義務警察の公式ホームページにもこんな紹介があった。

「週45時間勤務、週2日休業保障で十分な余暇生活をすることができます。週1回の外出、2ヵ月ごとに3泊4日の定期外泊、軍勤務と同一の定期休暇(28日)など多様な営外活動を保障します。民主的で水平的な同僚関係で自由で活気に満ちた生活の雰囲気があります」

(参考記事:【まるっとわかる韓国の兵役】義務警察とソウル市警察庁広報団とは?

外出や休暇の日数が一般兵とは比べものにならないほど多く、韓国のネット掲示板に投稿されていた義務警察経験者によると、配属先によっては携帯電話の所持も暗黙的に許可してくれるとか。「一般の軍隊よりも比較的自由です。ただ、市民からのクレーム対応に追われたり、正式な警察官ではないのでパトロールや取締り中に罵声を浴びるのがつらい」そうだが、前出のK-POPアイドルたちがそういった冷たい仕打ちに出くわすことはないようだ。

というのも、彼らが属するのは警察広報団。全国各地の学校や地域コミュニティ、孤児院や老人ホームといった福祉施設を訪ね、公演活動などを通じて犯罪防止や安全対策などの啓蒙活動を実施する、言わば“ソウル警察の顔”的存在の活動に従事している。

3月には彼ら三人が「学校暴力根絶キャンペーン」のポスターに登場したこともある。また、制服姿のチャンミンがセンターに陣取ってフラッシュモブを披露する映像も公開されたこともあった。広報団の公演回数は年間170回を超えるとされているが、まさに義務警察になってもK-POPアイドルたちは引っ張りダコなのだ。

(参考記事:【動画】兵役で“ソウル警察の顔”になったチャンミンの近況とは?

現役兵として、社会服務要員として、義務警察として兵役を務めていても、その近況が何かと話題になるアイドルたち。韓国では成人男子なら兵役を避けられず、ときにセンシティブな問題になりやすい。ただ、これまで3回にわたって「韓流アイドルと兵役の関係」を紹介してきたが、最近はセンシティブというよりも「あら、頑張っているのね」とお茶の間を和ませる芸能ニュースのひとつにもなりつつある。

アイドルはどこにいっても何をしても、ニュースになる。それは万国共通なのかもしれない。

(関連記事:東方神起やJYJのメンバーも服務中!! 韓流アイドルと兵役のナイーブな関係 ヤフーニュース個人 2016/05/19

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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