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「大谷翔平を倒す自信あります」と強気な選手も…WBCに向けて始動した韓国野球

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2009年の第2回大会で日韓は5度も対戦した(写真:ロイター/アフロ)

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)初制覇を目論む韓国代表が始動した。

1月11日、ソウル江南にあるリベラホテルで「予備招集」が行われ、監督やコーチングスタッフ、選手が初めて一堂に会した。主要スケジュールの確認、ユニホームの試着、そして投手たちは公式球も受け取った。2月中旬からは沖縄キャンプも組まれており、読売ジャイアンツや横浜ベイスターズとの練習試合も行う予定だ。

韓国代表を率いるのはキム・インシク監督。2006年と2009年のWBCで監督を務めた人物で、「プレミア12」でも監督を務めて小久保ジャパン相手に逆転勝利を飾っている。その実績から韓国では“短期決戦の達人”とも呼ばれる名将だが、その選任の背景には韓国球界の複雑な事情があったらしい。

(参考記事:WBCでまたもや老将に頼るしかない韓国のドタバタ監督人事の背景

といっても、韓国でWBCが担う役割は大きい。近年、韓国ではサッカーよりも野球の人気が高いのだが、その野球人気は2006年のWBC第1回大会をきっかけにもたらされたと言っても過言ではないのだ。

普段は国内で対決してきたプロ野球界のスター選手はもちろん、海外で活躍する有名選手たちが“野球韓国代表”という名のもとで集り、アメリカや日本といった強豪国と対戦する姿は、ただでさえ“韓国対世界”という構図に魂を奮わせる韓国人の“愛国心”を大いに刺激したのだろう。

実際に2006年第1回WBC以降、韓国の野球人気は急上昇。特に日本と5度も対戦した2009年の第2回大会は大盛り上がりだった。その激闘は、海外メディアから「アジア版ヤンキース対レッドソックス」と評されたほどだ。

韓国プロ野球は2016年、過去最高の観客動員数800万人を突破。韓国のプロスポーツで年間800万人を動員したのは、プロ野球が初めてだったが、その野球人気の口火を切ったのは、間違いなくWBCだったのである。

ちなみに韓国の野球ファンにとってWBCは、ピッチの外にも醍醐味がある。それが“美女応援団”の存在だ。

韓国プロ野球の華と言えば各球団のチアリーダーたちだが、2013年のWBCでは4人の美女チアリーダーが応援団として活躍した。

そのうちの1人、チアリーダーのカン・ユニはその美貌にスポットライトが集まり、一躍有名人に。大手ポータルサイトの検索キーワード1位になり、「WBCチアリーダーのカン・ユニ、国家代表級の美貌で“男心を惑わす”」(『スポーツ東亜』)という記事が出るほどだった。

(参考記事:KARAク・ハラ以上の美貌!? “チアドル”カン・ユニの魅力と紆余曲折

今回のWBCで韓国は地元ソウルの高尺(コチョク)スカイドームで1次ラウンドを戦うが、きっと熱狂の坩堝に包まれるだろう。

そして順当に1次ラウンドを勝ち上がれば、韓国は2次ラウンドで日本と対戦することになる。

韓国にとって日本は避けて通れない最大の強敵だけに、小久保ジャパンの動向は常にチェックしている。とりわけ二刀流・大谷翔平は、韓国でも関心が高い。

「日本はなぜ“WBCの大谷”に注目するのか」(『イルガン・スポーツ』)、「大谷の新年の願い“WBC、日本シリーズ優勝”」(『マイデイリー』)など、関連ニュースは連日のように報道されている。韓国にとっては、「必ず攻略すべき選手」と言うことだろう。

韓国シリーズでMVPに輝き、今大会で韓国の正捕手を務めるとされているヤン・ウィジも、韓国メディアに「大谷翔平ですか? 自信があります。最も重要なのは弱い気持ちではいけないということ。倒すことができるという考えだけしています」と話していた。大谷は韓国代表も意識せざるを得ない選手なのだ。

と同時に、大谷をはじめ新たなスター選手が次々と誕生する日本球界が羨ましくも映る。

今回の韓国代表メンバーを見渡すと、前出の監督同様、第3回大会、いや第2回大会と比べてもそれほど代わり映えがしない。韓国の“大谷世代”も選出ゼロ。韓国球界の進まぬ世代交代が露呈してしまった格好だ。その現実に韓国野球ファンたちもやきもきしている。

(参考記事:大谷翔平の高校時代を知る韓国の“大谷世代”たちは今、何をしているのか

そんななかで何かと賛否両論があったオ・スンファン(元阪神タイガースで現在はセントルイス・カージナルスに所属する)の招集を決めたキム・インシク監督。はたして“国民監督”は本番に向けて、どのようにチームを作り上げていくのだろうか。

WBC初制覇を目論んでいよいよ始動した韓国代表。4年前は1次ラウンド敗退の屈辱を味わっているだけに、今大会に臨む意気込みは高いはずだ。日本の強力なライバルとなるチームのひとつだけに、今から注目しておきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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