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フィリピンで続出する韓国人殺人事件…その背景に潜む韓国の“不都合な真実”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
フィリピンのドゥテルテ大統領(写真:ロイター/アフロ)

「あなた方の同胞の死に対して謝罪する」「そのようなことが起きたことは非常に遺憾」「殺人犯は最高刑を受けることになるだろう」

これはフィリピン警察庁が最近発表した韓国人拉致・殺害事件に対する、ドゥテルテ大統領の言葉。フィリピン在住の韓国人事業家が現地警察に拉致され、警察庁舎で殺された事件だ。フィリピン検察はこの事件の容疑者として、警察官2人を含めた7人を起訴している。

このショッキングなニュースは韓国でも注目を集めており、韓国ネット民たちは「早くフィリピンを旅行禁止国家に指定するべき」「韓国にいるフィリピン不法滞在者を一刻も早く捕らえて送還しろ」「フィリピンには短期旅行でも行かないほうがいい。国全体が腐っていると見るべき」「フィリピンでの韓国人殺害のニュースはもう10年もやっている。未だに行く人の理解ができない」などと書き込んでいる。

今回の事件は警察官が関係しているだけに深刻だが、そもそもフィリピンは韓国人にとって危険な国と言えるかもしれない。

それは数字に表れている。2013年~2015年にかけて、海外で殺害された韓国人は計79人に上るのだが、そのうちフィリピンで殺された韓国人が31人。全体の40%がフィリピンで被害に遭っているのだ。2016年も計9件の殺害事件が起こっており、犯人のうち4人は元・現職警察官というのだから驚かざるを得ない。

韓国人被害者が増えているのは、“金銭トラブル”が主な原因と分析されている。

(参考記事:ここ3年間で31人も!! フィリピンで韓国人の殺害事件が急増するワケ

が、問題はそれほど単純ではなさそうだ。というのも、前出の韓国ネット民のコメントにも書かれていたが、それでもフィリピンを訪れる韓国人旅行者が多いからだ。しかも韓国文化研究院が発表した「2012年国民旅行の実態調査」によると、50代以上の海外旅行者数は3年余りで40%以上も増加したという。

ある韓国メディアは、その理由をこう報じていた。

「50代中年男性が中心となっている東南アジアのゴルフ旅行は、すでに“海外遠征買春ツアー”と同じような扱いを受けている。そのなかでもフィリピンは韓国の中年男性たちに圧倒的な人気を誇る」

最近では中年ばかりでなく若者も多いようで、2015年8月にはフィリピン人女性を買春したという韓国人男性207人が検挙される衝撃の事態も起こっている。

(参考記事:買春目的でフィリピンに訪れた韓国人男性207人が検挙の衝撃!!

混血児“コピーノ”の問題も注目されており、もしこういった実状がフィリピンで起こっている悲劇の遠因だとしたら、韓国側にも自らの素行を省みなければならない部分もあるのではないだろうか。

韓国では年々増加する旅行者数が増加していることから、“年間2000万人出国時代”と表現されてもいるが、一方で韓国を訪れる外国人観光客も増加の一途を辿っている。

2012年に初めて1000万人を突破したことを皮切りに、2014年には1420万人に。2015年こそ微減(1323万人)したが、昨年は1724万人と過去最高を記録した。

詳しい統計を見ると、中国人観光客が約600万人(2015年)から800万人(2016年)、フィリピン人も33万人から45万人と大幅に増えていることがわかる。ただ、このような現象が今後も続くとは思えない。

『韓国経済』によると、韓国の「格安パッケージツアー」を経験した外国人観光客のほとんどが「二度と韓国に行きたくない」と答えたというのだ。

さらに、残念なことに韓国では外国人観光客、とりわけ女性観光客のトラブルが増えているという。オーストラリアでは、これまで「女性観光客にとって危ない国」ランキングのトップはインドだったが、最近は韓国の名が挙がるようになってしまった。

(参考記事:外国人女性の被害続々…“女性観光客にとって危ない国”に落ちた韓国

今回の件でフィリピンを非難する声は大きく、それは当然ともいえるが、海外旅行に出る人や訪韓する外国人が増えている今だからこそ、その国の国民性が問われているような気もする。二度と悲劇が起きないようにフィリピン当局はもちろんのこと、韓国側も努力するべきことがあるのではないだろうか。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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