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W杯予選脱落に現実味が…サッカー韓国代表に今、何が起きているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

ロシアW杯アジア最終予選で韓国代表が中国代表に0-1で敗れた。それまで5試合を終えて3勝1分1敗でグループAの2位につけていた韓国は、2分3敗で同最下位の中国に痛恨の完封負け。グループA の3位に転落する可能性も浮上している。

UAEに快勝した日本と比べると、その惨めさはより鮮明に映るだろう。

最近は選手や監督が中国になびいているとの指摘もあるが、「中国には“恐韓症”がある」と考えられてきた。代表戦で韓国が中国に敗れたのは実に7年ぶりだ。

(参考記事:金と選手と因縁が行き交うなかで行われた韓国と中国の“サッカー戦争”

それだけに当然、韓国メディアの論調は厳しい。

例えば、『SPORTAL KOREA』は「韓国サッカーはシュティーリケの虚像に騙されている」という記事を掲載。「中国戦で表れたシュティーリケ・サッカーは、依然として作戦と戦術の不在に加え、試合の雰囲気や流れに対応する知略がうかがえなかった」と、監督を厳しく批判している。

シュティーリケ監督を非難する声は多い。『ジョイニュース24』も「戦術も新鮮さもない…シュティーリケの“固執”で台無しになった中国戦」と見出しを打ち、「シュティーリケ監督が強調するボール支配率は64.3%-35.7%、パス514-264とリードしていたが、まったく効率的ではなかった」と指摘した。

さらに「シュティーリケが打った手はすべてリッピ監督に読まれた」としながら「最も荒唐だった場面は、後半38分にホ・ヨンジュンを投入したことだった。ゴールが必要な状況で代表経験がまったくないホ・ヨンジュンを投入したのは、シュティーリケ監督の頑固さにしか見えなかった。自分が選んだ新鋭を緊張感と負担の大きい試合でも、とにかく使おうという意地だった」と厳しく論じた。

リッピ監督に率いられた中国代表が脅威の存在になることは、以前、取材した日本人フィジカルコーチ池田誠剛氏も語っていた。その通りの結果になってしまったわけだが、韓国は敗因をシュティーリケ監督に擦り付けようしている意見が多い。

(参考記事:日本人フィジコ池田誠剛インタビュー「日本・韓国・中国のサッカー比較」)

『THE FACT』が韓国のサッカーファンに「韓国が中国に敗れた理由」を集計した結果を見ても、「シュティーリケ監督の戦術不足」(55票)が圧倒的で、次点が ソン・フンミンの不在」(9票)で、「中国の成長」(7票)が続いた。

思えば以前からシュティーリケ監督には更迭の危機が何度かあった。大韓サッカー協会のチョン・モンギュ会長は「監督交代の計画はない」としているが、今後の結果次第ではどう転ぶかわからないだろう。

シュティーリケ監督はこれまでも「怒りと失望を買った発言」を繰り返し、批判されてきたが、いよいよ「更迭」が声高に叫ばれ始めている。

韓国が立たされている現状は、非常に厳しいと言わざるを得ない。「シリア戦に敗れると…韓国サッカーの災いが訪れる」と報じたのは『スポーツ京郷』だ。

「最終予選が残り4試合となった状況で、勝ち点の差が4もあるイランに追いつくことは事実上不可能に近い。結局、2位死守がシュティーリケ号の至上命題だ」「残る試合で1敗でもすれば、W杯本選に臨める可能性は“危険水位”から“脱落危機”に変わる」などと、今現在の危機的状況を伝えている。

そんな状況に韓国を追い込んだのが、政治的な問題を抱え、韓国サッカーにおいても影響の強い中国だというのだから、なんとも皮肉だ。

(参考記事:“爆買い”中国マネーに侵食される韓国サッカー。「Kリーグ・エクソダス(大脱出)」の前兆か!?

いずれにせよ、韓国が困難な状況に立たされているのだけは間違いない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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