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山本太郎vs安倍晋三ー暴かれたイラク戦争加担、米軍による無差別虐殺、戦争犯罪支える対米追従・安保法制

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
空自がイラクで輸送したのは「国連その他の人員」が6%、米軍関係者が6割だった。

30日、参院の安保法制特別委員会で山本太郎議員(生活の党と山本太郎となかまたち)が安倍首相と対決。航空自衛隊がイラクで輸送したのは当初の「国連その他人道復興支援関係」と異なり、米軍関係者が約6割だったという「対米支援」だったという実態を追及。イラクでの米軍による無差別虐殺や、それに対する安倍首相の認識を鋭く指摘した。

安保法制をめぐる議論において、米国の独善的な戦争に日本も巻き込まれるのではないか、ということは非常に重要なポイントである。そのような意味で、イラク戦争で何が起きたか、今国会で検証することも必要だろう。

以下、昨日の山本議員の質疑の書き起こし。

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山本議員「生活の党と山本太郎となかまたち共同代表の山本太郎と申します。よろしくおねがいします。

航空自衛隊がイラクに派遣されていたことは、総理はご存知ですか?」

安倍総理「航空自衛隊はですね、イラク特措法に基づきまして、平成16年の3月からクゥエートを拠点としましてイラク国内の空港の間で人員物資を移送をしておりました。具体的には国連等の人員や事務機器、医療機器、車両、テント等を輸送したわけであります。そのさい、人員が向きを携行していたわけでございますがこれらの内容は、活動期間中や活動終了後に国会に説明報告するとともに、適切に公表をしております」

山本議員「クウェートの時は内閣の官房副長官だったんですものね。出動したときは平成19年、国会で総理は「国連その他の人道復興支援のための人員・物資の輸送を行っている」と説明されました。間違いございませんか?」

安倍総理「それに間違いはないわけでありまして、いまご答弁申し上げた通りでございまして、国連や多国籍軍のニーズにこたえて、国連米軍等の要員や医療機器、テント等を輸送したわけでございます」

山本議員「2004年3月3日から2008年12月12日までの空輸実績の全記録です。全体で46,000人輸送しました。平成19年の総理の国会答弁だけを聞きますと国連の関係者なのかな?と思いますが国連関係者はたった6パーセントほど・・・。その10倍 約60%が米軍や軍属だったということですが これ、なんの目的だったんですか?」

中谷防衛相「総人員が、46,479人でございます。 米軍人は約半分の23,727人でございます。この活動につきましては、特措法に基づいて、人道復興支援活動を重視をしましたが、派遣部隊は 人道復興支援活動に影響を及ぼさない範囲で『安全確保活動』を実施いたしまして、米軍は国連の安保理決議に基づいて治安維持活動のみならず復興支援活動にも取り組んでいたということで、この2つの任務のなかで活動したということであります。」

山本議員「ふたを開けてみたら6割が米軍または軍属。ではなぜ、国会でそういうふうに報告されるのか?意味が分からない 国連関係と言

いながら、メインは米軍の輸送なんじゃないですか? 国連職員と言いながら、人道復興支援と言いながら戦闘要員を運んでいたんじゃないんですか?って話なんですけど、 自衛隊が運んだ米軍兵士も、復興支援のための人員だったと宣言されますか?・・ひとことで」

安倍総理「これは、あの、イラク特措法に基づくこれは 活動としてですね、クゥエートを拠点としたイラク国内の飛行場で移送したわけでありまして、イラク特措法に基づく活動をしていたわけでございます」

山本議員「総理は、自衛隊がバグダットに輸送した兵士たちがそのあと、なにをしたのかという詳細まで把握されていたということですね?ということはそれらの兵士の所属部隊や従事した作戦まで知っていたということになります。それが把握しているということです。 内容は、結構です。把握していたのか、どうか。」

安倍総理「この法律によってですね、まさに これは人道復興支援活動と安全確保支援活動ということになっているわけでありまして、また、自衛隊の部隊については、武器の輸送は行わないことにしているわけですが、詳細について承知していたわけではありません。」

山本議員「なるほど、詳細についてはわからないわけですね、当時、そういうふうに聞かされていたわけですね。この、資料請求はできますかね?ほんとうにその人たちが平和活動のみに、その人たちが旅立っていたということでしょうか。その詳細というのは。そういう資料、出していただけますか?」

安倍総理「あの、移送した米兵についてはですね、イラク国内で復興支援または治安維持のいづれかの活動に従事していたというふうに認識をしているわけでございます。」

山本議員「総理は航空自衛隊が米軍兵士などを移送していた2006年7月以降、市民の犠牲者数 どのように変わっていったか、ご存知ですか?」

(中略)

イラク戦争での民間人犠牲者数の推移
イラク戦争での民間人犠牲者数の推移

山本「こちらのグラフですが、イラクで犠牲になった亡骸をカウントするNGO イラクボディ―カウントが発表しているもの。2007年の民間人の犠牲死亡者数、24,000人にも上っている。自衛隊の輸送が始まったのは、2006年の7月だと。この時期は安倍官房長官時代ですね。これ以降の約一年間、開戦直後の空爆が激しかったころを除けば、最もイラク市民の犠牲が多かった時期であり、米軍兵士の犠牲も一番多かった時期だそうです。総理にお聞きしたいのですが、2007年と言えば、第一次安倍政権、総理になられたんですよね。2007年の一年間で米軍が爆撃した回数はご存知ですか?これ、通告していません」

安倍総理「爆撃の回数は、すみません 今お答えすることはできません。」

山本議員「すみません、突然に。1447回。2007年の1年間で1447回も爆撃された、というのがイラクの現状です。テロとの戦いということで先進国が始めた戦争で、女性、子ども、お年寄り、多くの市民が犠牲になりました。イラク戦争の賛成したんですよね。安倍総理は。アメリカ兵の輸送に関しても、賛成されたんですよね。賛成してなかったらここまで来れてませんもんね。我が国の総理がイラク戦争についてはあまり詳しくご存じないようですね。その一方で自衛隊の活動を拡大しようとしている。アラブの人たち世界の人々は、どう思うでしょうね?」

山本議員「航空自衛隊のイラクでの空輸活動については、2008年の名古屋高裁で違憲判決、憲法違反だという判決が確定しています。総理、ご存知かご存知ないかだけお答えください」

中谷防衛相「平成20年の4月17日に、名古屋高裁における判決について、違憲の確認、および差し止めを求める訴えは、不適法なものであると却下されました。また損害賠償請求は法的根拠がない、として棄却されておりまして、国側が全面勝訴の判決でございました」

山本議員「総理、とお願いしたんです。総理にお答えいただきたい。最高責任者なんでしょう? この違憲判決。ようは、イラクでの空輸は違憲だ、憲法違反だという判決が出た。その要旨、中身を見てみると、『政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲としても、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる』。人道支援といわれるものの実態は結局、米軍との武力行使一体化であった、と。それがはっきりと司法によって判断された。イラク戦争でも我が国は多くの民間人を殺すことに加担していた可能性が高いということを伝えているわけですよね。輸送した米兵の中では、ひょっとしたら戦場に向かって、人道復興支援だという話になっていたかもしれませんけども、表向きは。でも、その中身はわからないってことですもんね。総理は衆議院の質疑で『国際憲章違法な武力の行使を行ってれば、それは国際法上認められないことであり、我が国はそのような国を支援することはない』と答弁されました。総理、我が国がジュネーブ条約や国際人道法や国際人権法に反する行為、つまり、戦争犯罪に協力することなんてありえませんよね?ひとことで」

安倍総理「我が国として国連憲章上、違法な武力の行使を行う国に対して、支援や協力を行うことはないわけです」

山本議員「夏休みでたまたま中学生がテレビを見ているかもしれない。今のやりとりは、『戦争には最低限ルールがある』ということです。攻撃するのはあくまで戦闘員、軍事拠点であり、一般市民や民間施設は攻撃しちゃダメ。当たり前ですよね。これに反するものは戦争違反とする。当然です。アメリカが批准しているジュネーブ条約では、民間人に対する攻撃、殺人、傷害は禁止。病人の保護、文民病院の攻撃禁止が定められております。

そして今、総理が言われたことは、『ルール違反は許さないよ』、ということですよね。おそらく、そういう違反をする連中とは一緒にやっていかない、という強い意思を示してくださったと思います。今までの委員会での発言でも。

でもですね、総理。一番絆を深めたがっているアメリカ、米軍は、ジュネーブ条約など国際人道法、国際人権法違反の常習犯だそうです。安倍総理にとっては、おじいさまの時代から深く縁があるアメリカかもしれない。この法案が成立すれば、より一層その絆も深まるかもしれない。そのアメリカの軍隊は、イラクでも戦争犯罪の常習犯との呼び声が高いそうでです。

2004年4月、米軍はイラクのファルージャという都市を包囲。猛攻撃を行った。翌月、国連の健康の権利に関する特別報告官が、ファルージャの攻撃で死亡したのは、90%は一般市民だった。約750人が殺されたという情報もある。国連は一刻も早く、人権侵害行為に関して、独立した調査を行うべきである、という声明も出している。 フリップをお願いします。

国会質疑で使用されたイラク・ファルージャで米軍に破壊された救急車の写真
国会質疑で使用されたイラク・ファルージャで米軍に破壊された救急車の写真

救急車、攻撃されてますよ。アメリカの攻撃ですよ、これ。2004年6月、現地入りしたジャーナリスト・志葉玲さんが撮影したものです。 黒焦げになった救急車。で、先ほどのお話です。国連の方が言うには、医療活動を妨害したのはアメリカ、そして救急車を攻撃したのもアメリカという話なんです。あまりにもひどすぎる。 じゃあファルージャ、どんな戦いだったのか。

2004年の11月から、米軍の大規模攻撃を受けたんですけれども、この作戦に参加した米兵がこう言っている。『冬の兵士・良心の告発』というDVDの中で。攻略戦の訓練を受けていた全員、みんなキャンプに行きますから、訓練をうけますから、ある日、軍法の最高権限を持つ部隊の法務会に招集され、こう言われた、と。

『武器を持つ人間をみたら、殺せ。双眼鏡を持つ人も殺せ。携帯電話を持つ人は殺せ。何も持たず、敵対行為がなかったとしても、走っている人、逃げる人は、何か画策しているとみなし、殺せ。白旗を掲げ、命令に従ったとしても、罠としてみなし、殺せ』、と指示した。ファルージャで僕たちは、その交戦規定に従った。米兵たちは、ブルドーザーと戦車を使って、家屋を一つひとつ轢き潰し、人間は撃ち尽くしたか、犬や猫やニワトリなど動くものは何でも撃った。動物もいなくなったから、死体も撃った』

これ、一部のおかしな米兵がやったことじゃないですよ。米軍が組織としてやってきたことです。ファルージャだけじゃない、バグダッドでもラマディでも・・。

総理、アメリカに民間人の殺戮、当時『やめろ』って言ったんですか? そしてこの先、『やめろ』と言えるんですか? 引き上げられるんですか? お答え下さい。」

安倍総理「まず、そもそもなぜ米国、多国籍軍がイラクを攻撃したかといえば、大量破壊兵器、当時のサダム・フセイン、独裁政権が、かつては間違いなく化学兵器を持ち、そしてそれをイラン・イラク戦争で使用し、多くの人々を殺し、自国民であるクルド族に対してもこれを使用して、相当多くの自国民も殺した という実績があったわけでありまして、そして、それを既に、化学兵器・大量破壊兵器はないということを証明する機会を与えたにもかかわらず、それを実施しなかったというわけであります。

そこでですね、国連決議において、国連憲章第7章のもとで採択された決議、678、687および1441を含む関連の安保理決議によって、これは正当化されたと、考えているわけでございます」

山本議員「イラクに査察に入った国連の方々、700回以上ですよ、大量破壊兵器なかったって話。でも、むりやり踏み込んだのは、アメリカとイギリスじゃないですか。で、その片棒を担いだのは日本なんですよ。その総括がなされずに、自衛隊をまた外に出す・遠くに出す・拡大させる? これ、総括必要ですよ。総理、総括する必要あるでしょ? あなた自身が。だってずっと、その決定してきた組織の中にいて、いいポジションにいたんですから。ありがとうございます。質問を終わります」

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書き起こし:小原美由紀

筆者注:湾岸戦争時決議678、687と、イラクへの査察を求める決議1441を組み合わせて、イラク攻撃容認の安保理決議とするという主張は、オランダでのイラク戦争検証の最終報告書(2009年)で否定されている。

昨日の質疑の動画は、Youtubeでも観れる(全19分)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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