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安田純平さん「シリアの武装勢力が身代金要求」、ジャーナリスト団体が声明―情報の信ぴょう性には疑問も

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
その安否が心配される安田純平さん(写真:ロイター/アフロ)

国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」は、フリージャーナリストの安田純平さん(41)がシリアの武装勢力に拘束されており、「身代金を要求されている」「期限内に対応しなければ殺される」として、早急な対応を日本政府を求める声明を、22日、団体のウェブサイトに掲載した。だが、国境なき記者団の情報については信ぴょう性に疑問も残る。

安田さんは、シリアで取材中の今年7月、その消息を絶った。海外メディアなどで、現地武装勢力に拘束されたと報道されるなど、海外の報道関係者及びジャーナリスト団体も、その安否を心配していた。今回、「国境なき記者団」は、同団体が得た情報として、「安田さんはシリアで武装勢力に拘束されており、武装勢力らは身代金を要求している。期限内に要求が満たされなければ殺される恐れがある」としている。その上で、日本政府にありとあらゆる手段をとるよう、求めている(関連情報)。

だが、筆者が信頼する情報筋からは、身代金や殺害予告についての情報はなく、国境なき記者団の情報の信ぴょう性は低いように思われる。2004年4月のイラクでの日本人人質事件でも、誘拐犯とは関係ない人物が自分が「交渉役」だと名乗り出て、混乱を招くということがあった。国境なき記者団もそうした攪乱情報に惑わされている可能性もある。

国境なき記者団の情報が間違っているとしても、安田さんがシリアで拘束されている可能性は高く、日本政府には慎重な言動が求められる。後藤健二さんと湯川遥菜さんが人質とされた際も、安倍首相は中東の嫌われ者イスラエルで同国の国旗の前で演説する、交渉を一切しない、ISに人脈をもつ学者やジャーナリストの協力の申し出を無視するなど、まるで人質を殺せというような振る舞いをした。くれぐれも、現地の武装勢力を刺激するような言動は控えてもらいたい。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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