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【閲覧注意】安倍政権の「死の商人」化がもたらし得ること、参院選での有権者の責任

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
イスラエル軍に殺されたパレスチナ人一家を埋葬する遺族ら 2014年筆者撮影

参院選を前に、有権者の方々に是非、考えてもらいたいことがある。安倍政権が武器輸出を解禁し、また非戦闘員の虐殺、医療施設・国連関連施設への攻撃を行うなど戦争犯罪を繰り返しているイスラエルと関係を強化していることは、これまで指摘してきた(関連記事)。そして、ついに防衛省・防衛装備庁がイスラエルと無人機の共同研究を始めることとなった。既に書いたように、イスラエル軍は無人機は兵器として使っており、パレスチナ自治区ガザの子ども達も、こうした無人機によって殺されている。武器輸出への公的資金投入は「殺人予算」というべきだ(関連記事)。

やはり安倍政権が共同開発・生産を決めた、米国の戦闘機F-35も、イスラエルが配備することが決定しており、経団連は日本配備分の他、国外にも日本で製造したF-35戦闘機を売ることを提言している。そして、経団連は22億円という自民党への企業・団体献金(2014年度)の旗振り役であり、最大のスポンサーであり、武器輸出緩和を10年以上前から求めてきた。そうした要求に応えるかのように、安倍政権は武器輸出三原則を撤廃した。つまり、安倍政権を支持するということ、今回の参院選で自民党に投票するということは、イスラエル軍がパレスチナ等で行っている虐殺に、日本が加担することにつながりかねない、ということだ。また日本企業が「死の商人」化し、その支援に税金が投入される流れをつくってしまうということでもある(関連記事)。間接的とは言え、私達日本の有権者の投票は、現地の悲劇と無関係ではない。

だが、こうしたことを書いても、多くの日本の読者諸氏にはピンと来ないのかもしれない。ますます内向き化する日本のマスコミ報道において、パレスチナでイスラエル軍が行っている所業を伝える機会はお世辞にも多くない。そして、凄惨な現地の被害は、日本のテレビや新聞、そして最近は雑誌やネットメディアでさえも、刺激が強すぎる、として、見せることはできない。その一方で、やれ、産業基盤の維持だ経済効果だ、業界の代弁者のような報道も少なくない。はっきり言えば、無責任だ。せめて、戦争の支援をするということが、どのような結果をもたらすのか、認識すべきだろう。以下の写真はいずれも、筆者が2014年夏に、イスラエル軍の猛攻を受けたパレスチナ自治区ガザで撮ったものだ。ここでは、写真をぼかしているが、各写真の下にあるリンク先は、ぼかしなしである。是非、ご覧いただければ、と思う。

イスラエル軍の爆撃で殺された赤ちゃん。
イスラエル軍の爆撃で殺された赤ちゃん。

モザイクなしの画像

ジャベル家ではイスラエル軍の爆撃で18人が死亡した。2014年ガザにて筆者撮影
ジャベル家ではイスラエル軍の爆撃で18人が死亡した。2014年ガザにて筆者撮影

モザイクなしの画像

イスラエル軍の空爆で殺された少年。2014年ガザにて筆者撮影
イスラエル軍の空爆で殺された少年。2014年ガザにて筆者撮影

モザイクなしの画像

2014年のガザ取材当時、Facebookでは、「残酷な写真を載せないで」という声も少なくなかった。現地にいた筆者は若干憤りを感じつつも、ガザの状況を知ってもらうことが優先、とあまりショッキングすぎる写真は使わないようにしていた。その方がシェアされるだろう、と思ったからだ。だが、現地の悲劇と、日本がリンクしつつある中で、「残酷な写真は観たくない」などということは、つまり、悲惨な現実など知りたくないなど、最早おこがましいことだ。メディアの自主規制も愚かしい。それこそ「平和ボケ」というものだろうし、戦争の実態を伝えないことが、安倍政権や経団連の兵器ビジネスを助長しているのである。特に安倍政権を支持している人々、自民党に投票してきた人々には、是非、現地で何が起きているのかをご覧いただければ、幸いだ。そしてこれを機会に武器輸出の問題を、自分たちにも無関係でない問題として考えてもらいたい。なお、筆者も協力している武器輸出反対ネットワークは、イスラエルとの無人機の共同研究に反対する署名を集めている。選挙での投票とは別に、こうした意思表示を行うことも、民主主義社会において、重要なことであろう。

(了)

武器輸出反対ネットワークの署名http://urx.red/uUYx

*写真の無断使用を禁じます。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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