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「チャーロは僕には勝てない」 ~チャーリー太田 カナダ決戦直前インタヴュー

杉浦大介スポーツライター

5月24日 カナダ・モントリオール ベルセンター

スーパーウェルター級10回戦/IBF世界ランキング2位決定戦

IBF世界スーパーウェルター級5位

ジャーメル・チャーロ(アメリカ/23戦全勝(11KO))

vs.

IBF世界スーパーウェルター級9位

チャーリー太田(アメリカ、日本/24勝(16KO)1敗1分)

正真正銘の大舞台

ーーチャーロとの世界ランカー対決はいよいよ明日だ。会場のベルセンターはソールドアウトらしいし、Showtimeで生中継されるという意味でも重要なファイトだけど、今の気分は?

チャーリー太田(以下CO):これ以上ないくらい準備はできているよ。こんなチャンスをずっと待っていたんだ。ハードワークを続け、海を渡って、ついにここまで辿り着いた。あとは仕事をやり遂げるだけだ。

ーー5月22日にモントリオール入りするはずが、悪天候でフライトがキャンセルになるという手痛いアクシデントがあった。結局は計量当日の今日(5月23日)に現地入り。調整は簡単ではなかったのでは?

CO:昨日は辛かったね。ただ僕は精神面の強さには自信を持っている。厳しい時間が来ればよりタフになれるんだ。無事にここに到着できたし、あとは辛抱強く、集中して、今夜はよく眠るだけ。もう準備はOKだよ。

ーー計量でチャーロと顔を合わせたけど、相手の印象は?

CO:いい奴だったね。ただ、僕に勝つために十分な強さは備えていないと思っている。アウトボクシングは上手いけど、フィジカルの強さでは負けていない。テレビで試合を見ている分には良いテクニックを持っているという印象を受けたけど、実際に顔を合わせてみて、威圧感はまったく感じなかった。

ーーファイトプランは?

CO:上手く相手にプレッシャーをかけていくつもりだ。スリッピングやパーリングで相手のパンチをかわし、ダメージを受けず、彼にとって難しいファイトにしてみせる。ひとつ重要なのは、僕の方はパンチをコンビネーションで繰り出すこと。距離が詰まったら、少なくとも3発以上のコンビネーションを出し続けなければいけない。

ーーチェスマッチになるか、真っ向からのファイトになる?それとも両方のミックス?

CO:両方だろうね。チャーロも良いボクサーではあるから、彼にとって良い場面もあるだろう。逆に僕が力を発揮する場面もあるはずだ。彼のジャブが奇麗に見える時間帯もあるかもしれないけど、ただ、相手にダメージを与えられるパワーを持っているのは僕の方。それが決め手になると思っているよ。

いつも通りKOを狙う

ーー試合地は中立地のカナダとはいえ、チャーロはゴールデンボーイ・プロモーションズという大プロモーターのお抱え選手だ。正当な判定が下されるか少し心配ではある。KOが必要だと考えている?

CO:僕がKOを狙うのはいつものことだ。そのためにハードなトレーニングを続けて来ているんだからね。実は今日、Showtimeのスタッフとのファイターズ・ミーティングでも同じことを訊かれたんだよ。「外国に本拠を置く選手である君が、ゴールデンボーイ・プロモーションズ傘下のボクサーと戦うことをどう思うか」ってね。ただ、ボクシングは真の意味でワールドワイドで、世界各地で行なわれているスポーツだ。どこに行ってもルールは同じなんだ。例えばバスケットボールで言えば、どの選手が放つ3点シュートも同じ3点として記録されてしかるべき。僕は心配していないよ。これまで日本、アメリカで試合をして来て、今後にヨーロッパに行くのだって構わない。試合を見てくれるファンはすべてを理解してくれると信じている。どんな形でも、勝ち残るのは僕だ。

ーーこの試合はIBFのエリミネーターだけど、2位決定戦という微妙な肩書きが付けられている。タイトルにどう繋がるかは気になる?

CO:勝てば世界タイトル挑戦に向けてステップアップできると認識している。エキサイトしているよ。ここに来るまで、この試合はIBFのエリミネーター、WBOのエリミネーター、IBFの2位決定戦、WBCの3位決定戦になるとか、いろいろ耳に入って来た。とにかく、はっきりしているのは重要なファイトだということ、勝たなければいけない試合だということだね。

ーー大事なステップの前にこんなことを訊くべきじゃないのかもしれないけど、チャーロをクリアすれば、ターゲットはやはりIBF王者カルロス・モリーナ、WBO王者デメトリウス・アンドレイドのいずれかになるのかな。

CO:アンドレイドはジャブを突いてサイドに動くタイプの選手。モリーナはラフな戦術も得意で、巧さが売りのベテランだ。モリーナはシカゴ出身だけど、大きなファン層を持っているわけではないから、彼になら日本で挑戦できる可能性もあるかもしれない。日本のファンに「ガンバッテ!」と言って貰えるタイトル戦が実現できたら素晴らしいだろうね。

ーーアンドレイドを日本に呼ぶのは難しいだろうね。

CO:そう、アンドレイドもまだ人気選手というわけではないけど、陣営はより大きな力を持っている。彼と対戦するなら、アメリカで、東海岸開催ということになるのだろう。それはそれで僕にとっても問題ない。もちろんアンドレイドは来月にブライアン・ローズとの指名戦を控えているから、その結果次第ということになるけど。

日本ボクシング界のためにも

ーーそうやってターゲットを具体的に絞るために、まずは明日の試合に勝つことだ。キャリアの分岐点の一戦を前に、現在の自身の感情をどう表現する?一言で言うなら、「興奮している」?「待ち遠しい」?あるいは「ナーバス」?

CO:「やっと」かな(笑)

ーー「Finally」か。マイク・タイソン対イベンダー・ホリフィールド戦のキャッチコピーと同じだね(笑)

CO:そうだっけ(笑)。これまでずっと頑張り続けて、ついにここまで辿り着いたんだ。

ーーボクシングを始めて何年?

CO:プロデヴューしたのは2006年だから、プロでは8年目だ。長い時間だったね。

ーーこの重要なファイトで、どんなチャーリー太田をカナダのファンに見せたいと思っている?

CO:アグレッシブに攻めて、ファンを喜ばせるような試合がしたい。「あの選手をまたカナダに連れて来てくれ」なんて声が出るようなファイトを見せたい。良い試合になると思うよ。これまで「(アジアで積んだキャリアだから)たいしたことない」なんて声も聴いたことがあった。しかし、実際には僕がここまで来れたのは、過去に(日本で)対戦した選手たちから学ばせてもらったからなんだ。良い経験を積まさせてもらった。もちろん僕のキャリアにとって重要なファイトである。それと同時に、自分のためだけではなく、日本ボクシング、東洋太平洋地域の選手が喜ぶような試合をみせたいんだ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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