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【NBA】クリスマスのボストン・セルティックス戦で改めて露呈したニューヨーク・ニックスに足りないもの

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

12月25日 マディソン・スクウェア・ガーデン

ボストン・セルティックス(18勝13敗)

119-114

ニューヨーク・ニックス(16勝14敗)

リトマス紙的なゲームで惜敗

「ニックスは本物か?(Are the Knicks for real?)」

NBA恒例のクリスマスゲームに2年ぶりに登場したニックスに関し、Yahoo!スポーツのプレヴュー内にそんな記述があった。

今季10戦目以降は13勝7敗と、新生ニックスは一見すると好調だ。12月も7勝4敗と良いペース。しかし、その7勝はすべて勝率5割以下のチームから挙げたものであり、キャブズ、ウォリアーズには大敗を喫している。

今季を通じても勝率5割以上のチームに3勝9敗。そんなニックスにとって、25日時点でイースタン・カンファレンス3位タイのセルティックスとの対戦は1つの物差し的なゲームと言えた。

クリスマスの昼12時から行われたアトランティック地区のライバル対決。セルティックスのペースで進んだものの、第4クォーター終盤、ニックスは11-2のランで残り1分6秒で112-112の同点に追いつく。しかし、そこからマーカス・スマートのスリー、ジェイ・クロウダー、アイザイア・トーマスのフリースローで加点し、セルティックスが接戦を制した。

カーメロ・アンソニーが29得点、7リバウンド、デリック・ローズが25得点、クリスタプス・ポルジンギスが22得点、12リバウンドと“ビッグスリー”がそれぞれ活躍。それでも勝てなかったこの日のゲームは、現在のニックスの長所と短所を分かりやすく示していたと言って良い。

得点力、破壊力は十分に備える

控えにも得点力のある選手が揃っており、ニックスのいわゆる“Firepower(爆発力)”はイースタン屈指。堅守で知られるブラッド・スティーブンスHC指揮下のセルティックス相手に、残り5分弱で13点差から一気に追いついた迫力たっぷりのオフェンスは見応えがあった。

「僕たちは最も多くのアシストを稼ぐチームではない。うちの主力選手はアイソ(アイソレーション)から自身と周囲のためにプレーメイキングする。だから、アシストが少ない日があってもそれほど心配はしていない。もちろんより多くのパスが必要な状況もあるけどね」

この日はチーム全体で今季最小の11アシストに終わったことに関し、ポルジンギスはそう答えていた。

実際にカーメロ、ローズを始めとする複数の優れたプレーメーカーを擁しているのだから、ある程度アイソレーションが中心になることが大きな問題とは思えない。今後も特に勝率5割以下の低迷チーム相手には、“Firepower(爆発力)”を生かして勝ち切るゲームは多いだろう。

それよりも、2016年最後のホームゲームを終えて、ニックス最大の懸念材料ははっきりしている。

30戦中25戦で100失点以上

「僕から見て、問題のすべてはディフェンスだよ。(守備面で)コミュニケーションがとれていなかった」  

ローズのそんな言葉を聴くまでもなく、弱点はディフェンス。平均失点、ディフェンシブ・レイティングでリーグ25位という成績がそのレベルを物語る。

今季最初の6試合すべてで100失点以上を許すと、ニックスはカート・ランビスをディフェンスのコーディネーター的な役割に任命して立て直しを図った。しかし、以降の24戦でも相手を100失点以下に封じたのは5試合のみ。特にピック&ロールへの対処が壊滅的で、スイッチのタイミングに戸惑うシーンが目立つ。

多くのベテランはペリミターのディフェンスに奔走する身体能力に欠け、一部を除いて守備への献身的姿勢もない。エースとしてリーダーシップを発揮するカーメロも、ディフェンスへの意識の低さは変わらない。

おかげで25日もセルティックスはスリー以外のFGを52%の高確率で決め、第2〜4クォーターだけで97得点を挙げた。イン&アウト両方に穴は多い。点の取り合いで下位チームを下すことはできても、攻守両面で手強い上位チームにニックスが勝てない理由をそこに見い出すことができる。

振り返ると、今オフにジョアキム・ノアを獲得した狙いは理解できる。オフェンス偏重の選手が多いチーム内で、コートニー・リーとともに、守備の要かつリーダー的な役割をノアにも期待したのだろう。

しかし、故障を繰り返してきたノアに、2014年にディフェンシブ・プレーヤー・オブ・ジ・イヤーを獲得した当時の面影はすでにない。

トレードの選択肢も?

“オフのギャンブル(=ノア獲得)”が失敗に終わりそうな状況下で、今後を考えても、ニックスのディフェンスが劇的に向上するとは考え難い。

それゆえに、一部からはトレードで守備的な選手を獲得すべきとの声も出てきている。その方向に進んだ場合、ナーレンズ・ノエル(76ers)、ウィリー・コーリー・スタイン(キングス)、トニー・アレン(グリズリーズ)あたりが候補か。

ただ、現実的に今季もイースタン・カンファレンス・ファイナル進出は難しそうにも関わらず、大事なドラフト指名権をシーズン中の補強に費やすことが適切なのかどうか。そして、ドラフト指名権以外に目立ったトレード要員は少ない。言い換えれば、このあたりに現行ロースターでのニックスの限界があるのだろう。

昨季までより明らかな向上の跡を示し、2016年のニックスは地元ファンを少なからずエキサイトさせて来た。今のままでも中位〜下位シードでのプレーオフ進出は有望だろう。しかし、さらに次の段階に進むことは、“低迷チーム”から“まずまずのチーム”に成長するより遥かに難しい。

限られた持ち駒を生かし、2017年、ニックスのフロント、首脳陣がどんな手を打ってくるかに注目が集まる。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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