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C組は実は「死の組」。ブックメーカー4社の予想オッズを比較することで浮かび上がる事実

杉山茂樹スポーツライター

ブックメーカーのオッズは、世の中で最もフェアな予想だと思っている。客観を尽くした予想なので、信頼度は高い。世の中のスタンダードを知りたいとき、僕は迷わずそれぞれのホームページを覗く。W杯の抽選会が終わって間もないいまは、まさにそのタイミングだ。

「死の組」「楽な組」など、巷には様々な予想が飛び交っている。日本では楽観論が目立つが、それははたして正論なのか。スタンダードはどこにあるのか。

大手4社(William Hill、Ladbroke、CORAL、bet365)の予想オッズを元に、各グループリーグの情勢を、ここで探ってみることにしたい。32チームの立ち位置は鮮明に見えてくるのである。

●A組(2位争い)

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クロアチアとメキシコとの2位争い。Ladbrokes社が両者互角と見ているのに対し、他の3社はクロアチアやや有利の見解。注目すべきは1位ブラジルと2位との差だ。全8組の中でこのA組が最も離れている。

W杯の抽選にはカラクリがある。開催国は対戦相手を選ぶことができるとは、もっぱらの噂。「そんなことは世界の常識だ」と欧州人は言うが、この抽選結果を見ると、思わず納得する。ブラジルの首位通過の予想オッズは、平均約1.2倍。あらゆる組の中で最も低い。ブラジルが転けることはあり得ない。

●B組(混戦)

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D組に次ぐ混戦。「死の組」といっても言いすぎではない。1位スペインから3位チリまでの差は僅か。この状況は、後で紹介するE組の関係に似ている。3番手チリがオランダを食うのか。オランダがスペインを食うのか。はたまた、チリがスペインを食うのか。

ちなみに、チリとスペインは前回大会でも同じグループで戦っている。結果は2対1でスペイン。しかし内容は、もう一度戦えば、どちらが勝つか分からないほどの接戦だった。

●C組(2位争いは大接戦)

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B組とは混戦の意味が違う。こちらの頭はコロンビアで堅い。2位との差は全8組中、3番目に離れている。注目は2位争い。コートジボワール、日本、ギリシャ。この3者の関係は、どの組より接近している。2位と最下位は紙一重。日本にとってはまさに「死の組」だ。個人的には、ギリシャの評価はもう少し高くてもいいと思うが、それはともかく。この組を「楽な組」と言っているのはいったい誰なのか。迂闊な発言は慎むべきだと言いたくなる。ブックメーカー4社の平均を取れば落選候補。楽観ムードに浸っている余裕は全くないのである。

●D組(死の組)

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英国のブックメーカーは購買を促すため、チャンピオンズリーグ等で地元イングランド勢に甘い数字を付ける。今回もその傾向があるなら、イングランドはピンチだ。イタリア、ウルグアイの関係より、ウルグアイ、イングランドは開いた関係にある。そう読み取ることができる。

ただし、1位予想のイタリアには、全8組中、最も高いオッズが付けられている。最も信用度の低い本命と言える。もし日本がC組で2位通過を果たせば、決勝トーナメント1回戦で、この組の1位と当たる。イタリアかウルグアイか。イングランドならチャンスの目はグッと開けるのだが。

●E組(接戦)

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前でも触れたが、この状況はB組ときわめて類似している。3番手に控えるのが南米勢である点も共通している。

チリとエクアドルそれぞれに付けられたオッズも各社全く同じ。Bet365が5倍で、残る3社はいずれも5.5倍だ。

今大会の舞台が南米であることを考えると、その差はあってないようなもの。個人的には、チリ、エクアドルのどちらかは、2位以内を確保するのではないかと思っている。

●F組(2位争い)

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アルゼンチンはブラジル以上に組み分に恵まれた。倍率はブラジルとほぼ同じ。しかも、会場はいずれも、しのぎやすい気候のブラジル南部。体力を温存しながら次のステージに上がれそうだ。

2位争いは見解が分かれている。William Hill社は他の3社と異なり、ナイジェリアを2位に推す。ちなみに各ブックメーカーがアフリカ勢の中でグループ2位に推すのは、このナイジェリアとC組のコートジボワールのみ。アフリカ勢苦戦。ブックメーカーの読みは当たるのか。

●G組(波乱含み)

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ドイツとポルトガルで決まり。一見そのように映るが、よく目をこらせば、首位と最下位の差が、C組に次いで接近していることに気づく。さらに言えば、ガーナとアメリカの差もないに等しい。

これはドイツ、ポルトガルに、息を抜くことができる試合がないことを意味する。酷暑の北部で3試合を戦うドイツには、喜ばしい組分けではない。待ち受けるのは消耗戦。その意味で手強いのは、アメリカンスピリッツ溢れる米国だ。彼らの根性は半端ではない。ゲルマン魂不利と見る。無事に勝ち上がったとしても、先行きへの不安は否定できないのだ。

●H組(微妙)

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ベルギーの評価は相変わらず高い。先月の親善試合で、コロンビア、日本に連敗しても、G組のドイツと遜色ない高い支持を得ている。2番手ロシアの評価も高い。2番手に推されるチームの中では、D組のウルグアイに次ぐ存在だ。

韓国の立ち位置は微妙だ。「追って届かず」なのか、ギリギリ届くのか。数字的にはかなりきわどい。ただし、後ろから追われる心配はない。それこそが日本との違いだ。チャレンジャーに徹しきれる強みはある。

(※オッズデータは12月9日現在のものです)

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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