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城所につづけ! 12球団「○○待機中」、遅咲きのブレイク候補たち

田尻耕太郎スポーツライター
栄冠や成功を手にするチャンスは、誰にでもある(写真はイメージ)(写真:ロイター/アフロ)

プロは才能の宝庫。可能性は誰にでもある

「キドコロ活躍中」「キドコロ覚醒中」「キドコロMVP」――。

この1か月ほどで、様々な新しい用語が生まれた。

スーパーサブから一転、球界の主役へと大飛躍を遂げた福岡ソフトバンクホークス城所龍磨外野手。苦節13年目で手にした交流戦でMVPの栄冠には、海の向こうであのイチローも反応したほどだ(かつて城所グッズの「キドコロ待機中」Tシャツを着てメディアの前に登場した縁があり)。

ドラフトでは高評価。入団時から期待をされて当時の王貞治監督も認める才能の持ち主だったが、なかなかそれに応えることが出来なかった。昨年は度重なる故障で出場1試合のみ。

「契約を更新するまで、本当に不安でした」

プロ野球選手として崖っぷちに立たされた男の大逆転人生だ。あきらめちゃいけない、何が起こるかわからないと、本当に痛感させられた。

プロ野球界は、豊かな才能を持った者だけがそのユニフォームにそでを通すことが出来る世界。可能性を秘めた者ばかりだ。

まだまだ突如ブレイクを果たす、遅咲きのプレーヤーが12球団に「待機」しているのではなかろうか。その候補者たちを各球団からピックアップしてみた。

ソフトバンク 吉村裕基(32歳・14年目、02年ドラフト5位)

(通算)907試合 打率.255 128本塁打 401打点

ベイスターズ時代に一旦ブレイクは果たしている。‘06年から4年連続2桁本塁打。‘08年には自己最多の34発を放った実績がある。しかし、‘10年から出場機会が減少して‘13年にホークスに移籍した。福岡は地元で人気は高いが、レギュラー獲得には至っていない。それでも今年4月17日のイーグルス戦(ヤフオクドーム)では、3点ビハインドの9回裏2アウトから代打で出場すると、相手守護神の松井裕樹からライトへ値千金の同点3ラン。さらに続く12回裏の打席では2打席連発となるサヨナラ本塁打を放つ離れ業をやってのけた。

ロッテ 青松慶侑(30歳・12年目、‘04年ドラフト7位)

(通算)26試合 打率.214 1本塁打 5打点

昨年まで「待機中」一番手を挙げるとすれば細谷圭(28歳・11年目)だったが、今季は先発機会を増やして持ち前の打撃力を発揮し始めているため選外とした。打力自慢は他にもいる。12年目の右打者、青松だ。昨季、念願のプロ初本塁打。また、同じく昨季のイースタンでは首位打者(.298)、本塁打王(15本)に輝いた。マリーンズは今季の細谷をはじめ、昨季の清田を見ても『遅咲き』が開花する傾向にあるチームなだけに、期待が集まるところ。

日本ハム 新垣勇人(30歳・4年目、‘12年ドラフト5位)

(通算)6試合1勝3敗、防御率10.24

大学、社会人を経てプロ入りしたため、4年目ながら30歳。ファームでは13試合登板6勝2敗1セーブ。防御率1.96はイースタン・リーグ2位と安定している。69回を投げて8与四球のコントロールの良さは魅力だ。新陳代謝が活発なチームだけに、出場のチャンスは十分にある。

西武 坂田遼(29歳・8年目、‘08年ドラフト4位)

(通算)234試合 打率.235 18本塁打 89打点

‘10年に39試合出場ながら8本塁打と長打力を発揮。しかし、左肩脱臼を繰り返すなど、故障でチャンスを逃してきた。「左のおかわりくん」として期待が大きく、今季は35試合出場で20打点と勝負強さをアピールしている。本家のおかわりくんが離脱している今こそ、絶好のアピール機会だ。

楽天 枡田慎太郎(28歳・11年目、‘05年高校生ドラフト4位)

(通算)333試合 打率.257 20本塁打 127打点

イーグルスが日本一に輝いた‘13年は自己最多の86試合に出場して311打席に立った。だが、近年は代打など途中出場が多くなっている。持ち味は打撃。今季は52打席で打率.302をマーク。爆発力は十分に兼ね備えている。

オリックス 原拓也(32歳・10年目、‘06年ドラフト4位)

(通算)673試合 打率.223 6本塁打 76打点

内野はどこでも守れるユーテリティプレーヤー。課題は打撃だが、4月は6打数5安打、月間打率.833の成績を残してみせた。以降は低迷しているが、ハマればすごい。バファローズのカンフル剤となれるか。

広島 安部友裕(27歳・9年目、‘07年高校生ドラフト1位)

(通算)216試合 打率.245 5本塁打 30打点

毎年ファームでは好成績を残すものの、ポジションが被る同世代の菊池や田中の壁をなかなか超えられなかったが、今年は三塁手のルナが一時故障離脱した穴を埋める活躍。打率が3割を上回った時期もあった。現在はルナ復帰で、再び厳しい競争を勝ち抜かなければならなくなったが、やれることは証明した。ドラフト1位入団はダテじゃない。

巨人 中井大介(9年目・27歳、‘07年高校生ドラフト3位)

(通算)154試合 打率.258 5本塁打 30打点

‘13年に48試合に出場して4本塁打を放ったが、以降は1軍での本塁打はない。持ち味の打撃に加えて内外野を守れる自在性は武器になる。ライバルの多いジャイアンツにあって、期待され続ける右のスラッガー候補。今年こそ。

中日 野本圭(31歳・8年目、‘08年ドラフト1位)

(通算)407試合 打率.229 9本塁打 81打点

‘10年には118試合に出場も近年は出場機会が減少気味。それでも貴重な左の代打など、バッティングは買われている。外野に加え一塁も守れるが、DH制のないセ・リーグではひと振り稼業で「神様」を目指したいところ。

横浜DeNA 松本啓二郎(30歳・8年目、‘08年ドラフト1位)

(通算)286試合 打率.236 7本塁打 45打点

早大時代には好打者でならしたが、プロではその力を発揮できていない。昨季は51試合に出場して打率.274を残すも、今季は1軍8試合にとどまっている。年齢も30代に突入し、背番号も入団時の6から、昨年61へと変わった。城所同様に強い危機感の中でプレーをしているはず。巻き返せるか。

阪神 鶴直人(29歳・11年目、‘05年高校生ドラフト1位)

(通算)117試合 9勝8敗 防御率3.80

近大付高時代に最速151キロをマーク。大阪桐蔭高の辻内崇伸(元ジャイアンツ)、平田良介(ドラゴンズ)、履正社高の岡田貴弘(T―岡田=バファローズ)らと共に「浪速の四天王」と呼ばれて鳴り物入りで入団も結果を出せていない。しかし、潜在能力は確かだ。まだ29歳。下を向くトシではない。

ヤクルト 飯原誉士(33歳・11年目、‘05年ドラフト5位)

(通算)850試合 打率.260 49本塁打 245打点

‘10年には135試合出場で年間15ホーマーを放った実力者。今季も29試合で3本塁打している。10年前にはハワイ・ウインターリーグでMVPに輝いた。かつてイチローや小久保裕紀もハワイでその実績を積み、スターへの階段を上った。確かな素質がまだ眠っている。低迷するスワローズの起爆剤に。

今季残り半分、意外な新スターは誰だ!?

6月24日からセ・パそれぞれのリーグ戦が再開される。今季のペナントレースは残り半分。意外なスターが、また誕生するか注目してプロ野球を楽しむのもおもしろい。

※通算成績は1軍。2016年6月23日まで

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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