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ホークス五十嵐亮太は日本記録更新中。でも「こだわりはない。手を挙げるかも」

田尻耕太郎スポーツライター
13日、契約更改後に会見を行った五十嵐投手

新しい自分に挑戦し続ける

五十嵐亮太は常に挑戦し続ける男だ。

「もちろん失敗しないに越したことはありません。だけど、ある程度のリスクがあったとしても、リターンできるチャンスがあるのならトライすべきだと、僕は思っています。失敗したとしても、次に取り返せばいいんです」

以前にインタビューを行った時に話していた言葉だ。彼の生き様が込められている。

誰もが認める十分な実績は積み重ねてきた。

37歳はホークスでは最年長だ。誰もが認めるベテランだ。

それでも、自らの意思で、このオフはメキシコへ武者修行に出かけた。

そんな男だ。

メキシコでの先発で得たもの

メキシコでは「イレギュラーなこと」(五十嵐)で、まさかの先発だった。

ただ、それもプラスだったと振り返った。

「メキシコに行ったのは、シーズン終盤につかみかけていたことを実戦で試すため。そして新球種のスプリットの習得のため。実戦で身につけたかった。先発は結果的によかった。中継ぎだと1イニングしか投げられない。そうなると投球フォームや変化球などを試すのは難しくなる。長いイニングを投げたことで、たとえば初回ダメでも次の回に修正する機会があったし、良ければ次の回にさらに良くなるための工夫もできた」

来季はプロ20年目のシーズンだ。長らく“勝利の方程式”として稼働してきた右腕は「7回や8回のマウンドをしっかり抑えるのが僕の中での役割だと考えています」と当然のように話した。

新しい自分を見つけることの価値

しかし、一方で「長い回を投げられる可能性も自分の中で見つけられた。監督、コーチにそれもアピールしたいし、もし怪我人などで先発陣がいなくなって1日だけ誰かを探すとなれば、僕が真っ先に手を挙げようかなと思っています(笑)」と話した。

来季、仮に先発をするようなことがあれば、日本の1軍公式戦では初めてのことになる。

いや、それどころか、五十嵐はデビュー以来連続救援登板708試合という日本記録を更新している真っ最中なのだ。

だからこそ、五十嵐の言葉に少し驚いた。果たして、こだわりないのか。

「価値観の問題だと思うんです。その記録よりも新しいステージに立って、新しい自分を見つけるという価値の方が僕の中では高いんです。どんどん新しい自分に挑戦したい」

そして、笑いながら言葉を継いだ。

「それにデビュー連続中継ぎの記録といっても、引退してしまったら誰も覚えていないですよ。王さんやイチローさんのような記録とは違いますから」

また、この日はホークスと来季の契約を締結。12月18日には渡米して、年を跨いで自主トレを行う予定だ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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