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3年前は建設作業員→今春WBCに! ソフトバンク助っ投がのぼった夢の階段

田尻耕太郎スポーツライター
ソフトバンク・スアレス(昨年4月撮影)

高校卒業後すぐは草野球でプレー

究極の成り上がりといっていい。

ソフトバンク助っ投のロベルト・スアレスが9日、3月開幕のWBCベネズエラ代表に選出されたことを受けて、報道陣へ意気込みを語った。

「今は興奮しているし、光栄に思っています。自分のできることをやってチームに貢献したい」

今季が来日2年目。昨シーズンは58試合に登板して26ホールドをマークし、セットアッパーとしての地位を確立したが、ソフトバンクにとっては、正直、思わぬ掘り出し物だった。

異色の経歴の持ち主である。母国で高校卒業後は草野球でプレーするのみ。3年前までは建設作業現場で働くなどして生計を立てていたという。

‘15年にメキシカンリーグで初めてプロ野球選手としてプレーし、43試合登板で5勝0敗、防御率1.71と好結果を残したことで注目が集まった。ただ、経験が浅いために荒削りなところも目立ったため、ソフトバンクはあくまで将来性を買って獲得したのだった。

昨年10月に161キロをマーク

入団時は背番号90が話題となった。南海、ダイエー時代も通じてこの背番号をつけた選手はスアレスが初めて。ホークスの90番といえば、有名人気漫画「あぶさん」の主人公である景浦安武の背番号だったが、連載が‘14年2月に終了していたことを受けて、作者の水島新司氏からの了解もあり、実現した。

「メキシコ時代に99マイル(約159キロ)を出したけど、日本の方が当然練習量は多い。160キロは一つの目標。このまま練習を積んでいけば、160キロは出せると思っている」

入団直後に語っていたが、昨年秋の日本ハムと争ったクライマックスシリーズ・ファイナル第3戦で161キロの快速球を記録している。

超スター軍団の仲間入り「光栄」

今回、WBC出場のベネズエラ代表入りを受けて「メキシコ、日本で成長することができた。自分の周りの環境もどんどん良くなっているし、その中でピッチング自体も進化できている。嬉しく思います」と改めて感慨に浸った。

WBCベネズエラ代表は優勝候補一角にも挙げられる。投手ではメジャー通算154勝の愛称「キング」ことフェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)、野手では昨季まで3年連続ア・リーグ最多安打に盗塁王過去2回のホセ・アルトゥーベ(アストロズ)や通算2519安打と446本塁打を誇るミゲル・カブレラ(タイガース)ら、現役バリバリの超一流メジャーリーガーが名を連ねる。

「メジャーのスターと一緒にプレーできるのは光栄。‘09年の第2回大会で3位になったのはよく覚えているし、前回大会の頃もまだ母国で働きながら草野球していた頃なのでテレビで応援していました」

最高峰の舞台に立つことでどんな刺激を受けて、またソフトバンクに帰ってくるのかが楽しみだ。そしてこの怪腕に、きっと世界中が驚くはずだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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