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ガンバ大阪が6連勝。DF丹羽大輝が守備のリーダーに名乗り!

高村美砂フリーランス・スポーツライター

ガンバ大阪がJ2リーグで6連勝を飾り、首位を走っている。中でも特筆すべきは、ここ3試合での完封勝利にも表れている『守備』力の安定。特にこの6月は、日本代表MF遠藤保仁、DF今野泰幸という2枚看板を1年でもっとも長い期間、欠いての戦いを強いられることもあり、長谷川健太監督も『正念場』と定めていたが、その彼らを欠く中での3戦連続完封はチームとしても意味深いことだと言える。

その守備の中心選手として存在感を示しているのがDF丹羽大輝だ。特に、代表不在で迎えた6月最初の試合、17節の栃木戦は、様々な意味でのプレッシャーがのしかかる中、終始、チームを鼓舞。そのパフォーマンスをして長谷川監督を「大輝が本当によくやってくれた。1ヶ月前、久しぶりの先発出場となった鳥取戦をドローに終わり彼自身も悔しい思いをしていた中で、以降、いろんな葛藤を抱えながら戦ってきたはずですが、今日は結果はもちろん、素晴らしいプレーでチームを支えてくれた」と言わしめた。

それを受け、DF丹羽が試合終了直後に強調したのは、自身のパフォーマンスについてではなく、試合に出場できない選手への想い。彼自身、6年ぶりに期限付き移籍からG大阪復帰を果たした中で、どちらかと言えばサブに甘んじることが多かったからだろう。事実、今季も開幕から3試合はDF加地亮のケガによる離脱によって、本職のセンターバックではなく右サイドバックとして出場したものの、そのDF加地が戦列復帰を果たせば再びサブに。また今季初めてセンターバックでの出場となった11節の鳥取戦も、先制される苦しい展開の中、なんとかドローには持ち込んだものの、今季のワーストゲームとも言うべき内容、結果に。以降は彼自身も再びベンチを温める日々が続いていた。

そんな状況でも常に彼は前を向いてきた。「使う、使わないは監督の判断。自分はこのガンバのために、自分の精一杯でやれることをやるだけ」と復帰直後にも話していた通りに、決して心を折ることはなく、自身のサッカーを追究し続け、その中では全体練習が終わった後、試合に出られない選手たちとともに一緒に居残り練習をする姿も。そこで一緒にボールを蹴った選手が様々な葛藤を抱えながらも、逃げずに自分のサッカーを追究する姿を目の当たりにしてきたからだろう。自分が出場チャンスを得た時には「悔しい思いをしながらも戦っている仲間のためにも」という思いが強かったと言う。栃木戦後のコメントがその心情を如実に表している。

「今日は自分の活躍は二の次、三の次で良かった。とにかくチームが勝つために仕事をすることと、僕を含めてここまで試合に出ていないメンバーのためにも結果を残したかった。というのも、僕を含めて試合に出られないメンバーも日々、気持ちを切らさずにやってきたし、毎日のように居残り練習で自分たちを磨くことを続けてきましたから。ノリさん(實好礼忠)やコイさん(小井戸正亮)らコーチ陣もそんな僕らに付き合ってくれて、常にいい準備ができるようにサポートしてくれてきた。その日々の努力は、試合に出ていないからといって否定されるものでは決してないですから。むしろ、そういう彼らの思いがチームの底上げにも繋がっていく。だからこそ、その控えのメンバーの中からチャンスをもらった僕は、絶対に結果を残さなければいけないと思っていました。それによって、試合に出ていない選手が『よし、自分も頑張ろう!』と刺激にしてくれたら嬉しいな、と。だからこそ、今日は一緒に居残りで練習してきた仲間たちの分も背負って…って僕が勝手に背負っただけなんですけど(笑)…絶対に結果を残してやるという気持ちが強かったので、勝利を掴めたことは素直に嬉しかった。そうやってお互いの存在を刺激としながら、選手層が膨らんでいけば、ひいてはガンバのチーム力を高め、昇格にも繋がっていくはずですしね。今後もそういう気持ちを忘れずに戦い続けたいと思います。」

その思いは今も彼の胸にある。もちろん、連勝中とはいえ、6月の3試合が全て納得のいくパーフェクトなゲームだったとは言い切れないし、現に彼も課題も口にしている。

「守備の選手にとってゼロで抑えたという結果は理想だけど、僕たちが目指すところはもっと上にある。だからこそ、まだまだ内容は詰めていかなければいけないと思っている。中でも攻守の切り替えのところはもっと速くできるはずだし、それによって高い位置でボールを奪えたらよりG大阪らしい攻撃ができるはず。完封は嬉しいけれど、G大阪のスタイルはあくまで、守備ではなく攻撃にありますからね。その攻撃でガンバらしさを発揮するためにも、もっと攻守に厳しさを求めてやっていかなければいけないと思う。」

だが、そうした課題はありながらも、代表選手が不在の中、DF丹羽以外にも、例えばMF内田達也、MF岡崎建哉といった若い選手が少しずつ安定したパフォーマンスを示せるようになっていることは、丹羽自身にも、チームにとっても、喜ばしいこと。また、その事実は彼が言う『ガンバのチーム力を高めること』にも確実に繋がっていると言えるだろう。と同時に、そうした戦力の充実を図りながらシーズンを通して結果を積み上げていくことができればーー。

G大阪が今季の“最低目標”に掲げる『J1昇格』も確実に近づいていける。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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