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<ガンバ大阪> 逆襲の2016年にーー。DF岩下敬輔の『想い』。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

今年の元日の天皇杯。決勝の浦和レッズ戦を征して壇上にあがる仲間の姿をみながら、岩下敬輔の胸の内は、喜びと悔しさと、自分自身の不甲斐なさが渦巻いていたという。それは東京から大阪に戻る道中も同じで、次々に届く知人や友人からのLINEや電話での『お祝いの言葉』にいろんな考えが頭をよぎったそうだ。

「次から次へと入ってくるLINEや電話に、ガンバ大阪というチームはもちろん、僕自身をこれだけの人が気遣ってくれている、応援してくれていると再認識できたことは、嬉しさの一方で自分への新たな刺激になりました。それを2016年の元日に感じ取れたことは、今季、プロとして12年目のシーズンを迎えるにあたって、大きな力になった」

昨年の終盤戦。チームがJリーグや天皇杯で優勝争いを続けていた最中、岩下の姿はピッチから消えていた。シーズンを通して慢性的な痛みに苦しんできた右膝の状態が芳しくなく、そのリハビリに専念することを決断したからだ。言うまでもなく、選手にとって戦列を離れるという決断は決して簡単ではない。だが一方で痛みをこらえ、時に、痛み止めの注射を打ちながらピッチに立ち続けることでチームに迷惑をかけることもある。それを重々承知しているからこそ、自ら、見切りをつけた。

「正直、痛みを抱えながらやってきて、納得のいくパフォーマンスを出せた試合がどれだけあったかと言えば、少なかったですからね。1年を通してみても、決して納得のいく1年ではなかった。もちろん、チームは優勝争いに絡んでいる訳だから、そこに自分が加わっていけない悔しさはありましたよ。ピッチに立てばやれる自信もありましたしね。でも、それを証明できるだけの足の状態かと問われれば、そうではないというのも正直なところで…。だから、チャンピオンシップを前に、右膝のクリーニング手術に踏み切った。このまま“だましだまし”やっていても、また同じ状態に陥りかねないとも感じただけに、それならきっちり治そうと。チームは大事な試合を控えているし、変に気遣われても申し訳ないから仲間には殆ど伝えずに、でしたけど、その時の自分に出来ることと言えば、足をいい状態に戻すことくらいでしたからね。その上で、来季、本当の意味でチームの力になれる自分になろうと思っていました」

それもあって、岩下の2016シーズンは、リハビリからのスタートになった。今シーズンに懸ける『想い』が強いからこそ、現在行われている沖縄キャンプにもスタートから合流できないジレンマは正直、抱えているが、それも手術に踏み切った時点で覚悟していたこと。また「きっちり治す」という自分との約束を果たすためにも、今は別メニューでコツコツと膝やコンディションの回復に努めるだけだという思いも強い。

「昨年初めてAFCチャンピオンズリーグの戦いも経験して、チーム、個人として、この大会を戦えたことによるたくさんの財産を得ることができたし、それは『自信』として備わった。そういう力が、チームとして最後の最後で天皇杯優勝という結果にも結びついたんだと思いますしね。そうした財産を今季、明確に『結果』に繋げていくためにも、まずは僕自身、身体を万全の状態にもっていくこと。それがあって初めて、チームの力になれるとも思いますから。今季、新たな選手も加わって、復帰したからすぐにポジションがもらえるとは思っていないけど、出遅れた分をいかに取り戻していくか。そのためにピッチで何を示せるかは全て、自分次第。それを証明する2016年シーズンにしたいと思っています」

足の状態を見ながらになるため、現時点で明確な復帰のメドはたっていないが、本人いわく「僕自身の気持ちとしては、開幕に間に合わせたいと思っている」とのこと。だからこそ、今はとにかくコツコツと、リハビリに向き合い続けるのみ。自身にとって、『逆襲』の2016シーズンにするために。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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