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大阪、カジノ候補地は「夢洲(ゆめしま)」

木曽崇国際カジノ研究所・所長

大阪の統合型リゾート導入構想に関連して、ロイター通信が以下のように報じています。

カジノ候補地は「夢洲」に絞り込む意向、巨額投資に期待=松井・大阪府知事

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0N404H20140414

大阪府の松井一郎知事は14日、ロイターとのインタビューで、カジノを設置した統合型リゾート(IR)の候補地として、大阪の湾岸部にある人工島「夢洲(ゆめしま)」に絞り込む考えを示した。22日に予定する大阪府・大阪市による「IR立地準備会議」で表明する方針。 関西へのIR誘致をめぐっては、同じく湾岸部にある人工島「舞洲(まいしま)」や、大阪駅北側の「うめきた」の一部などが候補地に挙げられていた。 […]

幾つか候補地の挙がっていた大阪府の統合型リゾート導入候補地ですが、最終的に大阪湾内の埋立地の最西端となる「夢洲」で調整が行なわれる模様です。ひとまず「オメデトウ御座います」…と、申し上げたいところですが、実は本件に関しては以前より個人的に気になっていることがあるんですよね。

我が国のカジノ合法化が現実のものとなりそうな気配を察知して、全国では本格的に統合型リゾートの導入の検討を始める自治体が増えています。一方、その検討にあたって多くの自治体において共通に見られる「悩みごと」が用地選定の問題です。

例えば、千葉県ではコンベンション都市、幕張を抱える千葉市と成田周辺自治体などが統合型リゾートの誘致を争っています。北海道でも釧路市、小樽市、苫小牧市およびその周辺自治体などが、同様に誘致を争っていますし、沖縄なんてあの小さな島内のアチコチに統合型リゾート構想が存在する状況。都道府県としては、これら統合型リゾートの誘致を切望するエリアの中から、どのようなプロセスを経た上で候補地として絞り込んでゆくかが、それこそ彼等が現実に直面する最も切実な課題であります。

当然ですが、その選定にあたっては何らかの評価基準を定め、公正かつ透明性のある手法でそれを絞り込んでゆくプロセスが求められるワケで、逆にここが何か良く判らない基準をもってブラックボックスの中で決定されてゆくのであれば、後に地域に遺恨を残すことになります。一方で、上記ロイターが報じた大阪府の候補地選定に関しては、私としてはイマイチ釈然としない思いを抱えながらずっと見守っているところがあるのですよ。

これまで大阪府の統合型リゾート導入は、大阪府と大阪市の政策協議の場である「大阪府市IR立地準備会議」と呼ばれる会合において論議および検討が行なわれてきました。統合型リゾートの導入は2013年参議院議員選挙における日本維新の会の選挙公約にも含まれる政策であり、大阪府、大阪市とそれぞれの首長が維新の会で占めている両自治体が、共に政策連携をしながら導入政策を前に進めるということに関してはそれほど違和感はありません。しかし、実は大阪府の中には大阪市以外にも関西国際空港を抱える泉佐野市がすでに統合型リゾートの導入に関して明確に手を挙げている状況であり、こちらと関係性をどのように整理&総括するつもりなのか、私としてはその点に大きな疑問が残るのです。

大阪にもカジノ構想 橋下氏が提唱 泉佐野市も意欲

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/131121/waf13112123310028-n1.htm

先の繰り返しになりますが、国内の統合型リゾートを検討している多くの自治体は、域内に存在する複数の候補地を巡って公正かつ透明性のあるプロセスでそれらを如何に「絞り込むか」という事に苦心をしている状況です。一方で大阪の実態は、最初から大阪府と大阪市が「仲良しグループ」を形成しながら論議を行なっている状況で、同じ府内で手を挙げている泉佐野市の動きは蚊帳の外。そりゃ、候補地として選ばれることとなりそうな大阪市としてはライバルが居なければ居ないで嬉しいのでしょうが、一方で府内全域を統括する大阪府の立場として、それが正しい政治決定プロセスを経た決断となるかと問われれば、疑問符を付けざるを得ない状況です。

昨年行なわれたグローバルMICE都市の指定、今年行なわれた国家戦略特区の指定など、実は安倍政権に入ってから特定地域に政策上の強弱をつけるような区域指定が様々なされています。このような一連の流れの中で「指定を希望する地域の各自治体が、正しく広域連携しているか?」に関しては、かなりの比重をもって評価点が付けられており、グローバルMICE都市選定における千葉市や、国家戦略特区における愛知県の「落選」は、その辺りがネックとなったなどという話も世の中では語られているところ。

統合型リゾートの立地に関しても同様に、限られた数の権益を全国の自治体が争うことになるワケで、例えば最終的な国の公募に際して、大阪府市とは別に泉佐野市が独自に統合型リゾートの候補地として手を挙げた場合、これは明確に「域内の不調和」として見なされることとなります。大阪府と大阪市の間で、何となく既成事実化されながら進められている現在の統合型リゾート立地選定ではありますが、このような大阪の現状はひょっとすると将来的な不安要素につながりはしないか?と、正直、私としてはハラハラしながら見守っているところ。

これは大阪に限った話ではないのですが、いずれの自治体においても複数の候補地が域内に存在する場合には、「正しく」絞り込みが行なわれることが求められ、またそれを正しく実現できた自治体が最終的に高い評価を得るのだと個人的には考えているところです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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