Yahoo!ニュース

推進派でも戸惑うカジノ法案の短期採決

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

おそらく皆様も既にご承知の通りかと思いますが、昨日、昼にIR推進法案(通称:カジノ法案)の衆院委員会採決が行われました。

2日間に亘って行われた法案審議に要した時間は6時間程度。与野党間に殆ど意見の相違がなく採決される法案を除き、一般的な法案採決に要する委員会審議の時間は衆院で30時間前後が目安といわれています。その点から考えると、とても「論議が尽くされた」とは口が裂けても言えない本法案が、このような短期採決に至ったことには、正直、推進派の私の立場としても戸惑いを隠せません。

一方、本日の委員会審議の内容ですが、十分とは言えない審議時間ではあったものの、般若心経の読経などぶっ飛んだ答弁が続出した第一回目の審議(参照)と比べると、賛成派も反対派もエース級の人材を質疑者に据え、かなり「濃い」内容であったと思います。

特に、クライマックスとなったのが緒方林太郎議員(民進)による反対質疑。緒方議員による「現在のIR推進法案が刑法賭博罪の違法性を阻却(無効化)する為の要件をシッカリと満たしていない」という法の不備を的確に突いた質疑に、各答弁者はシドロモドロとなっておりました。実は、この点は私自身はずっとIR推進法の不備として議員連盟に対しては進言してきた内容。その辺りの詳細に関してはこちら辺りをご覧ください。

カジノ合法化の論点:我が国で「民間賭博」が生まれるか?

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9404210.html

さて、今後の展開ですが、現在行われている新聞各社の報道によれば衆院本会議においては公明党も党議拘束を外し、自由投票で本法案の採決に臨むとのこと。これは、1998年に成立した「totoくじ法」の採決時にも採られた対応でありますが、これで自民党にとっては本会議に向けた最大の障壁がなくなりました。すなわち本法案は凡そ衆院での可決が確実と考えて良いと思います。

となると、次なる与野党バトルは参院の委員会審議となるワケですが、そこには今回の衆院委員会採決以上の問題があります。

今回、衆院の委員会審議は自民党所属の秋元委員長の強権発動によって、これほどまでの短期裁決が可能となったものです。一方、現在の参院内閣委の難波委員長は民進党所属議員であり、かねてから我が国のカジノ合法化に対しては反対姿勢をとってきた議員です。すなわち彼が委員長席に座っている限りは、今回、衆院で行ったような短期採決は望めないワケで、自民党としては委員長解任動議までを視野に入れた審議戦略を練らなければなりません。

当然ながら野党側はそれに激しく抵抗してゆく事になるわけで、いよいよ12月14日の国会終幕に向けて本カジノ法案を巡って大紛糾が発生すること請け合い。引き続き、国会での動向に注視が必要なものと思われます。以上簡単ではありますが、昨日の衆院内閣委員会におけるカジノ法案採決にあたっての総括でした。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事