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第11エンド「カーリング日本選手権5日目、北海道2、長野2、プレーオフ進出決定。総括と展望」

竹田聡一郎スポーツライター
左から敦賀浩司、澤向裕希、齊藤太賀、羽石僚祐、柴谷優策のやんちゃ軍団アイスマン。

「第34回 全農日本カーリング選手権大会」も総当たりの一次リーグ、タイブレークを終えた。

男子の最終順位は以下。

1位/7勝1敗/4REAL(札幌)

2位/7勝1敗/SC軽井沢クラブ

※直接対決の結果が反映され4REALが上位に。

3位/4勝4敗/チーム荻原

※LSDの結果による。

4位/4勝4敗/アイスマン(北見)

※プレーオフ勝利

5位/4勝4敗/札幌学院大学

※プレーオフ敗退

6位/3勝5敗/青森CA、岡山CA

8位/3勝5敗/I.C.E.(チーム東京)、東京

男子の4REALが最終戦も勝利し通算7勝とし、SC軽井沢と同じ勝ち数ながら大会規定により直接対決の結果が反映され、2年ぶりの1位通過。スキップの阿部晋也は「(チーム結成以来)やってきたことが正しかったと思えた」と手応えを感じながらも「たった1試合(SC軽井沢に)勝っただけ」とプレーオフに向けて勝って兜の緒を、と言わんばかりに悲願の初優勝に照準を合わせる。

リーグ序盤でチーム荻原に不覚をとるなど、必ずしも順風満帆な5日間ではなかった。特にデリバリーで大きなミスも出た3日目にはナイトプラクティスのストーンチェックの予定を変更し、チーム全員で阿部のデリバリーとリリースをチェックする、いわば“特投げ”でブレを修正した。予選リーグ終了後にはチーム青森のコーチ時代に経験した五輪について問われたが「昔すぎてあんまり記憶にない。楽しみつつ真剣にプレーしてそれが五輪につながれば」とマイペースながら高みを目指す。

3位には昨年4位ながら、同準優勝のI.C.E.、3位の4REALら格上を次々と破り、4勝4敗と3チーム並ぶもDSCが全9チーム中1位という記録で、チーム荻原がプレーオフ進出を勝ち取った。

午後からは4位でのプレーオフ進出をかけて、同じく4勝4敗同士のアイスマン(北見)と札幌学院大学がタイブレークを行い、アイスマン(北見)がエキストラエンドのスティールで辛くも勝ち残る。

両チームともアイスリーディングに苦しんだゲームで、特にスキップの澤向裕希は午前中のチーム荻原戦に続いてフィニッシュの精度を欠いた。いつもは淡々と投げては決めるタイプで、会見でのメディアの受け答えも「僕も同じです」など飄々と流す“氷上の高田純次”と呼びたいくらいの適当キャラなのだが、さすがにこの日はこたえたようで、開口一番「すいませんでした」と謝ったのち「フロントはしっかりセットアップしてくれたので、焼き肉オゴります」と苦笑いを浮かべた。

それでも明日以降のプレーオフについては「正直、SC(軽井沢)と札幌(4REAL)はレベルが違うけど、それでも食らいついていれば必ずチャンスは来る」とポジティブだ。ただ、「じゃあ、あとはスキップが決めるだけですね」と水を向けると「……はい」と胸に手を当てて答えてくれた。

その「……」が少し不安だが、メンバー2人はタマネギ農家、3人はホタテ養殖漁師という「That's 常呂」というチームだけに、なんとか上位を脅かしたい。まずは明日、3位のチーム荻原に挑む。

プレーオフはまず、予選1位と2位(A)、3位と4位(B)が戦う。Aの勝者は決勝へ、敗者は準決勝へ。Bの勝者は準決勝へ、敗者は3位決定戦へと回るプレーオフシステムだ。分かりやすい表はJCA(日本カーリング協会)のHPを。

そして本日の「勝手にホットハンド」だが、勝手史上、もっとも悩んだ。タイブレークを制したチームから選出したかったのだが、「フィニッシャーがちょっとアレですもんね」とアイスマンのスーパーサブ・敦賀浩司に相談してみた。リードの羽石僚祐とセカンドの齊藤太賀はきっちりとセットアップを果たしたし、サードの柴谷優策は本調子でないスキップにシンプルなショットを残すよう腐心した。そんな風に促しても、敦賀コーチは、「いや!」と力強く否定。

「いろいろあったけれど、やっぱりスキップでしょう。エキストラの2投目はしっかり置きたいところに置いてくれた。チームで運んだ一投ですが、やっぱりキーマンは澤向です。明日はやってくれるでしょう」

午前中の試合で決めきれず、「カーリング、やだな」と32歳にしてやさぐれかけたスキップに全幅の信頼を寄せた。焼き肉を食ってチャージした明日以降、リベンジなるか注目だ。

明日はまず、朝9:30からプレーオフ第一試合が行われる。勝者は一気に決勝に進む「4REAL×SC軽井沢」だが、先攻でファーストストーンを投げるSC軽井沢のリード両角公佑は「このレベルになると石1個ズレると作戦も変わってしまう。しっかり投げて日本一のリードになりたい」と繊細なショットを宣言すれば、対する4REALのリード谷田康真も「リードがちゃんとセットアップできれば得点のチャンスが生まれる。コースケ君のことはリスペクトしていますが、明日はお互いにいいところに投げていいゲームにしたうえで、僕のほうがさらにちょっとだけいい場所に投げたい」と応じた。まずはリードの投じる石の精度が問われる。

他にも4REALのスキップ阿部は「リードも含め、ポジションバイポジションで相手をしっかり上回らないと勝てない相手」と警戒するが、注目は開幕以来、絶好調の両サード、松村雄太と清水徹郎だ。予選リーグでの対戦時にお互いのコーチがつけたショット率によると、4REALの佐藤浩コーチの手元では清水が上回る数字で、逆にSC軽井沢の長岡はと美コーチの採点では松村が上回っていたという。ふたりとも「調子はいいです」と公言し続けているだけに、サード対決はまったくの互角と言っていい。このふたりが予選同様のパフォーマンスを見せ、大胆かつ繊細なスキップ勝負につなぐことができれば、予選以上のハイレベルな試合が拝めるだろう。五輪候補まで、あとふたつだ。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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