赤ちゃんの30人に1人、外国人の親を持つ日本社会―進む多様化と今なお続く、いじめと差別

2015年に生まれた33,000人以上の赤ちゃんが、外国人の親を持っている(写真:アフロ)

30人に1人が外国人の親を持っている

2016年9月8日、厚生労働省の最新の人口動態統計が発表されました。それによると、2015年の一年間に日本国内で生まれた赤ちゃんは約102万人。そのうちの3.27%にあたる33,393人―30人に1人の赤ちゃんは両親またはどちらかの親が外国人でした(筆者調べ)。前年度と比べるとやや減少はしているものの、10年前の1995年にはその割合が2.6%であり、増加の傾向は続いています。

国内で毎年生まれる外国にルーツを持つ赤ちゃんたち。そして、2010年の時点で183万人(*1)以上いるとみられる外国にルーツを持つ子どもと若者たちの存在は、日本社会が「単一的」「画一的」とされた時代から、新たな一歩を踏み出していることの証左と言えるのではないでしょうか。

「ハーフタレント」ら外国にルーツを持つ著名人が次々とカミングアウト

最近よくメディアでは「ハーフタレント」や「外国人タレント」、「ハーフアスリート」の方々の活躍を目にするようになりました。彼らの中にも、日本で生まれ育ったりごく幼いころに来日して日本国内で育ってきた方々は少なくありません。

その活躍に比例するように、過去のいじめや差別を受けた体験のカミングアウトも注目を集めるようになりました。最近では、ミス・ユニバース日本代表の宮本エリアナさんを皮切りに、ざわちんさん、ミス・ワールドに日本代表として選ばれた吉川プリアンカさん、モデルのラブリさんなど、さまざまな方が過去に経験してきた「いじめ」について言及されていて、初めて「ハーフ」や外国にルーツを持つ子どもたちの苦しみを知った、と言う方もおられるのではないでしょうか。

中には過去のつらかった体験を「笑い」として語っている芸人さんやタレントさんも。こうした「外国にルーツを持つ”元子ども”」である方々の告白やアクションにより、現在進行形で道が切り拓かれていっており、少しずつ変化の兆しを感じます。

子どもたちに対する差別といじめは今なお続く

一方で、現場で出会う子どもたちは、学校をはじめとする日本社会でいじめや差別を経験していることが少なくありません。

外国出身者の父と母の間に、日本で生まれたAさん。外国籍ではありますが、日本で育ち、自らのルーツのある国には一度も行ったことがありません。最も自由に話したり読み書きができる言葉は母語ではなく、日本語です。日本の保育園、公立小学校、公立中学校と進み、スポーツが好きで、休日も部活に励むどこにでもいる中学生です。

中学に入学した後、先輩から「ガイジン」であることを理由にいじめを受けました。「自分の国帰れ」、「税金勝手につかってんじゃねーよ」と言われ、自らのアイデンティティについて深く悩むようになったと言います。

彼のように「自分の国に帰れ」と言われるのはよくあることで、このほかにも肌の色を「汚い」と言われたり、外国出身の自分の親のことを馬鹿にされたり、と、「ハーフタレント」や「外国人タレント」のみなさんが告白した彼らの経験とまったく同じようなことが今なお繰り返されています。そしてそれは、子どもたちに限らず、主にインターネット上で日本社会の大人の間にすら見られることには、強い憤りを感じざるを得ません。

「いじめが怖くて学校に行かせられない」

外国にルーツを持つ子どもたちの保護者は、我が子が日本の学校で差別を受けたり、いじめられることについて外国にルーツを持たない子どもたちの保護者よりも強い不安や恐怖を感じていることも少なくありません。私たちが過去に支援した外国にルーツを持つ生徒の保護者は、「日本の学校に行くと、外国人の子どもはいじめられると友人から聞き怖かった」と、子どもが来日後、約1年間の間学校に行かせることができませんでした。

このような極端なケースばかりではありませんが、ほとんどの外国にルーツを持つ子どもたちの保護者が学校でのいじめや差別を心配し、不安を抱えています。そして実際に差別やいじめを受けた子どもたちは、日本社会に「居場所」が見つけられずに苦悩し、心身ともに傷ついています。こうした経験が積み重なった結果、自ら命を絶ってしまったり、他者を傷つけてしまったりといった悲しい出来事につながることも皆無ではありません。

国際化の現実、まず受け止めて

今、国は労働力不足を背景に海外からの人材を確保しようと、表に裏にその門戸を開き始めています。しかし、日本で安心して働き、生活することができなければ、外国から日本でがんばろうとする人々にその力を十分に発揮していただく事はできません。今、日本社会に暮らす外国人の5割以上が日本国内に定住・永住可能な資格を有しています。彼らは「稼ぐだけ稼いで帰ってくれる」都合のよい存在ではなく、私たちと同じ、日本社会の生活者にほかなりません。

まず私たちがすべきことは、毎年生まれる子どもたちのうち、30人に1人は外国にルーツを持つ”くらい”に日本社会を構成する人々は「多様化している」という現実を受け止めることではないでしょうか。

そして、日本社会に暮らすすべての人々が、そのルーツや国籍、障害の有無など多様なバックグラウンドにかかわらず教育、医療、福祉など、生活におけるあらゆる資源を安心して活用することができること。

そうした環境の実現を、すでに日本社会に根付いている外国にルーツを持つ方々と一緒になって、地域から国家まであらゆるレベルで目指していくことが、新しい時代を目前とした今、求められているのではないでしょうか。

(*1)『2010年国勢調査にみる外国人の教育 ――外国人青少年の家庭背景・進学・結婚――』(高谷幸ら)岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要 39巻(2015.3.26) p.41参照

*個別事例には必要な範囲で脚色を加えています。