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アメリカのグローバリズムに立ちふさがるトランプとドゥテルテ

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(247)

長月某日

アメリカのCNNと世論調査機関ORCが全米規模で実施した最新の調査によると、共和党大統領候補ドナルド・トランプの支持率が民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンの支持率を2ポイント上回った。

民主党全国大会直後の8月上旬には8ポイントの差をつけてリードしていたヒラリーがここにきて逆転を許したのである。しかも調査対象が11月の本選挙で投票する意思のある者に絞られていることからヒラリー陣営にとっては深刻である。

数々の暴言を吐き続け、メディからも共和党主流派からも嫌われてきたトランプが、なぜアメリカ国民の心をつかむのか。逆に優秀な頭脳とキャリアウーマンとして華麗な経歴を持つヒラリーがなぜこれほど苦戦するのか。トランプが最終的に大統領になれるかどうかは別にして、この問題は真剣に考える必要がある。

フーテンはその原因を冷戦後にアメリカが目指したグローバリズムにあると考える。そしてトランプ現象はその破たんが明らかになってきたことを示すものである。グローバリズムを最も強く推進したのは民主党のクリントン大統領だから、ヒラリーが苦戦するのはグローバリズムに対する米国民の不満の強さを物語る。

冷戦後のアメリカをスタートさせたクリントン大統領とゴア副大統領は、21世紀を「グローバリズムと情報の世紀」と呼び、インターネットの普及とデジタル技術を駆使して世界にアメリカの価値観を広めようとした。

それはアメリカ経済を追い越そうとしていた日本経済に痛烈な打撃を与え、日本の家電産業はあっという間に韓国や台湾など新興国に追い抜かれ、一方でアメリカは情報の技術革新を金融と軍事の2分野に応用して日本経済を完全にコントロール下に置くことができた。

その頃のアメリカに「ダウンサイジング・オブ・アメリカ」と呼ばれる現象が起きた。湾岸戦争は精密誘導兵器などハイテク兵器の威力を見せつけたが、インターネットを導入した軍事技術革命は、戦場にいる個々の兵士を監視衛星で戦場を見るアメリカ本土の司令部が直接指揮できるようにした。そのためピラミッド型の軍隊組織が必要なくなった。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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