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キッシンジャーが「外交指南」を務めても「アメリカの終焉」は変わらない?

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(279)

睦月某日

トランプ大統領の背後には、ベトナム戦争を終わらせるため中国と秘密外交を行い、米中国交正常化を果たしたキッシンジャー元国務長官がいて、「外交指南」を行っていると言われている。

ロシア政府と太いパイプを持つ石油企業エクソン・モービルの会長兼最高経営責任者レックス・ティラーソン氏を国務長官に推薦して米ロ関係を再構築させようとする一方、自らが訪中して習近平国家主席と会談するのと並行し、トランプ氏に台湾の蔡英文総統に電話させ、米国が「一つの中国政策」を見直す構えを見せたのはキッシンジャーのアドバイスだと言われる。

米国、ロシア、中国という三極のパワー・ゲームはキッシンジャー外交の得意とするところである。かつてキッシンジャーはニクソン政権の大統領補佐官として米国が泥沼に陥ったベトナム戦争から脱するため、米国の敵である旧ソ連と中国の間に楔を打ち込み、米中が手を組むことで旧ソ連を孤立させ、同時に旧ソ連ともデタント(緊張緩和)を行って危機からの転換を図った。

つまり米ソ二大国の対立という「冷戦構造」に中国を引き込み、三極によるパワー・ゲームによって世界を対立から安定の方向に向かわせたのである。そのキッシンジャーが93歳の老体に鞭打ってトランプ大統領の「外交指南役」を引き受けたのは、それだけ今の米国が危機的状況に陥っているということだ。

米国にとっての悪夢はロシアと中国が手を組み、そこに欧州も加わることである。欧州とアジアを合わせたユーラシア大陸は世界最大の大陸だが、ロシア、中国、欧州が一体となれば世界の覇権はユーラシアに握られる可能性が強まる。その悪夢が現実に近づいているとキッシンジャーは見ているのではないか。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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