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「隠蔽」と言われて気色ばみ逆に「隠蔽工作」を感じさせた安倍総理

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(285)

如月某日

24日の衆議院予算委員会で、安倍総理は夫人が名誉会長を務めていた小学校のホームページから夫人の「ごあいさつ」が削除されたことについて、野党議員が「隠蔽」という言葉を使ったことに気色ばみ、声を荒げて謝罪と撤回を求めた。

人間が気色ばむのは痛いところを突かれた時に多い。総理の対応にフーテンは国民の疑惑はますます深まるだろうと思った。痛いところがなければ「ごあいさつ」を削除する必要も、「隠蔽」という言葉に気色ばむ必要もない。

そしてこの日の審議は、先週から今週にかけて「ある種の隠蔽工作」が施されたことを思わせた。先週の委員会で民進党の福島伸享議員が問題にしたのは3点ある。第一が国有地払い下げに関する疑惑。第二が小学校認可に関わる疑惑。第三に安倍総理夫人が名誉会長となり、安倍総理の名前が使われて寄付が募られた疑惑である。

第一の疑惑は不動産鑑定士が9億5千6百万円と鑑定した国有地を学校法人森友学園はごみの処理費用に8億円余かかるとして1億3千4百万円で購入し、財務省はその金額を非公開にしていた。売却に関わったのは近畿財務局と大阪交通局だが、先週の審議で財務省はあいまいな答弁を繰り返すだけだった。

第二の疑惑はその土地に建てられる予定の小学校が大阪府の認可基準を満たしていないにもかかわらず2年前に認可されたという事実である。これに対する文科省の答弁も要領を得ないものだった。

そして第三の疑惑について安倍総理は、昭恵夫人が名誉会長を務めている事実を認め、「妻から森友学園の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と述べ、「払い下げや認可に妻も私も事務所も一切関わっていない。もし関わっているなら総理大臣を辞める」と断言した。本人は「強い否定」を示し問題に終止符を打とうとしたのだと思う。

それまでメディアでこの問題を報道していたのは朝日新聞だけで、他のメディアはさほど注目をしていなかった。金正男暗殺のニュースが大きかったし、国内政治でも南スーダンに派遣された陸上自衛隊の「日報」の「隠蔽問題」に焦点が当てられていた。しかし安倍総理の「総理を辞める」発言がメディアの目を振り向かせる効果を生んだとフーテンは思う。

週明けの20日に森友学園の理事長がTBSラジオに電話出演したことも注目度を上げ、テレビも相次いで理事長の発言を取り上げるようになった。それによって安倍総理と理事長の共通項として右翼組織「日本会議」の存在が浮かび上がり、国有地払い下げや学校の認可だけでなく、憲法改正やヘイトスピーチが絡む問題に拡大し、政府としては「ある種の隠蔽工作」をする必要に迫られた。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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