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Twitterが上場を申請、米国のモバイル化を十分に待った絶好のタイミング

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
TwitterのEditorial Director、Karen Wickre氏

TwitterがIPOを申請しました。Facebook上場に次ぐ、ソーシャルメディア企業の大きな節目となります。

Twitterは2006年に「ミニブログ」サービスとしてスタートしました。現在では「リアルタイム・コミュニケーション・プラットホーム」と標榜しています。2日半ごとに10億ツイートを記録しするアクティブユーザー数は月間2億人、Twitter.comを訪れる人は月間4億人となっています。

既にシリーズHまで8回にわたる投資が入り、総額は11億6000万ドル(約1160億円)。日本のデジタルガレージもシリーズB、シリーズCで投資しており、日本での展開をサポート。日本は米国に次ぐ世界第2のTwitterが活発な国となりました。しかしデジタルガレージ以上に、Twitterが日本に普及した理由が他にあります。

米国のモバイル移行を十分に待ってからIPO

Twitterを訪れてインタビューに応えてくれたKaren Wickre氏は、2002年からの9年間あまりをGoogleでグローバルコミュニケーションチームで過ごし、メディアやソーシャルなどのコミュニケーションを行ってきた人物。Google Official Blogを頂点とするGoogleのブログプラットホームを組織し、企業や製品の広報、技術的情報の提供の仕組みを作り上げてきました。そして2011年10月から、Twitterのエディトリアル・ディレクターに就任しています。

「Twitterはもともとモバイル向けにデザインされており、一貫してモバイル体験を中心にサービスを作ってきた。米国は日本に遅れて、やっとモバイル大国になりつつあり、これからTwitterの重要性がより高まっていく」(Wickre氏)

現在スマートフォンはAppleとGoogleを中心に市場を形成しており、アメリカがモバイルの中心のように見えます。しかし実際に米国で生活している筆者にとって、インターネットのへのアクセスの中心がスマートフォンに大きく移行したのは2012年だったと振り返ることができます。

それを確認するかのようにしてから、タイミングでIPOの申請を行ったTwitter。逆にFacebookはデスクトップを前提としたデザインであり、モバイル化が完全に進行し終わる前のIPOがベストなタイミングだったのでしょう。

モバイル向けにデザインされたTwitterが日本で早く普及した点にも納得がいきます。1999年のiモードからモバイルでインターネットやサービスを使ってきた日本人にとって、Twitterは始めからぴったりなサービスだった、というわけです。

「Twitterはインフラだ」

「Twitterはリアルタイム・インフラだ」。Wickre氏はこのように指摘しています。その一例として「Early Warning」を挙げました。

「例えばサンフランシスコで、けたたましいサイレンが鳴り響いたとき、すぐに何らかの大きな事件や事故が起きた、と気づくことができる。今までは、ローカルニュースのカメラが到着するまでは、どんな状況か知ることはできなかった。しかしTwitter以降、位置情報で調べれば、その場にいた人のツイートや写真によって、テレビよりも早く、リアルタイムに知ることができる」(Wickre氏)

身近な数ブロック先の出来事から、東日本大震災、ニューヨークのハリケーンSandyといった大災害まで、その場で何が起きているのかが瞬時に分かる仕組みになりました。だからこそ、デマを排除したり、情報を整理する手法が必要であり、TwitterにWickre氏がいる理由でもあると言えるでしょう。

またTwitterは、1つのツイートを、140文字以上の意味合いに変化させようともしています。Twitter Cardは、ツイートに添付されたURLや写真などの情報をツイート内に表示する仕組みを提供し、ツイートを情報流通単位として拡張しています。またユーザーのアイディアから生まれたハッシュタグは、特定の事象やテレビ番組などのツイートを束ねる仕組みとして利用されており、最近では「#」に加えて「$」(株価や為替ペアの情報を束ねる)も使われるようになりました。

また日本では「バルス」がインパクトを与えていますが、米国でテレビを見ながらTwitterを楽しむ方法が本格的になったのは、2012年にオバマ大統領が再選された大統領選挙の経験だったと言います。キャンペーンや討論会の中継を、ツイートしながら議論し、これらをメディアも編集しながら採り上げる。こうした手法への経験も蓄積し続けており、Twitterもメディアサイドのツイート活用をサポートしています。

こうしたリアルタイム情報インフラとしての存在は、IPO以降、どのように収益化するかが焦点。現在「Promoted Tweet」として広告を扱っていますが、これらが時間、場所、その人のツイート内容やハッシュタグに高度に反応するようになることが考えられます。

あるいは、「ハッシュタグをホストする」という考え方での広告販売も面白そうです。例えば「#Olympic」というハッシュタグを、グローバルでCoca-Colaがホストし、ハッシュタグのページをCoca-Colaによってカスタマイズさせる、というプランもありでしょう(Facebookも取り組んでいそうですが)。

日本のユーザーとしても、TwitterのIPOの動向について、見守っていきたいと思います。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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