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Verizonも2年縛り撤廃 - 9月9日を前に、米国キャリアもスマホプランの調整が加速

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
米最大手のVerizonで、2年縛りとiPhoneの割引販売に終止符が打たれる(写真:ロイター/アフロ)

iPhoneの発表が9月9日に行われるとの情報が流れ始めました。

なんとなくその辺だろうということは、例年のパターンからも推測できていましたが、T-MobileがiPhone向けのキャンペーンを9月8日に終えるとのアナウンスがあったことから、まあ9月9日以降だろうとは思っておりました。

米国の携帯電話ネットワーク最大手のVerizonも、来る新型iPhoneに先駆けて、プランの変革に取り組み始めています。最大のニュースは、iPhoneの割引販売をやめ、同時に2年縛りも撤廃するというものです。

この流れは、米業界4位のT-Mobileと同じ設計になります。もちろん、毎月利用できるデータ量や、iPhone向けのキャンペーンを活用すると、T-Mobileの方がかなり有利な条件になっています。 

2年縛り&割引販売撤廃という業界トレンド

これまで、2年契約を前提に649ドルの16GBモデルのiPhoneを199ドルで購入できる仕組みを取り入れてきました。Appleが発表会で、米国向けに占める端末の価格は、携帯電話会社が450ドル分をユーザーの月額料金に含めて価格設定を行っていたため。

2年間の契約のための割引価格であることから、途中で解約すると、2年間かけて0になっていく「Early Termination Fee」(ETF)を支払うことになります。

T-MobileはこのEFTが発生して自由にキャリアを乗り換えられないことを「業界の悪」として、いち早く2年縛り撤廃を打ち出しました。しかし何も縛るものがなければ、より有利なキャンペーンごとに顧客が他のキャリアに流出してしまうため、それを阻止するカウンターキャンペーンを打ち続けなければなりません。

そこで、iPhoneの分割払いのプランを組ませて、途中でキャリアを移ると全額精算、という形式を取ることになります。結局は、分割払いの期間中で、ユーザーを縛ることができるというわけです。

米国のキャリアのプラン作りの攻防は、幾分シンプルさが目立つものの、日本で過去に繰り広げられてきた議論に近いものがあります。ただ、2年縛りを企業側が「やめる」と言い始めた点は、評価すべきかも知れません。

Apple SIMがそうさせた?

もともと、SIMロックをかけないケータイを扱ってきたT-Mobileと、LTE端末についてSIMロックをかけられないVerizonがこうしたプランに移行したことは、意味がある変化のように思います。

割引販売をする代わりに、販売したキャリアでしか利用できないSIMロックを施してきたのですが、割り引かないのであれば、SIMロックの大義もなくなるからです。つまり、Apple Storeで販売されているSIMフリーのiPhoneを、キャリアがプラン契約とセットで販売する形式になり、日本のそれとほぼ同じやりかたへ移行していくことになります。

SIMフリーと割引の取りやめの背景には、iPhoneの販売方式の変更も見え隠れします。Appleは2014年発売のiPad Air 2とiPad mini 3から、「Apple SIM」と呼ばれる、iPadの画面上でデータ通信のキャリアを選択できる仕組みを取り入れました。

つまり、今までキャリア向けにSIMロックも含めてパッケージを作ってきたAppleは、Apple SIM対応キャリアであれば、世界中で同一のパッケージを作れば良くなったことを意味します。T-MobileやVerizonの対応は、Apple SIMの世界への移行に対応するもの、と考えられます。

ユーザーにとっては、これまで割り引かれていた450ドルが消えてなくなるわけで、新しい端末を購入するコスト、あるいはそれを分割して負担するため月々のケータイの請求書の値段が上がることになります。

iPhoneへの人気と、結果的にユーザーが負担するコストが上がること、どちらが勝つのか。2015年発売の新型iPhoneの販売台数は、Appleの勢いを左右する重要な局面を迎えることになりそうです。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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