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次のiPhoneはもっと値上がりする? ドル高で米国外でのiPhone価格上昇、中国での売上も懸念

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
iPhone 6のSIMフリーモデルは、発売から既に2度の値上げがなされた。

急激な円安ドル高の影響で、Apple製品の日本での販売価格が引き上げられる傾向にあります。特にSIMフリーのiPhoneの価格変動で顕著に体験することができますが、同じ価格上昇によるリスクが、更なる巨大市場である中国でも心配されます。

日本では、iPhone 6が発売された2014年9月ごろ、1ドル110円前後でしたが、その後円安が進み、8月12日早朝の段階では1ドル125円を超えています。現在の円安トレンドの影響を受けて、SIMフリー版のiPhoneは日本で段階的に値上げされてきました。

当初の発売時は、最も安いiPhone 6 16GBモデルで67,800円、最も高いiPhone 6 Plus 128GBモデルで99,800円でした。しかし2度の値上げ後、現在の販売価格はiPhone 6 16GBモデルで86,800円(+19,000円)、iPhone 6 Plus 128GBモデルで128,800円(+29,000円)となっています。

SIMフリーモデルは、海外に行っても現地のSIMカードで割安な通話やデータ通信が利用でき、日本国内でも格安SIMを利用できるなどのメリットもあります。ただし、一括で端末を購入しなければならず、購入時の出費の大きさが目立つようになってきました。端末購入代金を分割でき、かつ毎月の支払い分を割り引いてくれる携帯電話会社経由の購入に、より魅力を感じるようになるかも知れません。

ちなみに、現在の価格は2015年3月の為替レートを反映したものです。当時の価格は1ドル120円近辺。もしこのまま1ドル125円近辺のレートが続く、あるいは上昇するのであれば、iPhoneの価格はさらに引き上げられる可能性もあります。

再びSIMフリーモデル争奪戦の様相も

iPhone 6発売時のApple Store表参道の行列。
iPhone 6発売時のApple Store表参道の行列。

2014年9月のiPhone 6発売時、Apple StoreにできたiPhoneを買い求める行列の中に、中国から買い求めに来た人たちがたくさんいました。筆者は早朝から、Apple Store表参道の行列を取材しましたが、はじめ2人しか並んでいなかったところ、後から来た中国人で15人に膨れあがるなど、混乱も見受けられました。

多くの人は日本で購入して中国に持ち帰って転売することが目的でしたが、その理由はiPhoneの価格設定上、SIMフリーモデルの価格が、日本の方が割安だったから。SIMフリーモデルは2014年末からの4ヶ月間、日本での販売を停止する措置が取られてきたのも、転売の影響とみられています。

2015年3月の改訂後の価格と現在のレート(1人民元=20円)で比較してみると、日本ではiPhone 6 16GBモデルで86,800円でしたが、中国では5288人民元。日本円に換算すると116,440円となり、価格差は1482人民元(29640円)。日中間を2往復できるほどの価格差があります。

さらに、8月11日に、中国の中央銀行である人民銀行は、人民元の基準値2%切り下げを実施しました。昨今の株式市場の混乱や経済指標の悪化などもあり、今後も人民元安への誘導が進むなら、前述の価格差がさらに開く可能性もあます。いずれにしても、日本において、iPhone発売時に再びSIMフリーモデルの争奪戦が激化するでしょう。

Apple Storeでは、Apple Watch発売時から、オンラインでの予約、店頭受け取りによる行列を最小限に抑える仕組みを取り入れていますが、iPhoneでも同様の措置を執るのかどうか、気になるところです。

価格高騰で中国市場の不振を招くと、Appleの業績にも影響

最後に、Appleの業績への影響懸念にも触れておきます。

現在ドル高のトレンドが進んでおり、米国企業の海外での業績の落ち込みという形で影響が現れていますが。中国を第2の市場として取り組んでいるAppleにとっても例外ではなく、人民元の切り下げは、結果的に中国市場でのドルベースの売上評価額を減らすことになります。ただ、ドルベースでの製造コストの低減効果もあり、一概にマイナスだけでもないでしょう。

iPhoneの世界的な価格をドルベースで揃えていくとすれば、人民元の切り下げはiPhone価格の更なる上昇に結びつき、製品力があったとしても、価格競争力で競合となっている中国のAndroidスマートフォンメーカーに対処できなくなる可能性があります。2015年第2四半期は、iPhoneの製品サイクル末期であることもあり、中国市場でトップシェアだったAppleは3位に転落しています。

また、中国経済そのものの善し悪しも影響してくることから、今後も中国の為替や景気などを含む経済情勢が、Appleにとってのアキレス腱と見ることができるでしょう。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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