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米有力紙 金正恩氏を「狂人扱い」する危険性を指摘

立岩陽一郎InFact編集長
北朝鮮の金正恩労働党委員長の分析について伝えるワシントンポスト(26日付)

米ワシントンポスト紙は26日、北朝鮮問題について報じた。この中で、金正恩労働党委員長を「狂人扱い」して軽視することで、今後の対応を誤る危険性が有ると警告する専門家の声などを伝えている。

記事は、上院軍事委員会の重鎮で軍事政策に大きな影響力を持つ共和党のジョン・マケイン議員が金正恩委員長を指して、「北朝鮮を動かしている狂ったデブガキ」と評したり、米国のニッキー・ハーレイ国連大使が「我々はまっとうな人間を相手にしていない」と語ったことに触れ、こうした認識が今後の米国の判断を誤らせる危険性が有ると指摘。

(参考記事:米トランプ政権、初軍事作戦でつまずき 戦死した米兵の父親が「バカげた作戦」と批判(38))

記事の中で、フロリダ大学のベンジャミン・スミス教授は、金正恩委員長は「狂人」ではないとして、「彼が現在も実権を握っていることがその証拠だ」としている。

また北朝鮮との文化交流などを行っており元NBAスターのデニス・ロッドマンの訪朝で行動を共にしているカナダ人のマイケル・スパーボー氏は、「金正恩委員長は極めて外交的且つプロフェッショナルに活動していた」と証言。その上で、「彼は時に真面目に、時に愉快にふるまっていたが、彼が異常な人物だという感じはしなかった」と話している。

(参考記事:米トランプ政権、北朝鮮との事実上の「協議」入りをドタキャン)

金正恩委員長をめぐっては側近の粛清や実の兄である金正男氏の暗殺を指示した疑いがもたれている。これについて金日成総合大学で学んだこともあるロシアの北朝鮮専門家、アンドレイ・ランコフ氏は、「軍などの忠誠を得るために周囲に恐怖を与える必要がある」と分析している。

一方、CIAで精神分析の研究施設を設立し、金正恩委員長とその父親の金正日氏の精神状態を分析しているジェラルド・ポスト氏は、金正恩委員長だけなら危険ではないが、そこにトランプ大統領が関わることで危険性が増す恐れが有ると指摘している。この中でポスト氏は、2人にはある種の共通点が有るとして、「北朝鮮が好んで米国にとっての脅威になるかと問われれば、答えはNOだが、金正恩委員長とトランプ大統領とのやり取りが何かしらの行動に発展する懸念は有ると思う」と話している。

(参考記事:拉致の記憶~蓮池兄がたどる拉致事件))

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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