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ポケモンGO疲れや否定報道を生む背景にある3つの誤解

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
早くもポケモンGOに否定的な報道も増えてきているようです。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

ポケモンGOが日本で公開されて10日が経過しました。

個人的には、相変わらず息子たちと良く行く公園が、多数のポケモントレイナーの存在で全く違う景色になっている現状に驚きを隠せずにいますが、早くも一部メディアではポケモンGOは終わったことになってしまっているようです。

ポケモンGO、早くもブーム終息か ゲーム内容に根本的な問題

ポケモンGO、一瞬でブーム終了の予兆

米国で「ポケモンGO」人気がたった1週間でピークアウトした理由

特にJ-castの記事については、記事中で発言が引用されていた深津さんがツイッター上で、「人のポケモンGOをどう面白くするか?の議論の一部を切り取って、取材も確認もなしにネガ記事にするJCASTマジ外道。」と不快感を表明されていて、ちょっとした話題になっています。

その後深津さんは「ポケモンGOは壮大な踏み絵で、新しすぎる概念が出たときに、その人間が否定から入るか、利用しようとするか、分析するか、改善しようとするかが可視化された。」とも発言されており、個人的にも非常に同意するところではあるのですが。

そもそも、メディアが散々持ち上げた後に手の平を返したようにバッシングをするのは、ポケモンGOに始まったことではなく、STAP細胞とか舛添前都知事とか日常茶飯事の印象で、あまり気にしても仕方が無いのかなとも思いますし。

米国のピークアウトの記事とかはデータに基づく分析のようですから、同様の傾向が日本にもあるのかなと思ったりもしますが。

今回の一連のポケモンGO騒動で強く感じたのが、話題になりすぎることのリスクです。

ポケモンGOに興味を持たなかったはずの人にも話題が伝播

今回のポケモンGOは、スタート時の話題が大きくブレイクしすぎてしまった感があります。

特に日本においては、リリース前に米国での人気振りがテレビやネットメディアによって散々報道されたことによって、米国以上に話題が盛り上がってしまいました。

あれだけ連日連夜テレビでポケモンGOが取り上げられていれば、そりゃあポケモンや位置情報ゲームに全く興味のなかった人も、流行にのせられてインストールしてしまうわけで。

当然、流行に乗ってインストールしただけだと、ポケモンや位置情報ゲームに対する思い入れも少ないでしょうし、飽きるのも早くなります。

実際にどれぐらいの話題度だったかGoogleトレンドで類推してみましょう。

まず、ポケモンGOが登場する前のポケモンの検索数がこちら。

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妖怪ウォッチとしのぎを削っている感じが良く分かるかと思います。

で、ポケモンGOが話題になってからのグラフがこちら

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凄まじいですよね。

2013年10月のゲーム発売時のピークや妖怪ウォッチのピーク時が誤差の範囲に見えるぐらい、大きなピークになっています。

まさに社会現象と言えますし、その結果おそらく運営会社側が想像していたよりもはるかに多くのプレイヤーがポケモンGOをプレイする結果となり、公園でのゴミ問題が注目されたり、ルール違反の行為が話題になったりとネガティブな報道が増えるサイクルにつながってしまっています。

ドラクエやたまごっち、ナイキのエアマックスブームの際にもカツアゲや盗難が話題になりましたから、ここまではある意味想定の範囲内と言えるでしょう。

参考:ポケモンGOの日本サービス開始後に注目すべき3つのバトル

何しろこんな記事が話題になるぐらいですからね。

「ポケモンGOで事故った!」 は嘘。濡れ衣を着せられたポケモンたち

要は事故を起こした人間がポケモンGOを言い訳に使った結果、それが話題になってしまったけど、実は事故の原因は別にあったという話です。

個人的には、そもそも警察庁がポケモンGOが原因での違反件数をカウントしていること自体が驚きです。運転中にスマホを使っていて事故を起こすケースは日常的に発生していると思いますが、それが記事になることは希な印象であることを考えると、ポケモンGOが警察庁やメディアにいかにマークされているか分かります。

参考:ポケモンGO:「運転中に」406件を摘発 配信1週間

まぁ、残念ながらポケモンGOのブームにより、実際に違法駐車とかマナー違反な行為が多発してしまっているのは事実のようですから、こういう注意喚起的報道は重要ということでしょう。

まぁ、この手の流行り物は一発芸人よろしく、話題になればなっただけ、その後の反動や批判も強くなりがちですから、冒頭の記事のようにネガティブな反応をする人が出てくるのはある意味当然です。

今回はテレビ経由で、ポケモンのことを全く知らない人達や、ゲームをする行為自体に興味がない人達もポケモンGOを試す結果になったようですから、そりゃあそういう人が1~2週間で次々に離脱していくのはある意味当然と言えるでしょう。

ただ一方でポケモンGOにとって重要なのは、はたしてポケモンGOは末永く楽しめるゲームになるのか、あっという間に一発芸人同様今年の夏の風物詩として昔話になってしまうのかどうかという点です。

そういう意味で、個人的にポケモンGOが損しているなと感じているのが、ポケモンGOに対する誤解が様々なタイプの人に存在している点です。

特にポケモンGOに対するネガティブな反応の発信源になっているのが下記の3タイプでしょう。

■「ポケモン」に全く興味無いタイプの誤解

■「ゲーム」といえばレベル上げに熱くなるタイプの誤解

■とにかくゲームが好きというタイプの誤解

順番にご紹介します。

■「ポケモン」に全く興味無いタイプの誤解

ポケモンGOの前進であるイングレスがコアなファンには人気を博しつつも大人気ゲームにはならなかった一方、ポケモンGOが社会現象になったのには、やはりポケモンという希有なコンテンツの力が影響しているのは間違いありません。

私自身、イングレスとポケモンGOを比較すると、イングレスのポータルをハックしてまわるのと、ポケモンGOでモンスターボールを入手して回るのだけでも、モチベーションの上がり方が全く違うのを感じます。

道ばたでレアなポケモンを見つけてしまったときには、逃げないことを祈りながらボールを投げている自分に気づいて少し笑ってしまうぐらいです。

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当然、このモチベーションはポケモンに全くふれたことがない世代では、全く盛り上がらないことになります。

ポケモンGOが話題になるのは、ポケモンの世界観をリアルで体験できるからこそなんですよね。

それがポケモンに興味がない人が話題だからという理由だけでインストールしてみたら、やってみて「つまらない」というのはある意味当然なわけです。

大体、そういう人はポケモンと言ったらピカチュウぐらいしか知らないので、最初のポケモン選択時に裏技を使ってピカチュウをゲットし、満足して辞めてしまってる人が多い気がします。

■「ゲーム」といえばレベル上げに熱くなるタイプの誤解

一方で、ポケモンGOにおける誤解としてもう一方に多いのが、「ゲーム」と表現されるため、純粋な「ゲーム」と単純比較してつまらないと発言する人が多いことです。

特に私のようなゲームと言えばドラクエ世代にとって、「ゲーム」と聞いてイメージする形の中心は、レベルを上げながら強くなり最終的にラスボスを倒してエンディングに到達するものでしょう、

実際ポケモンも、ゲームの基本は最初は弱いポケモンしか持っていない主人公が、旅をしながらレベルアップをして強いポケモンを集めてラスボスを倒す、というパターンになるわけですが。

ポケモンGOのような多人数同時プレイ型のゲームにおいては、エンディングが存在しません。

そもそも途中のクエストとかミッションのようなストーリーとか、決められたシナリオ自体が存在しないわけです。

通常のパッケージゲームでは一人でプレイして数週間から1ヶ月で「クリア」するのが前提ですが、ポケモンGOとかイングレスのようなゲームは終わらないのが前提。

大体、この世代はレベルアップすることにモチベーションを見いだすと思いますが、ポケモンGOにおいてはレベル20に到達したあたりから急激にレベル上げが難しくなるため、挫折する人が急増するように思います。

実際米国ではそのゲーム構造に対してクレームが出ている模様。

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参考:「ポケモンGO(Pokemon GO)」のレベルアップに対するユーザーの不満が噴出、課金なしでは難しいという声も

多分ポケモンGOではレベル上げに必死になっても仕方が無い構造どころか、逆に慌ててレベル上げすると苦労する構造にしてる感じだと思うんですけどね。

イングレスでは経験値でのレベルアップは8でキャップがかかり、プレイヤーの強さは全く同じになるという上手い構造になっていましたが、このあたりの感覚を誤解しているゲーマーは多い気がします。

■とにかくゲームが好きというタイプの誤解

また、レベル上げとは別で、そもそも「ゲーム」としてポケモンGOに期待しすぎた層も、ポケモンGOはつまらないと発言する傾向が強い気がします。

そりゃあ没頭するタイプのゲームが好きな人からしたら、ポケモンGOほど面倒くさいゲームはないですよね。

ポケモンやアイテムを入手するのに歩き回らなければいけないし、ゲームらしい行為と言ったらとにかくモンスターボールを投げ続けるか、基本連打タイプのジムの戦いぐらい。

今時の進化した複雑なゲームと比較したら、まぁクソゲーのジャンルに入れられてしまってもおかしくはないでしょう。

私自身もゲームとしてはPS4のコンソールゲームの方が好きです。

でも、そもそも、ポケモンGOやイングレスのような位置情報ゲームは、試行錯誤が始まったばかりの新しい存在です。

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ただ、どうしても位置情報ゲームも「ゲーム」と表現されているため、純粋に通常のゲームと比較してのゲーム性の完成度体を期待してしまうとガッカリすることになりがち。

実際私自身も、イングレスをプレイしていたときに感じましたが、どちらかというとこの手の位置情報ゲームは、普段の移動とか散歩に少しエンタメ要素が増える、ぐらいに思った方が良いと思うんですよね。

私が位置情報ゲームが好きなのは、基本的に「移動」がおっくうなインドア派なので、位置情報ゲームがあるとその「移動」が楽しくなる点です。

今までは、遠くのアポに行くの面倒だな、と思ってたのが。

ひょっとしたら、アポのついでに、いつもは見つけられないポケモンを見つけられるかも、とポジティブに変わる可能性があるわけです。

(実際、恥ずかしながら私自身は、次男と公園の散歩に行く回数が明らかに増えました。)

そういう現実世界の「移動」に別の意味をもたらしてくれるのが位置情報ゲームのユニークさであって、それだけでいわゆる「ゲーム」とは別物として、ゆるく長くプレイする意義があると思うんですよね。

もちろん、単純に空いている時間を一番面白いゲームに使いたいと言うことであれば、いまやスマホで様々なゲームがプレイできる時代ですからポケモンGO以外に様々な選択肢があります。

そういう純粋なゲーマーの人達は、私も含めて、自分の人生の時間の大半をポケモンGOにつぎ込むような生活は1~2週間ですぐに終了するんじゃないかなと思ったりします。

今私たちが見ているポケモンGOは完成にはほど遠い

まぁ、「ゲーム」として、とにかくポケモンを一気に集めてクリア気分を味わうという人もいるかもしれませんが、ポケモンってすでにこの20年間で700種類以上に増えてますからね。

今の150種類とかって、一部でしかないわけです。

ブームが凄すぎて最初のビデオに出てきたミュウツー戦のようなボス戦の要素とか明らかにまだ盛り込まれていませんし。

トレードの要素も規約にはあるものの、まだ公開するかどうかは検討中の模様。

ポケモンGOは、短期間でクリアを目指すゲームではなく、長い年月をかけて成長していくサービスとして構想されているわけで。

パッケージ型のゲーム同様に、現時点でのポケモンGOをもとに「つまらない」と評価をくだすのは、ちょっと気が早いんじゃないかなと思ったりします。

(まぁ、今のポケモンGOブームは明らかに行き過ぎで、都市部におけるジム戦とかゲームバランス自体が崩れてる感じもありますから、ある程度の人達には早々につまらないと思って離脱してもらった方が、のんびりプレイしたい人にとっては良い気もしますが。)

ちなみに、何を隠そう、私自身は上述した3つのタイプの全てに当てはまる人間だったりするわけですが。

長男にポケモン映画17本を全部一緒に見させられたり、ポケモンのカードゲームに付き合わされたりした結果、普通のポケモン世代よりも詳しくなっている背景があり、ケータイ国盗り合戦やコロニーな生活時代からの位置情報ゲームマニアだからこそ、長い目で見られているというのが正直なところ。

まぁ、もちろん個人的にも今回はポケモンGOブームがあまりに大きすぎたので、深津さんが指摘してるように、早く中期的目標の要素を増やしていただかないと、多くのプレイヤーが早々に離脱してしまい、「まだポケモンGOやってるの?」と後ろ指指される状態になりかねないという危機意識を感じているのは事実です。

何しろあの明るい緑の分かりやすい画面だと、地下鉄でも周囲の人にポケモンGOを良い歳したオッサンがプレイしているのが分かりやすすぎて、すでに少し恥ずかしくなってる自分がいるんですよね。

ポケモンGOをプレイしていてもメールソフトを見ているように周囲に見えるテンプレート機能を強く希望です。

という話を書き始めるとさらに長くなってしまいそうなので、今日のところはこの辺で。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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