Yahoo!ニュース

いまのアメリカが提示した“ジャズ・ヴォーカル”の基準点

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

Listen to the 50 Greatest Jazz Vocals of All Time | Jazz24

Listen to the 50 Greatest Jazz Vocals
Listen to the 50 Greatest Jazz Vocals

アメリカの公共ラジオ「NPR」、オンラインラジオ「Jazz24.org 」、シアトルのFM「KPLU」の3局がそれぞれのユーザーを対象に「最も偉大なジャズ・ボーカル曲」を調査した結果をサイトで発表しました。

右は「Jazz24.org」のサイト。

ジャズを生み育てたと言われているアメリカでは現在、その中心的な存在だったジャズ・ヴォーカルがどのようなイメージで受け取られているのかを知る格好のデータではないかと思い、取り上げてみることにしました。

50 Great Jazz Vocals is a crowdsourced list of the 50 most popular jazz vocal recordings of all time, as determined by the listeners of Jazz24, KPLU, and NPR Music.

出典:Listen to the 50 Greatest Jazz Vocals of All Time | Jazz24

サイトには、50位までのリストがアップされていますが、ざっと眺めたところ、「ものすごーく、コンサバだなぁ」というのが正直な感想。

競技会にたとえてみると、ビリー・ホリデイが金と銅のメダルをゲットし、男性ヴォーカリストのジョニー・ハートマンが健闘して銀メダル、といった感じでしょうか。

ジョニー・ハートマンがナット・キング・コールやフランク・シナトラよりも上位というのは意外でしたが、きっと後者のようなヴォーカリストは“ジャズ・ヴォーカル”というカテゴライズではなく、“ポピュラー・ソング・シンガー”というイメージのほうが強かったという結果なのだと思います。

それにしても、アメリカのジャズ・ファンは、グラミー賞などに見向きもせずにオールド・ファッションのジャズ・ヴォーカルを愛しているということが、結果として伝わってきますね。良し悪しは別にして……。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

富澤えいちの最近の記事