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【JAZZ】21世紀ジャズの進化を予言するクラシックとの邂逅(小曽根真&アルトゥーロ・サンドヴァル)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
Music Weeks in TOKYO 2014
Music Weeks in TOKYO 2014

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、小曽根真&アルトゥーロ・サンドヴァルによる“ジャズ・ミーツ・クラシック”公演。

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「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPOなどと協力して実施している事業が“東京文化発信プロジェクト”だ。その一環として“Music Weeks in TOKYO”が今年も開催される。公演のテーマは“ジャズ・ミーツ・クラシック”。ホスト役は日本を代表する世界的なジャズ・ピアニストの小曽根真。迎えるゲストは、驚異的なテクニックによるハイノート・ヒッターでありながら繊細な音色による叙情的なプレイでも聴く者を魅了する、キューバ出身の名トランペッター、アルトゥーロ・サンドヴァル。

予定されているプログラムは、バーンスタイン「キャンディード」序曲、ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番」(ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲)、ラヴェル「ボレロ」など。ジョシュア・タン指揮による東京都交響楽団の演奏に対して、小曽根真とアルトゥーロ・サンドヴァルがどのようなアプローチで新たなサウンドを掘り起こし、既成のイメージを突き崩していくのかがポイントになるだろう。

いかに“自分の土俵”に持ち込むか

小曽根真はここ数年、クラシックにも積極的に取り組んでいて、2014年2月にはニューヨーク・フィルハーモニー・オーケストラのアジア・ツアーで初の日本人ピアノ・ソリストに抜擢されるというエピソードを自己の楽歴に加えている。しかしそれは彼がクラシック側のポジションに立って出した結果。今回の“ジャズとクラシックの邂逅”というテーマにおいては“異なる人格”で臨まなければならないことは明白だ。

こうした“多重人格性”によって音楽と向き合うことこそがジャズの醍醐味だと言えるのだが、その“多重人格性”を持ち合わせている小曽根真がさらに多重的な才能を発揮するようすを目の当たりにできることがこのコンサートの特異性であり、最大の楽しみどころ。

「ただのクラシック・コンサートでは終わらせない」というジャズメンならではの矜持こそが、20世紀の音楽を発展させ、21世紀のジャズを進化させるのだからーー。

では、行ってきます!

●公演概要

10月24日(金) 開場 18:20/開演 19:00

会場:東京芸術劇場(池袋)

10月25日(土) 開場 18:20/開演 19:00

会場:オリンパスホール八王子(八王子)

出演:小曽根真(ピアノ)、アルトゥーロ・サンドヴァル(トランペット)、ジョシュア・タン(指揮)、東京都交響楽団

※主催の東京文化会館サイトに小曽根真とジョシュア・タンのメッセージ動画が掲載されています。

Music Weeks in TOKYO 2014 小曽根真&アルトゥーロ・サンドヴァル“Jazz meets Classic” with 東京都交響楽団

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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