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【JAZZ】待望の京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラ東京遠征で“独自の乱調の謎”は解けるか?

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラ@Tokyo TUC
京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラ@Tokyo TUC

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラの東京公演。

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今年も京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラ(KCJO)が東京へやってくる。

KCJOは、関西エリアを拠点に活動する精鋭が集まったアーティスティック志向のジャズ・オーケストラ。結成は2006年。リハーサル・バンド、すなわち営業ではなく演奏者同士が情報交換や技術研鑽を行なうことを目的に集まるバンドとしてのスタートだったが、彼らのために楽曲を提供する作曲家が増え、3枚のアルバムや定期公演など活動の幅が広がっている。

リハーサル・バンドという名称には、メンバーがそれぞれソロ活動やスタジオ・ワークなどの仕事をもっているためにオーケストラ単位でのスケジュールを組みにくいという“裏事情”も含まれている。KCJOもそのためになかなか東京遠征ができなかったのだが、ようやく2013年11月の公演が実現。ちょうど1年を経て再びTokyo TUCへ舞い戻り、その独創的で斬新なオーケストレーションを披露してくれることになった。

オリジナル志向のバンドに課せられた“立ち位置”

KCJOの魅力は、なんといっても彼らのために書かれた曲を演奏するというところにあるだろう。アンサンブルは“和して乱れず”が原則ではあるけれど、ジャズではとくに“美は乱調にあり”と言われる。そのバランスをどうとるかが個々のメンバーやアレンジャー、そしてリーダーの腕の見せどころでもあるわけなのだが、そこにまったく違った視点で作曲者がハプニングを求めることになる。カヴァーであれば“KCJOならではの違い”を出せば済んでいたところ、オリジナルでは比較できる対象がないために“立ち位置”から考えなければならなくなる。最初から“乱れたサウンド”を確立させるにはセンスと度胸が必要になるのだ。

最初にKCJOのサウンドを聴いたとき、ボクはこれまでに体験したことのない“乱れ”を感じて驚いてしまった。それがなんなのかを突き止めたいと、昨年もライヴに足を運んだ。とりあえず、彼らが拠点としている関西という風土を織り込んだサウンドが“訛り”として反映されているのではないかという仮説を立てたのだが、どうもしっくりこなかった。それはおそらく、メンバー個々の表現に帰結する“訛り”ではなく、オーケストラ全体としての“乱れ”を醸し出すセンスと度胸に着目する必要があったことが原因ではないかと思っている。今回の公演ではそれを確かめてみたい。

では、行ってきます!

●公演概要

京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラ@Tokyo TUC

11月8日(土) 開場15:30/開演16:00

会場:Tokyo TUC(秋葉原)

出演:Kyoto Composers Jazz Orchestra directed by Tomomi Taniguchi:谷口知巳(リーダー、トロンボーン)、浅井良将(サックス)、横山未希(サックス)、篠崎雅史(サックス)、當村邦明(サックス)、高居裕香(サックス)、ユンファソン(トランペット)、横尾昌二郎(トランペット)、高田将利(トランペット)、岩本敦(トランペット)、吉岡明美(トロンボーン)、清水百合子(トロンボーン)、菅山光城(トロンボーン)、李祥太(ピアノ)、芝田奨(ベース)、斎藤洋平(ドラム)、Special Guest:斉田佳子(ヴォーカル)、The Majestic Jazz Orchestra Tokyo(opening act)

♪【Trailer】Anatomy of a band / 京都コンポーザーズ・ジャズ・オーケストラ

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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