ゴールデンウィークどこへ行く?日本人は、どの県でいくら消費しているか
国内観光消費額はインバウンド消費の約7倍
訪日外国人のインバウンドと爆買消費が大きな話題を集めています。昨年度の訪日観光客数は2千万人を超え、旅行消費額も3兆円を突破しました。(平成27年観光庁調査)そのせいもあり、日本人による国内観光需要はさほど話題となりませんが、旅行実数としては述べ6億3千万人(2013年、宿泊旅行+日帰り旅行)、観光消費額20兆1871億円(2013年、同・共に国土交通省・観光庁調査)と、ざっくり言えば、客数は約20倍、旅行消費額では約7倍のボリュームを持っています。一時的なインバウンド消費への注目も重要ですが、国内観光需要をいかにして底上げするかといった戦略づくりも引き続き各地方にとって重要であることは言うまでもありません。
そこで、今回は国土交通省観光庁の平成25年調査データ「都道府県別、観光入込客数・観光消費額単価・観光消費額」を使い、日本人が国内旅行(宿泊)でどの県で、いくら消費しているかを調べてみました。(県外で宿泊を伴う観光のみを対象、県内、日帰り観光は含まれず。福井県、大阪府、福岡県のデータは非掲載のため、3県を除いた比較となります。)
トップを争う千葉県、沖縄県、最下位は埼玉県
図1は、縦軸に観光消費額単価(円/人回)、横軸に入込客数(千人回)を県別にプロットしたものです。
この図を見ると特性に応じて県は3つのタイプに区分できそうです。
A.入込客数は多くないものの、消費単価が高いタイプの県・・・北海道、沖縄県、鹿児島県、秋田県
B.消費単価は多くないものの、入込客数が多いタイプの県・・・千葉県、東京都、長野県、静岡県、神奈川県、京都府
C.入込客数、消費単価ともにそこそこの県・・・それ以外の県
観光消費額の多さで見ると、トップは千葉県(3,833億)、次いで沖縄県(3,361億)北海道(2,719億)東京都(2,718億)の順となっていますが、これは大きくAとBの2つのタイプに分かれていることがわかります。
Aタイプの県は都市部から遠距離の県が多くリゾート的要素も強い。滞在日数が高くなることから消費単価も高くなります。Bタイプの県は、東京、大阪などの都市部の周辺県が中心で、大都市部の観光需要の一大消費地的性格が強いことが理解できます。千葉県の突出はひとえに東京ディズニーリゾートによるものでしょう。いかにディズニーの力が強いかが理解できます。
世界有数の観光地である京都が思いのほか、入込客数、単価ともにさほど高くないことが気になるところです。宿泊キャパシティーの向上、消費単価上昇に向けた施策などまだまだ方法はありそうです。
Cタイプの県は、入込客数600万回、消費単価4万円/人回以下の枠にすべておさまっている県群ですが、ほとんどの県がこの枠の中で争っています。最低値を示しているのが埼玉県で、観光需要開発の面で最も課題県と言えます。
地方別に見た観光動向
Cの部分は県名が重なっており見づらいことから、この部分を拡大し、それぞれの県の特徴を地方別に見ていくことにします。
東北地方(秋田県は図1)
共に入込客数は130~300万人、客単価は2万2千~5千円の範囲に収まっており、県別にさほど大きな差異は見られません。東北地方では、域内周遊観の強化を図り、滞在日数をいかに伸ばすかが課題であると言えるでしょう。
関東地方(東京都、千葉県、神奈川県は図1)
栃木県、群馬県は、日光、水上、草津、北軽井沢などの温泉・リゾート地もあることから、入込客数は400~500万人と比較的入込客の数字は伸びています。一方、単価は2万円台前半に留まっており、単価上昇が課題と言えそうです。茨城県は関東地方では、埼玉県に次ぐ低い入込客数であり、偕楽園、鹿島神社、筑波山以外の観光地開発が課題であると言えるでしょう。
中部地方(長野県、静岡県は図1、福井県は除く)
この中では、客単価の高い石川県、入込客数の多い山梨県という違いが浮かびあげってきます。石川県は金沢を中心に、山梨県は富士山を中心とする観光スポットが魅力の源泉でしょう。新潟県は入込客数は石川県を上回っているものの、客単価では1万円以上の大きな差がついています。その意味では新潟県は、単価向上施策が課題であると言えるでしょう。
近畿地方(大阪府は除く)
近畿地方の中では、兵庫県が入込客数・単価ともに最も高く、神戸、姫路、宝塚などの多様な観光地が寄与したものと考えられます。一方、奈良県は近畿地方の中でも最も入込客数が少なく、京都と同様、宿泊客数増加に向けた施策が重要であると言えるでしょう。滋賀県は近畿地方の中では最も観光消費額が低く、首都圏における埼玉県にやや似たポジションにあると言えるでしょう。
中国・四国地方
中国・四国地方は、このデータから読み取る限り、全国の中で最も観光が活発でない地方と言えるでしょう。各県ともに入込客数は200万人以下で、客単価も四国各県は3万円代の徳島県、高知県を除くと、中国地方の各県は2万円前半に留まっています。これらの県はまずは観光需要ベースの底上げが重要と言えるでしょう。
九州地方(福岡県は除く)
九州地方は、比較的客単価と入込客数の多い長崎県、熊本県、大分県グループと低い宮崎県、佐賀県グループに大別することができます。九州地方は、比較的観光需要の高い県が揃っていますが、佐賀県、宮崎県に関しては、入込客増加に向けた施策が必要であると言えそうです。
さいごに
県全体のデータ比較なので、細かな分析には限界がありますが、県別比較で見ると、それぞれの県の置かれたポジションは理解することが出来るでしょう。
消費単価は概ね、東京、大阪などの都市部から距離が遠ければ遠くなるほど高くなる。また、客数は逆に都市部に近いほど比較的伸びやすいという一定の相関がありそうなことも分かりました。しかし、そのなかでも例外ケースは発見できるわけで、入込客数、消費単価を伸ばすための創意工夫が必要となります。
観光消費額総額は入込客数と消費単価の積になるので、観光消費総額を伸ばすためには、どちらか、もしくは両方を伸ばすことが必要となります。それぞれの県の特性に応じて採用すべき戦略は異なってくるでしょう。