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がっかりグルメ記事における3つの特徴

東龍グルメジャーナリスト

残念なグルメ記事

ここ2、3年でニュースアプリが大きく普及しているので、ニュース記事はニュースアプリで読んでいるという方は多いのではないでしょうか。

私もニュースアプリからグルメ情報を入手することが多く、毎日何本も記事を読んでいます。

「NAVERまとめ」「Antenna」「MERY」「RETRIP」といったキュレーションサービスでグルメ記事が急増していますが、こういった<まとめ記事>には、既に閉店している店が掲載されていたり、以前のシェフが紹介されていたり、違う時間で提供されているものがお勧めされていたりと、残念に思うことがよくあります。

ここ最近はニュースアプリに掲載されるグルメ記事でも、キュレーションサービスと同じように、残念に思うことが増えてきました。

このような<がっかりグルメ記事>を大別すると、以下の3つの特徴があります。

  • 掘らない
  • 調べない
  • 誠実でない

特徴だけ挙げてもイメージしづらいので、具体例を挙げることにします。

堀らない

最初は金沢経済新聞の記事です。

人気メニューは「高倉町ブレンドコーヒー」(400円)や、「日本一」を称する「リコッタパンケーキ」(690円~)。

出典:金沢に「日本一のパンケーキ」が自慢の「高倉町珈琲」、日本海側初出店

タイトルに「日本一」とあるので、パンケーキ好きにはとても気になる記事でしょう。しかし、記事を読んでみると、パンケーキが「日本一」であるのは単なる自称であることが分かって少しがっかりし、さらには「どうして日本一を自称しているのか」という説明もないので、何だか取り残されたような気分がします。

タイトルが煽り気味になるのは、同じくWebで記事を執筆する人間として理解できるのですが、正式な商品名は「リコッタパンケーキ」であるのに、タイトルで意図的に「日本一のパンケーキ」としているのであれば、経済新聞としては深堀りしてもらいたいものです。

深掘りする場合には、本当に「日本一のパンケーキ」であるかどうかは重要ではなく、どうして「日本一のパンケーキ」を自称しているのかが重要であり、そこを引き出すことによって、パンケーキにかける意気込みも伝えられるのではないでしょうか。

店から「日本一のパンケーキ」と言われて、「なぜ?」「どこが?」「どうして?」と訊き返さなかったことは不思議に思います。

調べない

続いてはイスタの記事です。

メニューや出店場所の詳細などはまだ明らかにされていないが、このゴールデンウィークに“絶品ロブスター”を東京で味わえる確立は高そうだ。

出典:ニューヨーク屈指の行列店“絶品ロブスターロール”が日本初上陸!

※引用の「確立」は原文のママ

この記事が公開された時点でオープンまで1ヶ月を切っていました。その段階でも、料理は最後のぎりぎりまで調整することがあるので、メニューはまだ明らかにされていないこともありますが、出店場所がまだ明らかにされていないということには疑問を持ちました。

店をオープンするまでには、賃貸契約を締結したり、改装したり、什器を設置したり、スタッフを雇ってトレーニングしたりと、多くの時間を費やすので、1ヶ月を切っている段階で場所が決まっていないということはあり得ません。場所は決まっているのに明かさないということは、隠れ家としてブランディングしたいのでしょうか。

本当にまだ住所が明かされていないのか調べてみると、公式サイトや他の記事には、やはりと言うべきか、ちゃんと住所が記載されていました。

少し調べればすぐに分かることなのに、調査せずに「まだ明らかにされていない」とされていることは残念に思います。

誠実でない

最後はハフィントンポストの記事です。

(1) 大流行の人気ハンバーガー店SHAKE SHACK

~ 中略 ~

(5) No.1パンケーキCLINTON ST. BAKING COMPANY

出典:ニューヨークの大流行グルメ5選!日本に上陸するのはどれ?

5つの店を紹介する内容となっていますが、キュレーションサイトのようにコピペと引用から構成されているのではなく、オリジナルの記事となっているので読み応えがあります。

執筆した方が自分なりの基準で5選を決めるのは全く問題ないのですが、自分で設定した前提と違っていると残念に思ってしまいます。

タイトルで「日本に上陸するのはどれ?」と煽っておき、次に日本へ上陸してブームになるのはどこだろうと期待を膨らませておきながら、2016年に日本へ上陸する予定の「シェイク・シャック」(記事では「SHAKE SHACK」)を最初に取り上げたり、既に2013年8月にオープンした「クリントン ストリート ベイキング カンパニー」(記事では「CLINTON ST. BAKING COMPANY」)をトリにどんと据えたりしているのは、かなり違和感があります。

記事の中で、シェイク・シャックは「2016年には日本への上陸が決まり」、クリントン ストリート ベイキング カンパニーは「パンケーキブームに沸く日本でも2013年に、東京の南青山にオープンして話題に」と書かれているので、調査が足りなかったわけではありませんが、自ら設定した問い掛けは忘れてしまったようです。

クリントン ストリート ベイキング カンパニーが2年前にオープンしたと説明した直後に、「これらが日本に上陸する前に食べておけば、流行を先取りできちゃうかもしれませんね!」と乱暴に結んでいるのは、誠実さがないように感じられてしまいます。

がっかりさせない

あえて具体的なグルメ記事を挙げて説明しましたが、執筆者や編集者やサイトに個人的な恨みがあるわけではありません。ただ、最近のグルメ記事はあまりにも残念なものがあり、しかもそれが大きく拡散されているので心配になっているのです。

グルメ記事を読んで残念に思う体験が続いていけば、グルメ全体の信頼度が落ちてしまうのではないでしょうか。

私もグルメ記事を執筆するにあたり、多くの方に読んでもらうためにタイトルを刺激的にしたり、食べに行きたいと思ってもらうためにできるだけよい表現を使ったりしますが、「掘らない」「調べない」「誠実でない」にならないように、できるだけ気を付けています。

キュレーションサービスやニュースアプリが普及していく中で、幅広い層に受け入れられるグルメ記事も爆増していますが、いかに<多く読まれるのか>を考えるだけではなく、これからは<どう読まれるのか>を考えなければならない段階にあると、<がっかりグルメ記事>を読む度に強く思うのです。

元記事

レストラン図鑑に元記事が掲載されています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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