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僕が確定申告で「freee」を使わない2つの理由

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:外資の経験 起業に新風(日本経済新聞)

確定申告シーズンの真只中である。溜め込んだ領収書の整理などに気が重い人も多いだろう。経理処理など苦手なことはやりたくないから独立したのに、1人になったら何でも自分でやらなくちゃいけない。いろいろ工夫しなければ、本業(僕の場合は取材や原稿書き)に割ける時間がどんどん減っていく。

最近、よく耳にするのがインターネットを使った会計サービス「freee」だ。今朝の日経新聞に簡潔な説明が載っている。

<事業者が取引に使う銀行口座や光熱費・家賃などの支払いに使うカード口座などを登録。それを集計すると、会計帳簿が自動的にできあがる仕組みだ。帳簿をつけたり、日々の収支を計算したりする負担を軽減できる。>

このサービスは大人気で、登録数は1年間で5万事業者に達したらしい。すごい成功だ。

でも、僕は使っていない。ITおよびシステム音痴なので、新しいITサービスを覚えて利用することに抵抗がある。事務処理以上に気が重くなるのだ。

もう1つの理由は、税理士さんとの付き合いを大事にしたいからだ。僕は7年前から税務を知り合いの税理士事務所にお願いしている。幼馴染の父親が所長なので、「知り合い」というより「恩師」に近い存在だ。

年に一度、妻を連れて事務所を訪れ、担当税理士さんと所長とその奥さん(総務担当)と顔を合わせる。「この領収書は何? 経費として認められないよ」などと叱られながら、去年の仕事と生活を振り返る。毎月の帳簿はつけていないので税理士さんの作業負担は重い。それなのに手数料は格安だ。

面倒をかけているな、とは我ながら思っている。事務所から「会計帳簿の一部は自動化できるのでfreeeを使ってください」と指示されたら、使い方を必死で覚えるかもしれない。

でも、今のところは経費の領収書を勘定科目と月別に分けてホチキスで止めておく、という「全手動」な作業だけで許してもらっている。

「確かに面倒だね。でも、冬洋くん(←僕の名前です)はいいんだよ。出世払いでね」

と所長夫妻。面談が済んだ後は一緒に食事をしながら、「本当にいい仕事をしたかったらいい仕入れ(僕の場合は読書を含めた取材活動)をしなくちゃダメだ」などと長期的な視点に立った経営アドバイスをしてくれる。なんだか嬉しくて申し訳ないので、担当の税理士さん(未婚)には今度、素敵な女性を紹介する予定だ。もちろん、売り上げが増えたら手数料もたくさん払いたい。

ITの便利さは僕でも実感している。昔の作家のように「手書き原稿を編集者に手渡しする」なんてことはあり得ない。原稿のファイルをメールに添付するだけで済んでしまう。

でも、生産性を向上することで現在の大切な人間関係を断ち切るのは本末転倒だと思う。freeeを活用することで税理士事務所とのやり取りを減らし、コストを削減しようという動きもある。そんなことをしたら、ただでさえ孤独な事業主がますます孤立してしまうだろう。

無駄に思える仕事でつながっている人間関係もある。そのすべてが必要だとは言わないが、何でもITで効率化・自動化しようとする人に本当の意味での「クリエーティブな仕事や顧客開拓」ができるとは思わない。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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