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「夢かなノート」よりも「偶然を運命に変える力」のほうが有益だ

大宮冬洋フリーライター

「夢かなノート」という言葉を初めて聞いた。筆者に教えてくれた30代の女性によれば、一部の女性誌で提唱されている目標達成術らしい。仕事や恋愛に関する「夢」を短・中・長期に分けて書き出して可視化することで、その実現に近づくことができるという。ビジネス誌が毎年のように特集する手帳術に似ている。

「でも、私には向いていないかもしれません。例えば、理想の結婚相手に求めるものを100個ぐらい書いてみたのですが、書けば書くほど『すべて当てはまる男性なんて周りにいないし、いたとしてもすでに結婚している』と気づいてしまいました(笑)。実際に好きになる人は、理想のタイプとはかけ離れていることも少なくありません。私は流されやすいタイプなので、何か言われるたびに揺れ動いてしまいます。『夢かなノート』もとりあえずやってみたくなり、やってみて挫折しました」

筆者も目標を掲げたり箴言を手帳に書いたりすることが好きなので、この女性の挫折話は笑えないどころか共感する。しかし、彼女と話していて「流されやすいタイプ」であることを卑下する必要はないと感じた。

夢の達成は「自己実現」とも言い換えられるが、その夢は本当に自分自身から湧き出したものだろうか。多くの場合、それは他の人の夢や期待を無意識のうちに体内に取り込んでいるに過ぎない。よく実例に出されるプロスポーツ選手にしても、たまたまスポーツ好きの家庭で育ったことで「僕の夢は野球選手になること」などと強く思い込むのだろう。

重要なのは夢を書き出すことではない。偶然と思い込みに過ぎないものを夢や運命だと信じて、目立たない努力を地道に続けることだ。スポーツ選手を参考にするならば、壮大な目標ではなく、長年にわたる日々の食事制限やトレーニングのほうに注目するべきだと思う。

恋愛や結婚相手との出会いも同じだ。「理想の相手を設定して探す」ことよりも「身近にいる人を好きになって結婚し、不満があっても折り合いをつけながら楽しく暮らす」ことのほうがずっと困難かつリアルな課題である。

結婚相手とたまには衝突し、流されたり流したりしながら、2人にとって快適な共同生活を少しずつ作っていく。独身時代に思い描いていた結婚生活とはかけ離れたものでありながら、「自分はこういう暮らしを求めていたのだ」と運命を感じるだろう。おそらく思い込みに過ぎないのだけれど、確かな幸せの実感がある。それは夢の達成ではなく、毎日の工夫と努力の成果なのだ。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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