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男気をはき違えた西岡の減俸志願

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:ロイター/アフロ)

今季故障で不本意な成績に終わった阪神の西岡剛が、球団が想定していたダウンを超える減俸を自ら申し入れたという。こういう行為は慎むべきだと思う。

一部スポーツ紙が伝えるところによると、右ひじ痛で50試合のみの出場に終わった今季年俸1億8000万円の西岡に対し、球団は野球協約で規定されている減俸上限(1億円以上の場合は40%)となる7200万円ダウンの1億800万円を提示するつもりでいたが、彼の申し出はそれを上回っており、「一軍最低年俸の1500万円でもよい」と伝えたという。

はっきり言って、これは感心できない。

西岡自身は期待を裏切った埋め合わせをしたかったのかもしれないが、これは選手全体の利益の観点からは悪しき前例となる。今後とも、負傷で期待に応えられなかった選手が、同様な申し出をしないと立場が悪くなるようなケースが発生しないとも言い切れないからだ。

全盛期を過ぎたとはいえ、西岡はまだプロ野球界のスターだ。彼のような立場の選手は、低年俸の若い選手たちへの影響をきちんと考慮すべきだ。ある意味では、2013年のオフにポスティング経由でメジャー移籍を控えた当時楽天の田中将大が、お世話になった球団への恩返しとして球場の設備充実のための寄付を申し出て、MLB側からコンプライアンスの観点からきつく戒められたことがあったが、このことと後進への悪しき影響という点では同様だ。

また、経理的には西岡の申し出た追加減俸は、直接の利害関係にある球団への贈与行為とも取れなくもない。この点でも問題ありとすべきだろう。本当に年俸を返上したいのなら、球団からは受け取り、慈善事業へ寄付をすれば良い。

西岡はツインズのマイナー所属の2012年オフにも、総額900万ドルを超える3年契約の残1年の返上を申し入れた。この時は、アメリカで残契約を受け取りマイナーで燻り続けるよりも、NPBに復帰し活躍の場を得たほうが良いとの判断に基づくものであっが、現地の一部のメディアやファンはこれを問題視した。「複数年契約を結んだ選手が期待外れに終わるリスクを常に球団は負っているものだ。活躍できなかったからと言って、残りの契約(年俸)を放棄するのは契約社会のモラルに反する」というのだ。

今回の西岡の言動を、NPB選手会は戒めるべきだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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