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ナバーロ逮捕でロッテ球団は謝る必要なし

豊浦彰太郎Baseball Writer
伊東監督は「残念」そうだったが、むしろこちらの態度が正しい(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

ロッテのヤマイコ・ナバーロが拳銃の実弾1発をバッグに隠し持っていたとして現行犯逮捕されたことを受け、22日にロッテの山室晋也球団社長が会見を開き謝罪した。多くの憤慨したファンはこの謝罪会見を当然のことと受け取ったと思う。でも、ぼくは違和感を禁じ得なかった。

われわれは、何かあったら「取り敢えず謝る」文化の中で生きている。謝罪することはそこから先の外部からの攻撃を緩和する効果をもたらすことを、われわれは遺伝子的に知っている。これが、謝罪すると非を認めたとして裁判等で徹底的に疲れ不利をこうむる欧米文化との違いだ。したがって、ロッテ球団も「取り敢えずアタマ下げとけ」となる。だから、不倫をスッパ抜かれた大御所芸人もメディアを前に謝罪することになる。芸能界で働く者はこれもマーケティング活動なのかもしれないが、彼が謝るべきは家族のみではないか。

話をナバーロに戻す。本件はナバーロ自身の個人的な過ちであり、法規的道義的責任も100%彼に在る。ナバーロと同じドミニカ共和国出身の選手が「母国では拳銃の携帯すら一般的」と彼を擁護したようだが、まったく言い訳になっていない。

球団にも改善すべき点があったのは事実だ。彼らの母国と日本との、武器の携帯に関する社会的認識の決定的な差も入団に際する「異文化トレーニング」で徹底すべきだったと思う。しかし、それはあくまでビジネス面での要改善点であり、非ではない。プロ野球選手は個人事業主であり、球団は彼らの教育まで責任を負っていない。本件に関し、球団が表明すべきはまずは遺憾の意だが、次は再発を防ぐための対策の立案とファンへの表明である。「取り敢えず謝っとく」ことを完全に否定するものではないが、得てして「取り敢えず謝ったヤカラ」はその後の責任の所在や対策の実施もウヤムヤにし、フェードアウトを狙いがちだから注意が必要だ。

このスキャンダルでちょっぴり救われた点もあった。コンプライアンスの世の中だから当然かもしれないが、少なくとも「不良ガイジンの蛮行」や「ガイジン選手問題」として捉えた報道は目に付かなかったことだ。これはプロ野球選手の起こした犯罪であり、ガイジン選手による事件ではない。日本人の選手や元選手が賭博行為や薬物犯罪を起こしているのが今のプロ野球界だ。メディアが不祥事を起こすのはガイジンという先入観にとらわれてはいなかったのを確認できたのは、不幸中の幸いだった。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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