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「眠れる大器」中日 高橋周平は遂に覚醒したのか?セイバー指標で検証する

豊浦彰太郎Baseball Writer
ビシエドや高橋の活躍もあり、ドラゴンズはここまで健闘している(写真:アフロ)

もうじき4月が終わる。大きな期待を掛けられながらもここ数年伸び悩んでいた中日の高橋周平が、開幕からここまでは上々の滑り出しだ。4月29日が終了した時点で全27試合に出場し、打率.282、3本塁打、13打点。ここ5試合17打数3安打で、打率は3割台から少々下げたが、現在首位巨人に1.5差と健闘しているチームの躍進に貢献していると言えるだろう。果たして、眠れる大器が本格的に覚醒したと言えるのか?セイバー指標から検証してみたい。

まずは近年一般的になってきたOPSだ。出塁率.357&長打率.456で.813。これはセ・リーグ規定打席以上で、堂々第9位だ。

しかし、心配なネタもある。それはBABIPで、.361(リーグ5位)と相当高い。この指標は、本塁打と三振を除く打率だ。背後には、本塁打以外の打球が安打になるか凡打になるかは究極的には運の問題で、打球を前に飛ばしている限りは本塁打を分母、分子の両方から除外すると概ね3割前後になる、という理論がある。逆に言えば、いかに高打率でもBABIPが高ければそれは幸運に恵まれたに過ぎない可能性があることを示唆している(逆もまた然り)。

次は、打者の本質を見極めるに有効な四球率や三振率を見て行こう。ここまで前者(高い方が選球眼に優れると言える)は8.7%と平均的で、後者(当然、低い方が良い)は23.5%とそろそろ危険水域の高さだ。これは、打率.208、OPS.624と不振を極めた前年のそれぞれ9.4%、24.6%と大差がない。これらの指標は、打率などに比べると偶然に左右され難いとされており、まだ開幕後せいぜい1ケ月を経ただけでサンプル数が少ない段階でも比較的信頼が置けるので、やや心配だ。見方によっては、打者としての本質に変化(進化)は見て取れないとも言える。

もっともポジティブな材料もある。それはISO(Isolated Power)だ。これは、「長打率-打率」で算出される。より一般的な長打率は、「塁打数÷打数」で導き出すため短打を積み重ねてもそれなりに高くなる。それに対しISOでは純粋な長打力を推し量ることができる。そしてこの数値は.175(リーグ10位)と中々のものだ。前年の.130と比較しても明確な伸びを見せている。

以上を総括すると、少なくともセイバーメトリクスの観点からは「ついに開花」と太鼓判を捺すのは尚早だ。もうしばらく状況を見守る必要がありそうだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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