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大谷翔平「新労使協定により契約条件が抑制されてもメジャーへ」は美談か?

豊浦彰太郎Baseball Writer
渡米を2年遅らせることのメリットとリスクはもっと議論されて良い。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

MLBの新労使協定の発効により、大谷翔平が来季オフにポスティング移籍を図ると、主としてその若さゆえ、契約条件が理不尽なまでに抑制されることが話題になっている。

しかし、それでも大谷自身は決意にぶれがないようで、「カネより夢」を重視するとしてファンの間での大谷株が一層上昇したように思える。

しかし、このことでいくつか気になることがある。

まずは、日本ハムがあまりに早くポスティング移籍容認の発言をしたことだ。

このオフ、新労使協定がスタートする。加えて、現行のポスティング制度がこのオフ限りで失効し、来オフは(無事締結されるなら)新制度となる。この2つのスキームの変更は、大谷をより有利に釣り上げようとするMLBによっては格好のチャンスなのだ。

新協定では、海外FAの契約制限の対象となる年齢がこれまでの23歳未満から25歳未満に引き上げられてしまった。これが大谷イジメだったかどうかは定かではないが、その可能性は完全には排除できない。ポスティング制度も、日本ハムが移籍を容認することを明らかにしている以上、アチラは相当強気に交渉してくるのは間違いない。

日本ハムは安易に手の内を明らかにしすぎたと思う。

日本では、選手も球団もポスティングを「夢を叶えるツール」と捉えすぎていると思う。これはあくまでビジネスだ。

また、栗山監督が「大谷にとってカネは問題にならないでしょう」と発言したことも感心しない。

このこと自体は事実かもしれないし、栗山監督に何ら悪気はなかったと思うが、結果的にこれは大谷よりも球団の利益を優先した発言になっている。

本来なら、今回の労使協定変更により大谷の移籍を彼が25歳となるもう2年先まで見送ることのプロコンが真剣に議論されるべきである。そうなっていないということは、大谷がまだ純粋な野球人であり、社会人としては未成熟であることを物語っている。かつ彼の周囲には大きな影響力を及ぼす代理人がいないということだ。言い換えれば、NPBには代理人業にとてつもないビジネスチャンスが残されている(それを有効とさせない規約が存在しているのだが)。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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