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また同じ情報? それでも作られる情報番組の見せるための“工夫”

てれびのスキマライター。テレビっ子
『日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』毎週日曜放送

いま、テレビのゴールデンタイムには「情報番組」があふれています。

今年4月の改編期だけでも『ソレダメ!~あなたの常識は非常識!?~』(テレビ東京)、『日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』(テレビ朝日)、『この差って何ですか?』、『世にも不思議なランキングなんで?なんで?なんで?』、『林先生が驚く 初耳学!』(以上、TBS)などが始まりました。

これらの番組で分かるように、特に豆知識的な情報を扱うバラエティが全盛です。

紙パック飲料の一例
紙パック飲料の一例

たとえば、画像のような紙パック飲料。これをコップなどに注ぐとき、注ぎ口は下に向けるのが普通ですが、これは間違い。それでは液体が飛び散りやすいのです。正しいやり方は、注ぎ口を上に向けるというのです。

このような豆知識が紹介される「役に立つ」番組です。

ちなみにこの紙パック飲料の注ぎ口に関する情報は、『ソレダメ!~あなたの常識は非常識!?~』と『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』でまったく同じ内容が紹介されていました。

放送日も近かったので情報元が同じだっただけで真似したわけではないでしょう。視聴者に「へえ」と思わせる情報は限られています。これだけ似たタイプの番組があるなか、カブらないようにするのは至難の業。

だったら、カブってもいいように情報そのものの部分で工夫するしかありません。

■『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』の工夫

たとえば、前述の情報がカブってしまった『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』。

まず、司会のくりぃむしちゅー・上田が「1割しか見るべきところがない」というように情報に関係ない部分のVTRの作りがふざけています。これは笑いを求める視聴者にはありがたい部分ですが、情報を求める視聴者からは邪魔かもしれません。

番組最大の特徴は、扱う情報を番組タイトルにも謳っているように「日本人の3割しか知らないこと」に限定したことです。

これは扱う情報を狭めることにもなりますが、逆に言えば「日本人の3割は知っている」こと。だから、「知っている」情報を扱うことのエクスキューズになっているのです。

この番組のコンセプトは「日本人の3割しか知らない」情報を共有し、それを知ってもらうことで「優越感」に浸ってもらおうというもの。

この「優越感」というのがこの番組の肝です。もちろん知らない情報が流れてくれば、それを知ることで、番組を見ていない人に対して優越感を感じられます。しかし、逆に既に「知っている」情報が番組から流れてきても「3割しか知らない知識を自分は知っていたんだ」と優越感に浸れるのです。知っている情報、知らない情報、どちらが出てきても「優越感」を得られる工夫が「日本人の3割しか知らないこと」という言葉なのです。

だから、それこそ番組の3割程度が、よく使われるような情報とカブってしまっても問題なく見ることができるのです。

また、これを強調するようにスタジオの10人のパネラーが出てくる情報に対し、知っている場合は「ハナタカ」の札を挙げるというバラエティ的要素も飽きさせない工夫です。

10人にしていることで実際に「3割」なのか、という実証にもなり、また「知ったかぶり」をして「ハナタカ」を挙げる人も少なくありません。その「知ったかぶり」を上田がツッコミ、パネラーが恥ずかしそうにする姿にも「優越感」は潜んでいます。

■『林先生が驚く 初耳学!』の工夫

もうひとつ情報番組の工夫の例を挙げるなら『林先生が驚く 初耳学!』です。

『林先生が驚く 初耳学!』毎週日曜放送
『林先生が驚く 初耳学!』毎週日曜放送

これはタイトル通り予備校講師の林修が司会の番組。紹介された情報が豊富な知識を持つ「賢人」林修でも「初耳」なら「初耳学」に認定されるという設定です。「初耳学」に認定されると、その情報を詳しく解説したVTRが流れますが、林が知っている場合はそのVTRはお蔵入りに。林自身の“授業”で解説されることになります。

この林先生が想像以上の難敵。予備校での専門は現代国語ですが、それだけには収まらない豊富な知識でなかなか「初耳学」に認定される情報はあらわれません。それどころか、その情報に対し、「ご存じない?」と言い放ち、ドヤ顔でさらに深い知識をひけらかし、付け加えていくのです。

もちろん「へえ」と勉強になりますが、それ以上に、このドヤ顔、かなりイラッとします。

しかし、それは番組の思惑通りでしょう。

林先生にイラッとする分、知らず知らずのうちに、情報をプレゼンする人、ひいては番組そのものを“応援”するような感覚に陥っていくのです。

そんな思いで見ていると、ようやく「初耳学」に認定された情報が出ると、大きな爽快感を得られるのです。

いつしか、情報を得るよりも、その爽快感こそを求めるようになってきます。

そうして、『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』同様、「情報」そのものよりも別の部分で番組に釘付けになっていくのです。

情報番組でもっとも優先させるべきは、目新しい情報ではありません。

どのように見せるか、という工夫こそが大切なのです。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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