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夜空を彩る「北九州アイアンツリー」。工場夜景、小倉の見どころは?

上田真之介ライター/エディター
ライトアップされた「北九州アイアンツリー」。色は短い間隔で切り替わっていく

北九州市では工場群が観光資源として注目を浴びている。官営八幡製鉄所の1901年の火入れを端緒に100年を超す歴史がある北九州の工場史。高度経済成長期は公害にも苦しんだが、官民一体となって克服。工場群は北九州市民からみればありふれた平穏な日常風景となり、公害を口にすることはなくなった。そして現代。「明治日本の産業革命遺産」としての八幡製鉄所関連施設の世界遺産登録に向けた動きが起きていたり、にわかに広まった工場夜景ブームにも乗って観光資源化の取り組みが進んでいる。

本稿ではタイトルの通り、工場夜景、とりわけ「北九州アイアンツリー」に的を絞って、いくつかのスポットを紹介していく。

八幡製鉄所再編による小倉第2高炉休止(西日本新聞関連記事)のため、アイアンツリーは解体されることになりました。記事はライトアップを実施していた時期に掲載したものです。内容にご注意ください。

2013年からライトアップ

「工場夜景」そのものは北九州市でも数年前には流行り始めていた。昨年(2013年)は北九州市で工場夜景サミットが開かれ、私自身それを売りだそうとするまちおこし団体のイベントも取材したことがある。ただ、あまりにも見慣れている景色であるがゆえに、どれほどの集客力があるのかは「半信半疑」の部分もあった。ところが少し注意してアンテナを張ってみると意外にも工場夜景ファンが多いことに気づかされる。小倉駅に近いあさの汐風公園を歩いていると「工場を撮りたいんです」と言って道案内を求められたのもつい最近の話。工場夜景クルーズのパンフレットは旅行代理店の目立つところに置かれている。

小倉北区末広の海岸から撮影した北九州アイアンツリー
小倉北区末広の海岸から撮影した北九州アイアンツリー

話が逸れるが、私は一般紙の半分サイズ「タブロイド判」の媒体に携わることが多く、仕事で首都圏や他都市を訪れるとつい当地の同サイズのフリーペーパーを手にしたり、九州では売られていない「サンケイエクスプレス」やサッカー専門紙「エル・ゴラッソ」(いずれもタブロイド判)を買ったりしている。

先月7月もサッカー取材で東京に行き、いつものようにキオスクでそれらを購入。移動中に開いていたところ、「サンケイエクスプレス」の特集面から見慣れた景色が飛び込んできた。「北九州アイアンツリー 鉄鋼の街象徴する『大木』」(同紙7月14日付)という見出しの3面にわたる写真中心の記事だ。工場群とにょきにょきと伸びた煙突。手前にはいつもの生活があって釣りに興じている子どもたちが写っている。対比がおもしろい。

北九州アイアンツリーというのは新日鐵住金八幡製鉄所小倉地区(旧称=住友金属小倉製鉄所)にある高さ205メートルの煙突のこと。工場夜景サミットを控えた2013年10月にその愛称が付けられ、現在でも毎週末、午後10時ころまでライトアップされている。

撮影スポットを探し歩く

首都圏や関西でしか販売されていない新聞での特集記事は大いに私の心を揺さぶった。いち観光客の目線で眺めてみたい――。地図を見てポイントを絞りつつ、小倉北区周辺を歩いて回った。もちろん本職はカメラマンではないので「どうだ!」というようなものは撮れなかったが、フィッシュアイレンズの効果もあってかなり見たままの印象の近い写真を撮影できた。参考にして見物に訪れていただければ幸いだ。

1.富野台 小倉中心部と工場を一望

アイアンツリーの後背にも広大な工場群
アイアンツリーの後背にも広大な工場群

こちらは小倉北区富野台にある富野台北公園周辺から撮影したもの。アイアンツリーだけでなく小倉都心部の夜景や鹿児島本線を行き交う電車も見渡せる。遠くに関門橋も臨めるスポットだ。ただ、周辺は住宅街であり駐車場もないため、近隣の迷惑にならないよう注意が必要。車で乗り付けたり、騒いだりするのは避け、公共交通機関を使って訪れ静かに眺めるようにしよう。

その公共交通機関だが、西鉄バスの「富野小学校前」から徒歩10分ほど。便数は多いが、バス停から富野台北公園までは道中にかなりの激坂区間があるので、その点だけは用心を。

周辺地図- Yahoo!地図

アクセス:小倉駅バスセンター5のりばから急行系統「恒見営業所」行きまたは小倉駅入口から170番、175番の田野浦行き、92番の大谷池行きで「富野小学校前」下車(九州のバス時刻表)。徒歩10分。

駐車場:なし。周辺にはコインパーキングもない。

2.浅野地区 小倉駅至近の好スポット

右下には松山行きのフェリーが見える
右下には松山行きのフェリーが見える

小倉駅のすぐ北側でも工場群を眺めることができる。あさの汐風公園や西日本総合展示場周辺からは松山観光港行きのフェリー越しにアイアンツリーを眺望。他の撮影スポットに比べてアイアンツリーの足もとが隠れてしまうのは残念だが、市街地と工場が隣接する北九州市の特徴を感じられるエリアだ。あちらこちらを巡って回る時間がなくても楽しめるので、出張ついでに眺めてみてもいいかもしれない。

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アクセス:小倉駅新幹線口(北口)からすぐ。

駐車場:有料駐車場やコインパーキングが小倉駅新幹線口周辺にある。

3.末広地区 海とのコントラストが際立つ最適地

ほとんど障害となる構造物がなく水面にも映える
ほとんど障害となる構造物がなく水面にも映える

小倉駅から歩いて20分ほど、ちょっとした散歩気分で訪れることができる。海の向こうにアイアンツリーが見え、途中を遮るものはない。配管の造形が美しい工場群と海とのコントラストが際立ち、製鉄や海運で栄えてきた北九州らしさをも感じられる場所だ。歩道があり徒歩で向かっても安全な道沿いだが、夜間は街灯が少ないので懐中電灯やライトの持続点灯が可能なスマートフォンを持っていると安心。

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アクセス:小倉駅新幹線口(北口)から徒歩20分。

駐車場:なし。ただし周囲の工場などが稼働していない週末は路肩に駐めている車もある。路上駐車を勧めるわけではないが、自己責任で。

4.延命寺臨海公園 アクセスの良いスポット

プレジャーボートが係留されている泊地を隔てて工場群が広がる
プレジャーボートが係留されている泊地を隔てて工場群が広がる

末広海岸からは少し遠ざかるが、こちらも海の向こう側にアイアンツリーが浮かび上がる。富野台や末広海岸付近に比べてアクセスしやすいのもポイントで、路線バスを使ってもバス停からフラットな道を5分ほど歩けば到着。延命寺臨海公園には駐車場やトイレもあるので気軽に行ける場所と言えそうだ。

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アクセス:小倉駅入口から「6」「70」「74」「75」などの門司港レトロ・田野浦方面行きで「赤坂」下車(九州のバス時刻表)。徒歩5分。※ちなみに「延命寺臨海公園前」のバス停もあるが運行時間が限られているため便数が多い「赤坂」の利用が便利。

駐車場:あり。

5.望玄荘展望台 小倉から若松まで遠望

煙突が林立する工場地帯。左端には風車群も見える(2014年2月撮影)
煙突が林立する工場地帯。左端には風車群も見える(2014年2月撮影)

展望台からは小倉都心部を一望できる。望遠レンズを使えば新幹線や都市高速、若戸大橋なども収めることも可能で、工場群ももちろん眺められる。日没時間帯はカメラを持って本格的な撮影をしている人も見かける夕焼けの美しいスポットだ。

周辺地図- Yahoo!地図

アクセス:小倉駅入口バス停から92番「大谷池」行きで終点下車。徒歩約15分(上り坂が少しきつい)。バスは1時間に3本程度はあり、大谷池からの終バスも22時台なので夜景撮影しても余裕がある(九州のバス時刻表)。

駐車場:あり。付近はハイカーも多いので通行には注意を。

番外編.藍島航路

船がもっとも接近できる
船がもっとも接近できる

アイアンツリーを含め工場群がもっともよく見えるのは、遮るものがない海上から。定期船では小倉駅から徒歩5分のところにある小倉港と馬島・藍島を結ぶ航路からの眺めが良い。船は1日3~4往復。ただし夜間にかかる時間帯の運航はない。冬至に近い時期であれば暮れなずむ空と工場群のコントラストを楽しめるが、昼間でも間近に迫る工場のダイナミズムを感じるのもおすすめ。アイアンツリーのそばを離れてもプラントや高炉が続く。北九州の海岸線のほとんどが工場だということに気づかされ、今なお日本の重厚長大産業の一角を担う都市であることを深く印象づけられる。馬島までなら片道わずかに280円。日本の原動力を感じる贅沢なクルーズだ。

藍島航路時刻表- 北九州市

アクセス:小倉駅新幹線口(北口)から徒歩5分ほどで渡船場に至る。

駐車場:小倉港の渡船場そばにコインパーキングがある。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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