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プイーグ、フェルナンデスに続くMLBのキューバ旋風はシカゴ発。アブレイユを筆頭にチームメイトも絶好調

宇根夏樹ベースボール・ライター

2013年はキューバ出身のルーキーが目についた。新人王投票では、ホゼ・フェルナンデス(マイアミ・マーリンズ)とヤシエル・プイーグ(ロサンゼルス・ドジャース)がナ・リーグの1、2位、ホゼ・イグレシアス(デトロイト・タイガース)はア・リーグの2位に入った。

彼らに続くかのように、今シーズンも新たなキューバ旋風が巻き起こっている。ホゼ・アブレイユ(シカゴ・ホワイトソックス)が「キューバのバリー・ボンズ」と呼ばれていた通りの打棒を発揮している。4月を終えての10本塁打と32打点はリーグ・トップで、どちらも4月末時点の新人最多記録を塗り替えた。これまで、本塁打はケント・ハーベック(1982年/ミネソタ・ツインズ)、カルロス・デルガド(1994年/トロント・ブルージェイズ)、アルバート・プーホルス(2001年/セントルイス・カーディナルス/現ロサンゼルス・エンジェルス)の8本、打点はプーホルスの27打点が最多だった。

アブレイユは派手に新記録を樹立した。4月25日の試合で3回にシーズン8本目の本塁打を放つと、9回にサヨナラ・グランドスラムを叩き込み、同時にプーホルスと並ぶ27打点に到達。その2日後に本塁打とタイムリーによって4打点を挙げた。

アブレイユの陰に隠れているが、ホワイトソックスでは他のキューバンもよく打っている。4月末の時点でア・リーグの打率トップ2を占めているのは、ホワイトソックスのアレクシー・ラミレス(.351)とダヤン・ビシエド(.348)だ。アレクシーは開幕17試合連続安打の球団新記録を打ち立てるとともに、40安打を放って4月末時点の球団最多安打も更新した。ビシエドはリーグ最多タイとなる11本の二塁打を打っている。

もしかしたら、アブレイユの加入がアレクシーとビシエドに刺激を与えたのかもしれない。2人とも2013年は精彩を欠き、アレクシーは前年に続いてOPS.700未満に終わり、ビシエドは2012年に25本塁打とブレイクしかけたものの、そこから11本も減らした。

一方、アレクシーとビシエドの存在がアブレイユに好影響を与えていることは想像に難くない。アブレイユはホワイトソックスと契約した理由に、キューバ出身の選手たちがいてサポートを受けられることを挙げていた。ホワイトソックスには3人の他にもキューバンがいる。開幕2戦目にメジャーデビューした控え捕手のエイドリアン・ニエトは、幼少時に家族とともにキューバからアメリカへやってきた。

シカゴのサウス・サイドから発生したキューバン旋風は、アブレイユ一人にとどまらず、3人あるいは4人の相乗効果によって、これからも勢いを保っていきそうな気配だ。4月5日の試合では4人のキューバンが先発出場。これは、1969年4月16日8日(訂正:2014年5月3日)にクリーブランド・インディアンスが記録して以来のことだった。ホワイトソックスのキューバン4人がスターティング・ラインナップに揃い踏みした試合は、4月末の時点で5度を数える。

ちなみに、2013年の新人王投票で2位以内に入った3人のキューバンのうち、イグレシアスは両脛の疲労骨折でシーズン全休の可能性が高いが、フェルナンデスは前年以上に快投していて、プイーグも好成績を残している。ただ、2013年10月にドジャースと契約したアレックス・ゲレーロは、オーストラリアで行われた開幕シリーズを終えた後はAAAでプレーしており、プイーグとキューバン・デュオを組むには至っていない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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