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試合時間を短縮するための新ルールが施行される。4年ぶりの平均2時間台はなるか

宇根夏樹ベースボール・ライター

2月20日、メジャーリーグ機構と選手会は、試合時間の短縮を目的とするルールの施行を発表した。内容は以下のとおりだ。

バッター・ボックスにいる打者は、少なくとも一方の足をボックス内にとどめておかなければならない。空振りやファウル、暴投や捕逸、タイムがかかった時など、いくつかの場合はこれに当てはまらない。ルール6.02(d)。

球場にタイマーを設置して、イニング間と投手交代時における制限時間を定める。テレビの中継放送がローカルの場合は2分25秒、全米ネットの場合は2分45秒。また、打者を紹介する場内アナウンスは残り40秒まで、打者のウォークアップ・ミュージック(登場曲)をかけるのは残り40秒から25秒まで、投手のマウンドでの投球練習は残り30秒まで、打者がバッター・ボックスに入るのは残り20秒から5秒まで、投手がイニング最初の投球を始めるのは残り20秒から0秒までだ。守備につく投手あるいは捕手が、直前の攻撃が終わった時点で打者または走者だった場合など、例外もある。

新ルールはスプリング・トレーニングのエキシビション・ゲームから適用され、5月の試合からは違反者に罰金が科される。その罰金は慈善活動への寄付に用いられる。

もう一つ、インスタント・リプレーに関しての変更もある。監督はフィールドに出ることなく、ダグアウトから口頭あるいは身振りで審判にチャレンジを要求する。イニング終了のプレーに対するチャレンジの場合、監督は速やかにダグアウトから出て要求する。守備についているチームの選手をフィールドにとどめておくためだ。

時間短縮とは別の話だが、以下の点もインスタント・リプレーは変わる。

  • タッチアップした走者の離塁のタイミングについてのチャレンジも要求できるようになる。
  • チャレンジが成功した(判定が覆った)場合、その回数は減らない(従来のルールでは、回数が減らないのは最初のチャレンジに成功した場合のみで、1試合にチャレンジできる権利は最多でも2度だった)。
  • 本塁上のプレーがルール7.13「ホーム・プレートでの衝突」に該当するかどうかについて、判定に異議を唱える場合も、監督はチャレンジの権利を行使する必要がある(試合が7イニング目以降に入り、監督がすでに権利を失っている場合は、主審の判断によってインスタント・リプレーを使用することもある)。
  • ポストシーズン、レギュラーシーズンのタイブレイカー・ゲーム(ワンゲーム・プレーオフなど)、オールスター・ゲームでは、各監督がチャレンジできる権利を2度ずつ持つ。

時間短縮に関しては、昨年秋のアリゾナ・フォール・リーグで試みたルールのうち、今回は導入を見送ったものもある(改変を加えて導入したものもある)。無投球の敬遠四球やピッチ・クロックなどがそうだ。前者は、相手打者を敬遠して歩かせる際に、監督が指を4本立てて審判に合図を送り、投手は投げない。後者は、投手がボールを手にしてから、無走者時は12秒以内、有走者時は20秒以内に投げない場合、審判が1ボールを宣告する。6球場のうち1球場にタイマーを設置し、その球場に限ってこのルールを適用した。AAとAAAでは、2015年よりこのピッチ・クロックを採用する。

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さて、新ルールによって試合時間は短くなるだろうか。近年、試合時間は伸びつつある。ベースボール・プロスペクタスのデータによれば、過去3年の1試合平均時間は、2012年が3.00時間(3時間0分)、2013年が3.07時間(3時間4分)、2014年は3.13時間(3時間8分)だった。1950年から2011年までの間に3時間台に乗ったシーズンは、3.02時間(3時間1分)の2000年しかなかった(1949年以前のデータはない)。

個人的には、だらだらと長い試合は好きではないので、時間短縮は望ましいことだと思う。ただ、ボストン・レッドソックスで活躍したノマー・ガルシアパーラが、打席でバッティング・グラブのベルクロを何度も直していたのを覚えている人もいるだろう。クリーブランド・インディアンスやシアトル・マリナーズなどで監督を務めたマイク・ハーグローブは選手時代、打席で行う動作の多さとそれにかかる時間から「ヒューマン・レイン・ディレイ(人間雨天中断)」と呼ばれていた。ここまでくれば、それらは個性であり、観る者を愉しませてくれる。時間短縮=画一化にならないことを願いたい。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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