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黒田博樹がメジャーリーグからいなくなったことを、あのスラッガーは喜んでいる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター

黒田博樹(広島東洋カープ)はメジャーリーグの7年間で212試合に投げ、667人の打者と計5444打席――投手であろうと、バットを持って打席に立っていれば打者だ――対戦した。15打席以上の対戦は114人、10打席以上は189人。OPS(出塁率+長打率)ベスト5とワースト5には、表のような選手が名を連ねた。

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黒田を得意とした打者はビッグネームが多い。マット・ジョイス(ロサンゼルス・エンジェルス)とマイケル・モース(マイアミ・マーリンズ)も準レギュラークラスだ。しかし、アンディ・ラローシュ(シカゴ・ホワイトソックス)だけは別。念のために言っておくが、アダム・ラローシュ(ホワイトソックス)ではなく、その弟だ。現在はどちらも同じチームにいるので間違えやすい。兄弟でも2人のキャリアには雲泥の差があり、このオフ、兄は2年2500万ドルでホワイトソックスへ入団したが、弟はマイナーリーグ契約に過ぎない。

対黒田は、兄のアダムが打率.286(7打数2安打)&OPS.716、0本塁打なのに対し、弟のアンディは打率.600(10打数6安打)&OPS1.636、1本塁打とよく打っているものの、これは2008~10年の成績。そもそも、アンディは過去3年間のメジャーリーグ出場が2013年の1試合(4打数無安打)しかなく、AAAでも際立った成績ではなかった。得意とする黒田がいなくなったのがどうこうといったレベルの話ではない。

兄のホワイトソックス入団は昨年11月、弟は今年1月だ。どの球団からも契約の申し出がなかった弟が、兄を通じてホワイトソックスに泣きつき、マイナー契約ながら何とかスプリング・トレーニングへの招待を手にした……そんな経緯さえ想像される(よしんばこれが事実だとしても、そう認める当事者はいないだろうが)。

一方、黒田を苦手とした打者、すなわち黒田のカモには、スラッガーが3人いる。表の10人のうち、ジョシュ・ドーナルソン(日本ではドナルドソンと表記されることが多い/トロント・ブルージェイズ)、ジャスティン・アップトン(サンディエゴ・パドレス)、ネルソン・クルーズ(シアトル・マリナーズ)はいずれも、過去2年間に50本塁打以上を放っている。対黒田のOPSベスト5でこの条件に当てはまるのは、デビッド・オティーズ(ボストン・レッドソックス)しかいない。

過去3年間、アップトンは黒田と対戦していないが、ドーナルソンとクルーズは違う。2012~14年の対黒田は、ドーナルソンが打率.133(15打数2安打)&OPS.267、クルーズは打率.120(25打数3安打)&OPS.305だった。

もし、黒田がニューヨーク・ヤンキースに残留していれば……。クルーズはヤンキースと同じア・リーグ東地区のボルティモア・オリオールズからア・リーグ西地区へ移ったので対戦機会は少なくなるが、逆に、ドーナルソンはア・リーグ西地区のオークランド・アスレティックスからア・リーグ東地区へ移籍したため、対戦機会は増えていただろう。ドーナルソンが15打席以上対戦した21投手のなかで、対黒田のOPS.267は最も低い。

ただ、ドーナルソンが2014年に黒田と対戦した2試合はいずれも6月。ドーナルソンはこの月、打率.181(105打数19安打)&OPS.509と調子が悪く、黒田との対戦2試合目は、前日まで27打数無安打のスランプに陥っていた。2012年のドーナルソンがブレイク前だったことも併せて考えると、2015年に黒田との対戦があったとしても、これまでと結果は違っていたかもしれない。

2015年のブルージェイズには、過去2年間に50本塁打以上を放っている打者18人のうち、3人が揃った。エドウィン・エンカーナシオン(70本塁打/2位)、ホゼ・バティスタ(63本塁打/7位タイ)、そして、ドーナルソン(53本塁打/18位)。ブルージェイズの他に、3人も擁しているチームは存在しない。ドーナルソンは今シーズン、本拠地の球場が投手有利なオークランド・コロシアム(O.co コロシアム)から打者有利なロジャース・センターへ変わることで、本塁打を増やす可能性もある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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