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オリオールズがリーチをかけているア・リーグ初の記録。達成は来シーズンへ持ち越される可能性も

宇根夏樹ベースボール・ライター

ボルティモア・オリオールズは今シーズン、ア・リーグ初の記録を打ち立てる可能性がある。

ア・リーグの本塁打王は、過去2年ともオリオールズの選手が獲得している。2013年は53本塁打のクリス・デービス、2014年は40本塁打のネルソン・クルーズ(現シアトル・マリナーズ)がリーグ最多だった。

同じチームの異なる選手が2年続けて本塁打王を獲得した例は、1987~88年のオークランド・アスレティックス(マーク・マグワイアホゼ・カンセコ)や1960~61年のニューヨーク・ヤンキース(ミッキー・マントルロジャー・マリス)など、ア・リーグだけでも10度以上を数える。

だが、同じチームの異なる3選手が3年続けて本塁打王を獲得した例は、1961~63年のサンフランシスコ・ジャイアンツ(オーランド・セペダウィリー・メイズウィリー・マッコビー)と1995~97年のコロラド・ロッキーズ(ダンテ・ビシェットアンドレス・ガララーガラリー・ウォーカー)しかない。どちらもナ・リーグのチームだ。

今シーズンのオリオールズで、ア・リーグ初、メジャーリーグ3度目の記録が達成されるとすれば、筆頭候補はアダム・ジョーンズだろう。現在29歳のジョーンズは、昨シーズンの29本塁打を含め、4年続けて25本以上を打っていて、2012年は32本、2013年は33本を記録している。

ジョーンズに次ぐ候補としては、J.J.ハーディよりもマニー・マチャドを挙げたい。ハーディは32歳。シーズン25本塁打以上は3度あり、2011年は30本を放っているものの、昨シーズンは141試合で9本に過ぎなかった。一方、マチャドは22歳。キャリアハイは2013年の14本塁打ながら、この年の二塁打はリーグ最多の51本だった。昨シーズンは82試合で12本塁打を記録している。

ただ、昨シーズンは127試合で26本塁打のデービスが本調子なら、ジョーンズもマチャドも、彼の敵ではない。1988年にケビン・コスナー主演の映画『さよならゲーム』が公開されて以降、「クラッシュ」と呼ばれるデービスは彼一人にとどまらないが、そのなかでもボールをクラッシュするパワーは群を抜く。

デービスは昨年9月、アンフェタミンの陽性反応によって25試合の出場停止処分を受けたが、うち24試合分はすでに消化しており、今シーズンは開幕2戦目から出場できる。また、MLB機構からは、処分の対象となったアデロールという薬ではないものの、ADHD(注意欠如多動性障害)の治療薬として、こちらもアンフェタミンであるバイバンスの摂取を認められた。

デービスが2015年に本塁打王を獲得した場合は、2013~15年に同じチームの異なる3選手が3年続けて本塁打王とはならない。けれども、達成の可能性は来シーズンに持ち越される。2014年のクルーズ、2015年のデービスに続いて、2016年に別のオリオールズの選手が本塁打王になれば、ア・リーグ初の記録となる。

なお、マリナーズへ移ったクルーズは、本拠地がカムデンヤーズからセーフコ・フィールドに変わることで、本塁打は前年より減るに違いない。それでもなお、本塁打王を獲得すれば、異なるチームで2年続けて本塁打王は、1919~20年のベーブ・ルース(ボストン・レッドソックス/ヤンキース)に続いて2人目(ア・リーグとナ・リーグ以外では、1871~72年にナショナル・アソシエーションでリップ・パイクも達成)。マリナーズの選手として本塁打王を獲得するのも、ケン・グリフィーJr.(1994、1997~1999年)に次いで2人目となる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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