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自伝の映画化よりも本人に注目。エンジェルスのハミルトンがコカイン再使用を経てレンジャーズ復帰へ

宇根夏樹ベースボール・ライター

ジョシュ・ハミルトンのトレードが、ほぼ決まったようだ。

2012年のオフにテキサス・レンジャーズからFAとなったハミルトンは、5年1億2500万ドルでロサンゼルス・エンジェルスに入団した(この契約にはトレード拒否権が付帯している)。今回のトレードにより、ハミルトンはエンジェルスからレンジャーズへ復帰する。ハミルトン以外に移籍する選手はおらず、今シーズンを含めて3年8300万ドルが残る契約のうち、レンジャーズが負担するのは1500万ドル程度で、残りはエンジェルスが支払うという。

ハミルトンはレンジャーズでプレーした2008~12年に、平均129.4試合に出場して28.4本塁打を放ち、.305/.363/.549のスラッシュライン(打率/出塁率/長打率)を記録した。2010年にはMVPを受賞。翌年のワールドシリーズでは、第6戦の延長10回表に、優勝を決めたかと思われたホームランを放った。一方、エンジェルスへ移ってからの2年間は、平均120.0試合で15.5本塁打、.255/.316/.426。現在は2月上旬に受けた右肩手術のリハビリを行っていて、復帰は6月上旬になりそうだ。

ハミルトンは2月下旬に、再びコカインに手を出してしまったことを明かした(4月半ばには、この告白とほぼ同時期に離婚を申請していたことも報じられた)。コカインの使用によって出場停止となれば、その間は無給となり、エンジェルスは残りの金額を支払わずに契約を打ち切れる可能性もあったが、調停委員会は処分には当たらないと裁定を下し、メジャーリーグ機構は出場停止を科さないことを開幕直前に発表した。エンジェルスとしては、見返りに得る選手がまったくおらず、契約金額の大部分を負担しても、そのままハミルトンを抱えているよりはマシといったところだろう。

レンジャーズにしても、5月に34歳を迎えるハミルトンが前回の在籍時と同じレベルの選手だとは考えていないはずだ。ハミルトンがまたしてもコカインやアルコールに溺れたり、2014年のように故障で長期欠場するのではないかという不安材料もある。それでも、平均年俸が2700万ドルではなくて500万ドルなら、リスクは少なくて済む。今シーズンの開幕から15試合を終えた時点で、レンジャーズの外野陣は2本塁打しか打っておらず、スラッシュラインは.188/.292/.273と低迷している。ハミルトンがラインナップに加われば、今よりも上向くことは間違いない。

ハミルトンの半生は映画化されることになっている。これは2008年10月に出版された自伝を基にしたもので、1999年にドラフト全体1位で指名されたハミルトンが、マイナーリーグ時代にコカインとアルコールによって球界から2年間離れ、そこからカムバックを遂げるまでのストーリーだ。監督・脚本はケーシー・アフレック。2014年6月には、ジャック・レイナーがハミルトンを演じるだろうと報じられた。けれども、ハミルトンのベースボール・プレーヤーとしてのキャリアはまだ終わっていない。まずは映画よりも――映画も楽しみではあるが、フィールドに帰ってくるハミルトンに注目したい。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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