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全員ルーキーの先発ローテーション。1世紀以上も昔のメジャーリーグ記録に並び、更新も確実

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンソニー・デスクラファーニ(シンシナティ・レッズ)Aug 27, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

9月10日、シンシナティ・レッズの先発投手陣が、113年前に作られたメジャーリーグ記録に並んだ。9月11日には新記録を打ち立てることになりそうだ。

レッズが9月10日の試合後にリリースしたゲーム・ノーツにはこうある。「左投手ジョン・ラムの先発により、レッズはルーキーの先発登板を41試合連続とした。これはルーキーが先発登板した試合のストリーク(連続記録)では、1902年に(セントルイス・)カーディナルスが樹立した史上最長に並ぶ。明日はルーキーの右投手マイケル・ロレンゼンの先発が予定されており、彼が投げれば、レッズは記録を打ち立てる」

ルーキーによる先発登板が41試合も続いている? 俄かには信じ難いので、調べてみたところ……本当だった。

シーズン99試合目の7月29日以降に先発マウンドへ上がった6投手、アンソニー・デスクラファーニデビッド・ホームバーグ、ロレンゼン、ライセル・イグレシアスキーバス・サンプソン、ラムは、全員がルーキーだ。ロレンゼンとイグレシアスは4月、サンプソンは7月、ラムは8月にメジャーデビューした。ホームバーグのメジャーデビューは2013年で、デスクラファーニは2014年だが、2人とも今シーズンのルーキー資格を持つ。現在は、ホームバーグを除く5人でローテーションを組んでいる。

彼らのうち、デスクラファーニ以外の5人は、開幕当初のローテーションには入っていなかった。だが、5月上旬にホーマー・ベイリーがトミー・ジョン手術を受け、ジェイソン・マーキーは6月上旬に解雇。7月下旬にはジョニー・クエイトマイク・リークが、それぞれカンザスシティ・ロイヤルズとサンフランシスコ・ジャイアンツへ移籍した。ラムはクエイトの交換相手の一人だ。レッズは夏を迎える前にペナントレースから脱落しており、こうして、ルーキーだけのローテーションが形成されることになった。

このまま、シーズン最終戦までルーキーの先発登板が続けば、ストリークは64試合に伸びる。その可能性はありそうだ。9月8日にAAAから昇格した3投手のうち、トニー・シングラーニはルーキー資格を持たず、今シーズンはAAAの9登板中6試合、メジャーリーグでは26登板中1試合に先発しているが、現在はブルペンにいる。9月10日の試合でも、ラムに続く2番手として1イニングを投げた。シングラーニの他に、ルーキーではなく、先発登板しそうな投手は見当たらない。

ただ、ルーキーによる先発登板が、来シーズンに持ち越して継続することはないだろう。デスクラファーニ、ロレンゼン、イグレシアス、ホームバーグの4投手は、来シーズンにはルーキーではなくなっている。ルーキー資格を持つのは、前年までの投球回が50イニング、打数は130、25人ロースターの在籍日数は45日を超えていない選手だ。どれか一つでも、通算の数字が上限を上回った時点で、翌年以降のルーキー資格を失う。サンプソンとラムはルーキー資格を維持するかもしれないが、現時点の防御率はともに5点を超えており、来シーズンの開幕投手を務めるとは思えない。また、オフに加入した投手が開幕戦に先発する場合、その投手がルーキーである可能性はほとんどない。

ちなみに、ストリークではなくシーズン最多記録を持っているのは、イライアス・スポーツ・ビューローによると、124試合でルーキーを先発登板させた1998年のフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・マーリンズ)だ。今シーズンのレッズでは、すでにルーキー以外の投手が52試合に先発しているので、ルーキーの先発登板は最多でも110試合にとどまる。1998年のマーリンズは、5先発以上した9投手のうち、ライアン・デンプスターら8人がルーキーだった。残るリバン・ヘルナンデスも、ルーキーではなかったものの23歳と若く、この前年のナ・リーグ新人王投票では、マット・モリスと並び、スコット・ローレンに次ぐ2位に入った。

今シーズンのレッズだけでなく、1902年のカーディナルスも1998年のマーリンズも、大きく負け越した。ルーキーの先発登板が多ければ――負けが込んでしまったためにルーキーを多用する、卵と鶏のような状況も含め――やむを得ない面はあるだろう。もっとも、2012年のオークランド・アスレティックスは、ルーキーの先発登板が101試合ありながらも、リーグ2位の94勝を挙げて地区優勝している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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