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1ケタの背番号をつけた投手たち。今シーズンは「0」と「6」の計3人

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)Sep 12, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

背番号が1ケタという投手は極めて少ない。野手の登板を除くと、今シーズンのメジャーリーグでマウンドに上がったのは、8月が終わった時点では、背番号「0」のアダム・オッタビーノ(コロラド・ロッキーズ)しかいなかった。オッタビーノは5月初旬にトミー・ジョン手術を受け、以降は不在が続いていた。

投手に1ケタの背番号が少ない理由としては、ニューヨーク・ヤンキースが1929年に背番号を採用した時、打順をそのまま背番号にしたため、1ケタは野手がつけるようになったという説がある。ヤンキースは1929年の開幕戦で、打順9番の投手を除く8人が「打順=背番号」というラインナップを組んだ。背番号「9」は控え捕手だ。ヤンキースの開幕戦が雨で流れたことで、ヤンキースよりも2日早く背番号をつけてプレーしたクリーブランド・インディアンスも、3番打者が背番号「5」、5番打者が「3」と入れ替わっていた以外は、ヤンキースと同じだった。

もっとも、この説が100%正しいかどうかはわからない。1930年代の投手には1ケタの背番号が20人以上いて、1940年代は40人を超えていた。当時も多かったとは言えないが、極端に減ったのは1960年代に入ってからだ。もしかすると、エクスパンション(拡張)によって新たな球団がいくつも生まれたことが関係しているのかもしれない。それらの球団は自らの歴史を持たないゆえに、昔の慣習を取り入れたという図式だ。ただ、これでは、歴史ある球団の投手にも1ケタの背番号が少なくなった理由は説明できない。

理由はさておき、今シーズンは9月に入ってから、1ケタの背番号をつけた投手が2人も登場した。カール・エドワーズ(シカゴ・カブス)とマーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)だ。どちらも背番号は「6」。エドワーズは9月7日にメジャーデビューし、ストローマンは9月12日にシーズン初登板を果たした。ストローマンのメジャーデビューは昨シーズンだが、当時の背番号は「54」だった。

また、今年のスプリング・トレーニングが始まった時点で、ブルージェイズでは2人の投手が1ケタの背番号をつけていた。ストローマンと、背番号「4」のカイル・ドレイベックだ。

レギュラーシーズンにおいて、ブルージェイズの投手陣に1ケタの背番号が2人揃うことはなかった。ストローマンはローテーションの一角を成すはずだったが、スプリング・トレーニング中に左膝の靭帯を損傷して手術を受け、ドレイベックは開幕直前にシカゴ・ホワイトソックスへ移った。だが、ブルージェイズでは2003~07年に、ジョシュ・タワーズが背番号「7」のユニフォームを着て投げていた。1977年の球団創設から26年間、ブルージェイズで1ケタの背番号をつけた投手はいなかった。その後は13年間で3人現れている。

彼らが1ケタの背番号にした理由はさまざまだ。タワーズについては不明だが、ドレイベックは高校時代にアメリカン・フットボールのチームで使用していた背番号を選んだ。彼は背番号「4」のワイドレシーバーだった(ベースボールのチームでは「1」をつけていた)。ストローマンは昨年10月に「決まったよ。背番号の変更。グランマの誕生日! 3月6日、1943年。だから6さ! 6で6を着るんだ!」とツイートしている。最後の「6で」は、トロント出身のラッパー、ドレイクがアルバムのタイトルにする予定だった「Views from the 6」の「6」がトロントを意味していることからきているらしい。

カブスのエドワーズは、マイナーリーグでも好んで1ケタの背番号――数字はいくつか異なり、空いていなかったせいか2ケタのこともあった――をつけていた。身体が細いので2ケタの背番号は似合わないという理由だろうか。ロッキーズのオッタビーノは、高校時代も背番号「0」だった。「0(ゼロ)」を自身のイニシャル「O(オー)」に見立てている。2012年につけていた背番号「37」を、2013年より「0」に変更。メジャーリーグの歴史のなかで、背番号「0」の投手はオッタビーノだけだ。

なお、ドレイベックはホワイトソックスで背番号「51」のユニフォームに袖を通した(4月下旬からずっといたAAAでは「31」)。ホワイトソックスの背番号「4」はルーク・アップリングの永久欠番で、「1」はアダム・イートンが使っている。父ダグがホワイトソックスなどで愛用した「15」もゴードン・ベッカムが使用中ということで、左右の数字を入れ替えて「51」とした。

ストローマンとエドワーズの2人が、残りのレギュラーシーズンで顔を合わせる機会はない(オッタビーノの復帰は来シーズンの5月以降だ)。けれども、今年のワールドシリーズでブルージェイズとカブスが対戦すれば、背番号「6」が交互にマウンドに立つ可能性は、先発投手と救援投手なので低いとはいえ、まったくのゼロではない。そうなれば、最も長くポストシーズンから遠ざかっていた球団と最も長くワールドチャンピオンから遠ざかっている球団によるワールドシリーズに、ささやかな興を添えることになるだろう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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